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史上最強のアイドル、異世界転生して、納豆令嬢と、王道アイドルをプロデュース  作者: 逢七


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52.ファンクラブミーティング

みなさま本年もよろしくお願いいたします

「なあ、みんな。ヒーロが言ってた『アイドル活動』というのを、やってみないか?」

 ソウルがそう言って、みんなが同意したことで、俺たちは、春の建国祭でのデビューに向けて、アイドル活動をスタートすることになった。


 そんな俺らの日課といえば、まずは体力づくりだ。

 ステージでパフォーマンスをこなすためのスタミナと筋力と柔軟性、それを鍛える。


「いいぞ! ほら、もう少しだ! あと少し! 行けるだろ?」

「か、勘弁してくださいっす! 姉さんっ! ね、姉さん!?」

「ははっ! ヒイロはこの腓腹筋(ひふくきん)をもう少し鍛えれば、バク転だってもっと余裕でできるようになるはずだ。」

「もう、充分す! ・・・俺、もう、限界っすぅぅ・・・!!!」


 ぐだっと倒れ込んだ俺の背中から、重しにしていた身体を離したのは、ユーディの姉のユリアンだ。

「なんだ、ヒイロ。この程度で終わりか? うちじゃあ、見習いだってこのくらい、余裕でこなすぞ?」

 にっと笑いながら、ユリアンは俺の二の腕を掴んでぐいっと身を起こしてくれる。

「・・・は、あ。ありがとうございます。」


 でも、ユリアンさん! 騎士とアイドルは違いますからっ!?

 俺はむきむきのごりごりなんて求めてないんだ。


そんな俺らの視線の先には、薄手のインナーで(あらわ)になった隆々とした背筋が目立つユーディがいて、ソウルとイスを相手に剣を交わしている。


 それにしても、ユーディはもちろんだけど、イス様もソウ様もなんであんなに動けるんだ?特にソウ様なんて普段机に向かう姿しか見たことないのに。

 剣を構える姿がすげぇさまになってるってゆうか、皇族って普段も鍛錬とかしてんだろうか。


「いいなぁ、超かっけぇ。」

そう独りごちて視線を移せば、隅の方では、シューがパウリーとティリーに背中を押されて、真っ赤な顔になっていた。あれ・・・、大丈夫か?


「おっと、余所見はダメだな、ヒイロ!」

 頭上から声がして、見上げれば真顔のユリアンが木剣を振りかざしている。


「ひっ!?」


 その木剣の剣先は俺の右横すぐ(そば)にすとんと落ちて、それからすぐさま俺の足下に弧を描く!!!

 無意識に跳躍した俺は、そのままくるんと宙返りをした!


 それは今まで俺が経験したことのない高さとスピードで

「ほら、いい動きになったじゃないか。」

 着地地点の傍で剣をついてにっと笑っているユリアンから、俺はさらに2回バク転をして距離を稼いで身構えた。


「こんな急に、あんまりっす! でも! 正直、すげぇ気持ちよかった!」

「だろ? ならば来い! もっと相手をしてやる!」

「もう、今日は勘弁です! 俺、もう行かなきゃなんないんすよ!」

「・・・あ? ああ、そうだったな。いつものか。皆によろしくな。って、ちょっと待て。」


 ずいっとたった数歩でまた俺の眼前まで迫ったユリアンの、遅れてばさりと落ちた黒髪の下、翠の瞳がじろりと俺を見下ろして、それに気を取られているうちに俺の襟には手が掛かっていた。


 ひっ、締めら・・・

「ほら、襟が乱れているじゃないか。お前は、うちの広告塔なんだからちゃんとしてくれないと。」

「・・・は、あ。ありがとうございます。」


 びっくりした! 締められるかと思った。


「ん? どうかしたか?」

「いいえっ、何でもないっす! じゃあ俺、行きます!」

 俺はささっと頭を下げて、その場を後にする。



 そして向かう先は、皇子宮の庭園だ。

 


