ステファン様の行動がわからない
私とステファン様は互いの婚約者になった。
そう、なってしまったのだ。
できることならなりたくなかったのに。第三王子の婚約者ともなれば、顔合わせとかが増えるじゃないか。
ふるまいとかどうすればいいのか……
破滅フラグに関してはどうにかする。いざとなったら力技でね!
それよりも、最近私を悩ませている問題がある。
ステファン様がしょっちゅう屋敷に来られるのだ。
私がイサと土いじりしてる時とか、部屋でゆっくりしている時とか、何もしていない時とかもだけれど。
なにか用があるのかと思いきや、なにもないようだし。
ただ話をして帰っていく。
対応するのにも、労力を使うので正直あまり来ないでほしいのだが。
そんなことを言うわけにもいかないけれど。
いや、ユミリアなら言ったほうがいい……のか?
まあ美味しいお菓子を持って来てもらえるのは嬉しいから、言わなくてもいいか。
自室の扉からコンコンと聞こえた。
この音は……
「失礼します。お嬢様、ステファン様がお見えです」
やっぱりエマだった。
「行かなきゃダメかしら?」
「はい。いつもの場所でお待ちしておられますので」
「わかったわよ…」
私は部屋から出て応接間に向かった。
「ユミリア、こんにちは」
ステファン様がソファから立ち上がり、私にお辞儀をした。
先日から私のことを呼びすてにするようになった。
今までと違うふうに呼ばれると戸惑ってしまう……
「こんにちは、ステファン様」
私もお辞儀をして挨拶をした。
すると、ステファン様が私の口に人差し指をあて
「僕のことはなんと呼ぶんでしたっけ?」
と、言った。
そんなキザな振る舞いにドキッとした。
私の顔が赤くなっていないか不安だ。
こんな美形が近くにあるだなんて直視できないと思い、首を横に向け
「ステファン…ですわ」と言った。
「聞こえなかったなぁ。僕の方を見て言って?」
「……ステファン!揶揄うのはよしてください!」
私はステファンを真っ直ぐ見て、言う。
「ふふっ、つい、ね。許してくれるかい?」
ステファンが手を合わせてわざわざ上目遣いになるように、言った。
こういうところがあるから疲れる……
でも、許してしまう自分もいるのだ。
「許しますけど…」
あっ、許さないって言ったほうが良かった?
悪役ってどういう答えしたら正しいの?
「ありがとう」
王子が微笑んだ。
悪役っぽい答えがなにかは分からないけど、この顔が見られるのならいいか。
それから会話をして、ステファンは帰った。
私は疲れたので、部屋に戻りベッドに寝転がるとすぐに目を閉じて寝た。
後におきることも知らずに——