プロローグ アイドル陽は、奈落に落ちた
逢七と申します
新作です
気軽にお楽しみください
「きゃあぁぁ、陽~♥♥」
「こっち向いて!!」
ステージ下から呼びかけられて、俺は今やトレードマークとなったいつもの決めポーズをすると、ウインクをして彼女たちの声援に答える。
「いやあぁぁ、目が合ったぁ。陽~~~!! 大好きっっ!!」
ファンクラブNo21番のアイちゃん、デビューからずっと応援してくれてありがとう!
ファンクラブNo1355番のリカちゃん、ああ、涙もろい君は今日も号泣だね。
ファンクラブNo92484番のヨウコさんと、92485番のセイランちゃん、親子で俺のファンになってくれてありがとう。おそろいのライブTシャツ、とても似合っているね!
ひとりひとりのファンに視線を向けながら、思いを込めて、リリースした新曲を歌う。
視線が合うと、みんな顔を真っ赤にしてくれて、なんてかわいいんだ。
20xx年夏、俺たちアイドルユニット『アルテミア』は、デビュー後初の五大ドームツアーを行っている。
デビューから2年、長いようであっと言う間に過ぎた日々。
『アルテミア』は、今話題の新進気鋭の敏腕プロデューサーによって全国からスカウトされたメンバー5人による男性アイドルユニットだ。
俺たちは、デビュー曲から100億回再生、ミリオンヒットという異例の記録をたたき出し、流星、いやロケット花火の如く、この芸能界を駆けあがっている。
そして、俺、本庄陽は、『アルテミア』のメインボーカル、いわゆるセンターポジションである。
天に恵まれた、このルックス、歌唱力、カリスマ性、そして、コミュニケーションスキル。
そんな俺にとって、アイドルは、まさに天職なのか、芸能界隈では『歴史上最強の男性アイドル』と評され、3年先まで、予定がみっちり、さらにオファーが数珠つなぎだ。
そして、今晩はツアー最終日、駆け抜けた熱い日々ももうすぐ終わる。
何回かのカーテンコールをくりかえして、いよいよ最後の1曲だ。
『アルテミア』のメンバーと、ポジションを入れ変えながらハイタッチをしていく。
<ユウマ、今晩も熱くパワフルだったな!最高だぜ!>
<サカキ、汗だくなのにそのクールな顔色、さすがだな!>
<トミー、今日のお前も、愛らしさ抜群だぞ!>
<シン、お前のパフォーマンス、最後まで、きれっきれ だったな。>
――そして伴奏が始まり、俺たちは、バラード調の新曲『ツクヨミ』を歌う。
いまや、ライブ会場は一体の空気に包まれていた。
ああ、気持ちいい~~。
今晩は雲一つない月夜だ。
煌々と輝く大きな満月を見上げて、最後のBメロを歌い上げた俺に、会場は熱気を込めた静寂さで答えてくれる。
俺は、月夜の王のようなパーフェクトスマイルで惜しみなく微笑むと、両腕を大きく広げ、そして、一歩、後ずさる。
その瞬間、ふっと身体のバランスが崩れ――――
ステージ上に開いた奈落に、俺は落下した!!!!!?
あれ? なんだこれ!?
赤黄緑の三色の眩いステージライトが、遠ざかっていく。
遠くからは、俺を呼ぶたくさんの叫び声が聞こえる。
「いやあぁぁ、ひいろ!! ひいろ~~!!」
「おい、ひいろっ!! 責任者! いや、救急車!? 早くなんとかしろ!」
体の力が抜けて、視界も音も、五感がぼんやりとしていく。
脳裏に浮かぶのは、たくさんのファンと、メンバーの笑顔。
「ああ~~、俺、死ぬな~~」
その、いわゆる『走馬灯』といわれる時間感覚に、自然とそう思った。
ああ、でも、こんな風にたくさんの声の中で死ねるなら、俺ってば、サイコーじゃないか。
シン、ユウマ、サカキ、トミー
ありがとうな。後は頼む。
そして落下の衝撃を覚悟した俺は――――、ゆっくりと目を閉じた。
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だが、衝撃は思いがけず、顔面にやってきた。
「いってえぇぇ。」
額を押さえて痛さに顔をゆがめていると、思いのほか近くから声が聞こえる。
「おい、ヒーロ、居眠りしてんじゃねぇよ。俺が頼んだ調査、ちゃんと、終わってんのか?」
そう問われて、ふと目を開けると、気品漂う超絶イケメンたちが、ソファで横になる俺を覗き込んでいた。
あれ?
シンとユウマとサカキとトミーはどこだ?
こいつら、いったい誰だ?
この小説に目を留めていただき、
また、読んでいただき、ありがとうございます
初日の今日は、7話掲載します
ぜひ、最後までお楽しみください
気に入ってくださったら、
評価・ブクマ、つけていただけると、嬉しいです
【おまけ】
アイドルをテーマにしたこの作品を今日の投稿に決めてから、この一週間、通勤中に嵐のライブDVDを回して、歌いながら運転してた私
まさか『嵐』さんの再始動の発表日と同日投稿できるなんて、まるで夢のよう!
ファンクラブ会員ではないですが、今後の嵐さんのご活躍を応援します
嬉しくなっちゃったので、追記です