 俺の日課の二つ目、それがご令嬢方とのファンミーティングなのだ。


「みんな、今日も来てくれて嬉しいよ。ダイアン様、リシャルカ様、マデレイネ様、ミア、・・・」

 いつもの大きな東屋、集まってくれたみんなをひとりひとり確認して、俺はにこりと笑う。


「・・・はあ、いつものあなたのそれ。どうかとは思うけれど、すごいわね。」

 中央に座したダイアン・アジェンダ侯爵令嬢が、綺麗に整った相貌をわずかに崩した。

「やだなぁ、ダイアン様。みんなのことを覚えてるのは、基本中の基本ですよ。ダイアン様だって、俺のこと、ちゃんと覚えててくれたじゃないですか。」

「・・・そ、そうだったかしら。」


 一瞬視線を泳がせてダイアンは言葉を濁すと、そのまま隣席のマデレイネ・モレジア伯爵令嬢に視線を送った。それを受けて、マデレイネはきゅっと口角をすぼめると手元の扇をぎゅっと握り締める。


「ねえ、あなた・・ずるいですわっ!! あなた、さっきまでユリアン様といったい何をしていらしたの?」

「へ、えっ、何って、鍛錬を」

そんなモレジア嬢の後ろでは、ミアが真剣な顔でこくこくと頷いている。


「まあっ、鍛錬ですって? ようく思い出してごらんなさい。ユリアン様が、貴方のために、あんなに密着してまで―――密、着・・・」

 そこまで言って、興奮した様子のマデレイネの上半身がふらっと揺れると、後ろに立つミアがさっとそれを支えた。

「―――まあ、悪いわね、ミア。」

「どういたしまして、マデリー様。」


 俺は今日も浮いてしまった自分の手を見て、がっくりと肩を落とす。


 そうだった・・・。

 これは、俺のファンイベントでは、ないんだ。


 そんな俺に、マデレイネを支えたままのミアがふわと微笑む。

「ヒイロさん。これはすべて、あなたのおかげだと思うわ。最近は、皆様方の雰囲気がほんとうにずいぶん変わっていらしたもの。」

「ミアちゃんっ! 分かるか? そうなんだよ! みんながやる気になってくれてさ!」


 ミアちゃんはさすがだよ、仲良くしているだけあって、俺のことを分かってくれる。


 嬉しくなって手を伸ばした俺の、その手を無視してミアは夢見るように両手を組んだ。

「そうなのよ!特に、ユーディ様はうんと素敵になられましたわっ!自信に溢れたお姿がとてもかっこよくてっ!!」


 その言葉を発端に、次から次へ、と令嬢たちの歓声が上がる。


「わたくしは最近イス様が素敵だと思っていますの。皆さまは、あのお美しい身のこなしをご覧になられましたか?」

「見ましたわ! それにシュー様も素敵よね。イス様とお二人でじゃれていらっしゃる姿は、たまりませんわ!」

「イス様もソウ様も、ずっと近寄りやすくなりましたもの! 今年の建国際がほんとうに楽しみですわね!」


 すると、そんな周りの発言をわたわたと追っていた一人の小柄な少女が小さく高い声をはさんだ。

「お、お兄さまはっ!!」

 涙で潤んだようにまあるいワインレッドの瞳をパチパチと瞬いているのは、リシャルカ・イゼンブル嬢だ。


「お兄さまも、とっても優しくて・・・、素敵、でしょう?」

「・・・まあ、そうよね、ふふっ。ハロルド様も素敵ね? リシャルカはお兄さま()()なのね!」

「推し・・・? そう、なの? そう、これ! これが、()()ってことなのね?」


 『推し』で盛り上がるご令嬢方に、俺は口も挟めず、ただにこにこと聞いているしかなかった。


 ・・・そうなんだ。

 ファンミーティングと言っても、ここに、『俺』のファンはいない。


 ああ・・・、ユメちゃん!

 ここに君がいてくれたら―――、そうしたら、俺のことを推してくれるのに。

今回も読んでいただきありがとうございます!

新年1本目の投稿でした


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