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史上最強のアイドル、異世界転生して、納豆令嬢と、王道アイドルをプロデュース  作者: 逢七


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51.建国祭ステージ

「なあ、ヒーロ! この動き、合ってるか?」

 さっき教えた振付を一通り真似てみせてから、イスがふぅと息を吐いた。


「すっげぇ、イス様! なんで一発で、出来るんすか? 天才では?」


「そうか? 見てればできるよ。」

 額の汗を手の甲でさっと払うと、柔らかそうな髪がふわっと浮いて、すぐにコーラルブルーの瞳の前に落ちる。上気した頬に柔らかな弧を描く唇。ほんと母親譲りの繊細な美貌だ。

 それに、どこか吹っ切れたように、イス様は最近ほんとうによく笑う。

 それがほんとうに人懐っこい笑顔で、柔らかい空気を纏ったイス様に、すれ違う人たちがみんな振り返り見ていくんだ。


 そして、イス様にはもっとすごい特技があった。


「だったら、もっと、こう! こんな動きは、どうっすか?」

「こうか?」

「いいっ! 最高っす! なぁ、シュー、ちょっと音くれよ!」


 ダンサブルなナンバーに、あえてストップ&ゴーを加えてメリハリをつけたら、その違和感は見ている人の目を惹く。だけど、その分動いてる方はリズム取りの難易度が一気に上がってしまう。

 でも、イス様はまるで何事もないかのように抜群なタイミングで音に動きを合わせてきた。


「いやぁ、さすがっつうか、やっぱり血は争えない、ってことっすかね? なあ、シュー?」

「まじでそう! その天才的なリズム感、正直、俺、嫉妬する。」

「はっ、何言ってんだ? お前の音こそが俺をかき立ててるんだけどな。」

「あああああ!! くっそーー!! 何だよ、お前ら、ずりぃよ!? その才能」


 こんな天才が二人揃ってしまったら、俺なんてそれこそ(ぼん)が際立っちゃうんだよ。

 ・・・けどなぁ。

 この二人がいれば、それこそ世界制覇だって、夢じゃねぇんじゃね?

 だから!


「シュー!! もっかい、音頼む! 次は俺も一緒にやるから!」

 俺はおっきくそう叫んで、イスの横に並び立った。





 さて、いったい俺らが何をしているかって?


 実はこの話、カイル・デリートとピソラ商会の一件が収束を迎えたある日のことに遡る。


 ソウルの執務室で、俺らはほんとうに久しぶりに全員が顔を揃えていた。

 ソウ様に、イス様、ハルとユーディとシューに、俺。

 いつもの執務机ではなくソファに座って書類を見ていたソウルにつられて、部屋に入ってきたメンバーは空いたソファに順に腰かけていった。

 特段何をしゃべるでもなく。


 何か大事な相談でもあるんだろうか?


 沈黙の中ふと隣を見れば、シューは俺をチラ見してうさんくさそうに片眉を上げ、向いの席のイスに目を向ければ、にこりとうさんくさい笑顔を返された。


 ちえっ、なんだよな~、そう思って口を尖らせたところで、ソウルが読んでいた書類をさっとテーブルへと投げ置いて、俺らを見回したのだ。

「みんな、カトレット店の開業からカイル・デリートの一件まで、今年は色々世話になった。なんていうか、俺自身も不思議としか言いようがないんだが、少し前まではみんなが、こんなにすっきりとした顔で集まっているなんてこと、想像もしてなかったんだ。」


 そう言うソウル自身もなんだかすっきりとした顔をしている。

 悩み事が全て解決したようなそんな顔。


 まあ、たしかに?

 いつも疲れて見えるソウ様とハルには余裕が見えるし、ユーディは真剣な顔で話に参加してる。

 シューは相変わらずだけど、イス様は言わずもがなだ。


 俺は頷き、みんなもそれぞれに肯定すると、ソウルは話を続ける。

「みんなも同じ考えみたいで、嬉しいよ。――――今思うと、俺はずっと、ここに集めたメンバーは俺が守らなければ、それが俺の責任だと、そう考えて気を張っていたような気がするんだ。」

 そう言ってソウルは、ちらとハルとイスに視線をやった。


 二人はふっと口元を緩ませる。

「そうですね。私も、完璧で隙のない計画をつくらなければとずっと無理をしていたように思います。」

「僕は、自分が皆の邪魔をしてるって思ってた。」


 なぜかいきなりの大告白大会が始まった。

 なんだなんだ?


 呆気にとられる俺の目の前で、今度はユーディがぐっと身を乗り出す。

「――――俺も、俺はただの護衛だから、って、どこか他人事(ひとごと)だったように思う。でも、今はそうでもないんだ。」

「そうだったか? 俺は―――でも言うほど悪くはなかったよ? 俺は()()があって救われていた。」


 最後にシューがそう言って肩を竦め・・・、えっ、俺??

 そんな、皆が視線を集中したって、俺はなんもねぇし・・・。


「い、いやぁ、みんなが幸せなら―――、それで、良かった!!」


 ほんとうは『幸せ』という言葉を使ってしまったことで、俺の心は冷たい石がひとつ沈んだみたいに、一瞬縮こまったのだけど、でもそんな俺の内心には気付く様子もなく、みんなははぁと息を吐いた。


 ソウルはこほんとひとつ咳払いをすると、

「ああ、うん。そこで、だ。今まではそれぞれがそれぞれで行動することが多かったように思う。だけど、せっかくここに皆が集まっているだろう? 来年は皆で一緒に、何かしたらどうだろう、そう俺は考えていて―――、これはイスからの提案でもあるんだが・・・。」

 そう言って、ちらと俺を見る。


 ん? なんだ? ソウ様は何を言おうとしてる?


 そこでふっと口角を上げたソウルは、もう一度ぐるりと皆を見回した。

「なあ、みんな。ヒーロが言ってた『アイドル活動』というのを、やってみないか?」


「ま、まじっすか!? ソウ様!?」




 驚くことに反対意見は全くあがらなかった。

 そういうわけで、なんと俺たちは、帝国で最も人が集まると言われる春の建国祭の日。その日のデビューに向けて、アイドルとしての活動をスタートすることになったのだった。


 嬉しい! すげぇ、嬉しいよ!!

 俺がこの世界に来て、このメンバーに出逢って、思い描いたそれ!

 『その夢』がぐんと近くまでやってきたのだから!


 ・・・・・・・・




 だけど・・・、だけどさ。

 ここに、ユメちゃんはいない。

お久しぶりです 逢七です

年末みなさまいかがお過ごしですか?

みなさまにとって良き年であったこと、そしてこれから迎える新しい年が希望で溢れた年であることをお祈りいたします

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