義弟と向かいあう
リンの部屋に急いで行った。
ドアノブを回したけど、開かない。
鍵がかかっていたのだ。
私は別の手段に出ることにした。
「リンー!開けなさい!早く!」
私は扉を叩きまくった。
「義姉さん…」
リンのか細い声が聞こえてきた。
「リン!出てきてくれる?」
「ごめんなさい、僕のせいで傷つけちゃって…会ったらまた傷つけてしまう。だから、僕はもう出ないよ……」
リンはそう言った。
弱々しい声だ。私がそんな声を出させてしまっている。
それに、リンがもう部屋から出ない?そうなってしまったら原作そのままの暗い子に…
原作に忠実にとはいったけど、たった一人の弟をそんなふうにするわけにはいかない!
「そんなのダメよ!開けなさい!」
私はまた扉を叩きまくった。
そんな時、騒ぎを聞きつけたエマがやってきた。
「お嬢様!どうされたのですか⁈」
「リンが出てこないから、出てきてもらうよう説得してるのよ!」
「どうみても扉を叩いているだけにしか見えませんが…」
エマが訝しげに見てくる。
「だって鍵がかかっていて開かないんだもの」
「それならば、予備の鍵があるはずですので持ってきます」
「お願いするわ!」
エマがパタパタと足音をたてて鍵を取りに向かってくれた。
しばらくして戻ってくると、その手には鍵が…
なかった。
「エマ、鍵は?」
「リン様が持っておられるみたいです」
「リンが⁈それなら開けられないじゃないの!」
まさか予備の鍵まで持って部屋にこもるとは…
どうやって開けるかな…
いや、こうなったら力技で!
「リン、ちょっと下がっててね!」
「うん?」
下がっただろうと思い、私は足に力を込めてから思いっきり蹴り上げた。
すると、扉がバターンと倒れた。
「いったぁー!!」
「義姉さん⁈」
私は足の力で扉を蹴破った。
さすがに扉は硬かった……足、めちゃくちゃ痛い。
でも、リンがいる。震えているけどちゃんと向き合って話ができる。
私はリンの目の前に座った。
「リン、一つだけ言わせてもらえるかしら?」
「?う、うん…」
私は深呼吸をしてから息を吸って
「ご飯は食べなさい!元気に生きるために必要なのは、睡眠と食事と健康な精神なのよ!!その中で特に必要なのが食事よ!わかったわね⁈」
捲し立てるように言った。
「…分かった。ごめん、本当にごめんなさい、義姉さん」
私が生きてて一番大事だと思った自論を言っただけだったけれど、リンは聞き入れてくれたようだ。
よかった。泣いているけれど、とりあえず伝えたいことは伝えられた。
「大丈夫だから泣かないで?」
私はリンを抱きしめ、優しく頭を撫でた。
そうしたくなったのだから、仕方ない。
「うん…」
一件落着と思った。
けれど、背後から圧を感じる。
「ユミリア?これはどういうことかしら??」
ゆっくりと振り向くと、眉間に皺を寄せまくったお母様が立っていた。
「お、お母様…こ、これは…」
「話は別の場所で聞きましょう。来なさい」
私はお母様に引きずられていく。
来なさいというか、これは強制的につれていくと言うんじゃないのかな?
そんなこと気にしてる場合じゃないけれど……
「リン!またあとでねー!」
ずるずると引きずられているけど、それだけは言った。
リンが少しだけ笑っていた。
笑えるようになって良かった。
少し複雑ではあるけれど。