36話 怖くないのか
金曜日は移動日と設営となっていたのだが瑠生は初めてピット内での設営を見ることが出来た。毎回、ICF5と同時に行うためピットレーンで整備を行うことが出来ないのだがが今回大会が行われるサーキット場は、大型で1500ⅿもあるため多数のピットがあるためにジュニアフォーミュラも同じように設営が出来ていた。
「初めてみる」
「瑠生は見たことないのか」
「うん、しっかり見るのは初めて、逆に二人は見たことあるの?」
「ああ、ICF1の設営なら見たことあるぞ」
「わたしも初めてこんなまじかで見る」
「そうなんだ、それにしても設営規模結構違うんだね」
「確かに」
ピイトレーンでは各チーム設営をしていたのだが資金力があるチームはピット内まで装飾されていたのだが無いチームもあった。当然のことながら瑠生たちのチームは資金が多くあるので装飾はある方ではあった。この違いは、パーツの開発が大きく関係していた。ジュニアフォーミュラは、サイズや重量、安全規定など全クラスが規定がありその規定に基づいて設計されているのだが車体の設計が自由であるがために各パーツを製造するに高額であるのだがそのパーツを購入するチームもあるのでそこにつぎ込むの装飾などまで手が回らないのが現状であった。
「そうだ、この後あるコールウォーク行くのか」
「「行くけど」」
健二の質問に当然だろうといった感じで二人は返事をしたのだが健二からしてみれば驚きであったようで驚いたよな顔をしていた。
「何でそんなに驚いているの?」
「いや、チームのというより会社にデータがあるからあるし、二人はさっきの移動中にもコースレイアウト確認してたし」
「いや、確認しないと路面の状況わかないし」
「そうだけど」
「まあ、見なくても大丈夫ではあるんだけど」
「うーん、じゃあ資料だけで大丈夫かな」
健二は、コースウォーク行くことなくホテルに戻っていったが、瑠生と真昼は参加することにした。二人以外にも二人の車両の責任者の二人とチームの整備責任者の岩浦の五人で参加していた。
「健二はどうしたんだ?」
石浦の疑問は当然で、今回の大会が行われるサーキットはICF1もレースを行うため今後のプロになろうと思った時使う可能性が高く今現状では、すべてのクラスのレースが行われる数少ないサーキット場の一つであった。
「健二はホテルに戻りましたよ」
「何故に」
「資料だけで大丈夫だと言ってました」
「大丈夫なわけないだろう。1レースで路面のコンディションなんて変わる上に資料の中には書いてないギャップがあるかもしれないのに」
石浦の言うことは当然でコースの状態がレースがあればあるほど摩耗していくため翌年来るとがらりとコンデイションが変わってる上、一部が修繕などされて全く情報が無い場所も存在したのでその情報を手に入れることも重要だった。しかし、瑠生と真昼はただたんに歩いてみたかったと言うだけでここに居るのだが。
「まあ、いい始めよう」
周囲には、瑠生たちと同じようにコースウォークをしているチームがおり当然だがICF5のチームも行っていた。
瑠生と黒宮は、コーナーの入りと出口の路面の状況を確認しながらコースを確認していると13コーナーの始まりの場所に違和感を感じた。
「なんだ」
瑠生が一部の路面を異様に見ていると一緒に行動していた黒宮が声をかけてきた。
「瑠生どうした?」
「いや、コースの情報マップ見せて」
「いいぞ」
先ほどのまで歩いてきたコースの詳細が書かれている紙を受けっとったその紙には、変更される前に得ていた情報が黒で書かれた上に赤で書き込んであった。その紙には、瑠生が気が付いた内容には書かれておらず気のせいかと気のせいだと思うことにした。
「いや、気のせいだった」
「そうか」
その後は縁石も確認して1周を歩いた。
ーーー
