エンディング
それから月日が経った。
今日はついに、卒業式。
私のではなく、セシル達先輩のだ。
つまり、ゲームのエンディングの日である。
これまで懸念は全てなくしてきたから大丈夫なはず。
破滅フラグはもうないとは思う。
そもそも、エンディングの時にはユミリアはいなかった気がするから。
それなのに私がまだここにいられるのだから、きっと大丈夫だ。
「お嬢様、そろそろ…」
エマが様子を見にきた。
確かにそろそろ行かなければならない時間になっていた。
考え事をすると、いつもこうなっている。
「そうね。今行くわ」
私はこの日のために用意した花束を持ち、部屋から出た。
我ながらいい色合いに仕上がったと思う。
「お嬢様が作られた花束、きっとセシル様も気に入りますよ」
「そうだといいわね」
植物園で育てた植物達。とても元気に育ってくれた。
丹精込めて作った甲斐があったな。
卒業式では、おめでとうの気持ちを込めて拍手をおくった。
代表挨拶が、シェルドではないことが少しだけ残念だと思ったのだけれど、それは心にしまっておく。
直前で代表になった人に失礼だからね。
そうして私達は、卒業式を終えた。
終わる頃には、私は涙が堪えられそうになかった。
けれど、笑顔で見送りたいからセシルの前では笑顔を保つ。
「卒業おめでとうございます」
と、私はセシルに花束を渡した。
すると、彼は微笑んだ。
「ありがとう。綺麗な花達だな。全てユミリアが育てたものか?」
「はい」
「そうか。大事にする」
セシルがもう一度微笑む。
やはり美形の破壊力は高い。
そう思うことが少し減るのは、悲しいな。
いや、周りに美形はたくさんいるが、そういうことではないのだ。
セシルに会う機会が減るのは悲しい。
今まで学園で話していたから。
彼の心地いい低音ボイスが私は好きなのにな。
「また会ったら話してくださいね」
「ああ。カイラと共に会いに行こう」
「待ってますわ」
私達がそんな話をしていたら間に割って入ってきた。
「卒業だからってユミリアを独占しないでくださいよ。僕のなんですからね?」
「あら、婚約者ってだけでしょう。ユミリア様は誰のものでもありませんわよ」
ステファンとアルミネだ。
相変わらずバチバチしてるな。
「こんな日になに話してるんだか」
「こういうのも、もう見れなくなるのだな」
セシルが悲しそうに言った。
「大丈夫ですよ。卒業しても、一人になるわけではないでしょうから」
セシルに向かってマリカが言った。
一人になるわけではない。
私が、一人にはしないから。
「確かにな。別に会う機会はいくらでもあるだろ」
ナチェラが続けて言う。
会う機会は少なくはなるが、完全になくなるわけではない。
そういうことを言いたいのだろう。
ナチェラは言葉が足りないところがあるから。
「そうか、なら平気だな」
セシルが笑った。
今日はいつもより笑っている。
そんな姿が見られることが、私は嬉しい。
そういえば、ここらでマリカは攻略対象のうちの誰かと二人きりになるはずなのだが、そんな素振りはない。
やはり、なにかが変わったのかもしれない。
でも、それはいいほうに変わったのではないかと思う。
だって、こうやってみんなで笑っていられる。
それがなによりの幸せで、この先ずっと続いてほしいと思うから。
だから、私は願おうかな。
この先もずっとみんなで笑っていられる未来を。
ゲームのエンディングは終わる。
この場合は友情エンドというのだろうな。
ならば、その友情が途絶えないように、ずっと続いていきますように。
私はそう願っているよ。
「ユミリアー」
「ユミリア様!!」
「義姉さん」
「ユミリア様」
「ユミリア」
「ユ、ユミリア」
「ユミリア様!」
みんなが私の名前を呼ぶ。
それぞれ呼び方が違う。
それがみんなの個性なのだ。
それぞれ違う個性を持っていて、それぞれが自分の考えを持っている。
そんな私達だからこそ、これからも楽しく過ごしていける。
そう思うんだ。
私は笑ってみんなの元へ飛び込んだ——