その日は、毎度のごとく近くにあるホテルに泊まっていた。コースウォークをしていた時に黒宮が書き込んでいた紙を見ていると部屋のドアベルがなった。大概来るのは健二なのだがモニターに映っているのは意外な人物であった。
「真昼、どうしたんだ」
「今日の情報を交換したいんだけど」
「良いけど来なかったから大丈夫かなと思って」
「まあ、真昼がそう言う考えならいいけど」
「入っても大丈夫?」
どうぞということでドアを大きく開けて真昼を招き入れた。真昼はその開かれたドアを通り部屋に置いてある対面で置いてあるソファーに腰を下ろしていた。対面になる形で同様に瑠生も腰を下ろした。
「よし、それで真昼の情報はどんなの?」
「えーと、これだね」
そう言って、テーブルにA2のサイズの紙が広げられた。そこには、瑠生の情報マップとは異なり傾斜角や縁石とのつながりがりなどが詳しく書いてあり瑠生が作っていたマップとの情報量に差があった。
「え、これさっきのウォーク中に書き込んでいったの?」
「ちょっと違うけどほとんどさっきのウォーク中に書いた物よ」
その、情報量に驚きつつも瑠生は、そのマップのあるポイントを見たのだがそこには何も書かれていなかった。
「瑠生は、どんな感じ」
「真昼のより情報はないけどこんな感じ」
同じように先程まで見ていたA2紙をテーブルの上に置いたするとすぐに真昼も見だした。
「やっぱり、コーナー関係の情報が多いのね」
「まあ、あれだけのスピードで突っ込むとなると路面の状況によっては止まらないから」
「そうでしょうね」
二人は、再度両者の情報を確認して自身にとって有益になりそうな情報は、新しくマップに書き込んでいた。
情報交換自体は1時間ほどで終わりその後はタイヤに関する使いかたなど今現状知りえていることを伝えあっていた。
「ねえ、瑠生はどのタイミングでブレーキを掛けてるの?」
「うーん、なんて言ったらいいんだろう。何周か走っているうちにここだっていう場所が合ってこれ以上ブレーキを掛けないとオーバーするポイントが見つかってそこからどこまで限界まで行けるかなんだよね」
「でも、消耗していくと手前にならない」
「なるよ」
「じゃあ、どうしてるのよ」
「今のところはアクセルを緩めて行く場所を早くしてる」
「そんなに曖昧な感じでやってるの」
「感覚に近いけどね」
「まあ、そうでしょうけど」
真昼が呆れたと言わんばかりにため息をついて背もたれに体重を掛けた。瑠生はのどの渇きを感じて品手付の冷蔵庫からペットボトルを2本取り出した。
「はい」
「ありがとう」
のどの渇きを潤すために瑠生は、ペットボトルの半分まで一気に飲み干してしまった。真昼も同じようにペットボトルの水は半分近くまで減っていた。瑠生は、そのまま窓際で外を見ていた。
「ねえ」
「どうした?」
「怖くないの?」
「何が」
「事故しないかとか、死にはしないかとか」
「怖いよ。怖くて仕方ない」
「じゃあ、どうして」
「どうしてだろう、わかんないや」
瑠生の返答に被せて来た真昼は瑠生の「わかんないや」で黙ってしまった。そらは、薄っすらと雲がかかり時より月が見えていた。そんな空を瑠生は見ていた。
ーーー
結局その後は会話をすることなくさすがに寝ないと明日の予選に向け準備をするということで解散することになった。
「お邪魔しました」
「うん、情報ありがとう」
「こちらこそ、おやすみなさい」
「お休み」
真昼が戻ろうとドアノブに手を掛けた時だった。紙には書いてはいないがあること思い出した。
「そうだ、気のせいだと思って紙に書いてなかったんだけど」
「うん」
「13コーナーの始まりの場所に若干の段差があったように感じた」
「ありがとう」
「うん」
真昼は部屋に戻って行き瑠生は、明日のために早く寝ることにした。




