真実
あの日から数日経ったある日。
私は植物園にいた。
そこに、一人の人が来た。
その人は、私の知らない姿をしている。
私が誰ですかと聞く前に
「ユミリア様、お久しぶりです」
と、その人が言う。
久しぶりということは、もしかして……
「会長、ですか?」
私がそう聞くと、その人は頷いた。
変装をしたのだろうか。
全然違う姿で、すぐには気づかなかった。
会長は、自分が起こしたことの責任をとるため学園を休んでいた。
幸い、他の生徒に話は広がっていなかったが。
「なかなか会えなくなってしまうかもしれないので、ご挨拶に参りました」
「会えなくなる?」
「はい。僕は、この学園をやめることにしたのです」
「やめるって、どうして……」
いくら責任をとるためだとしても、やめることはないじゃないか。
それに、卒業はもう少しだというのに……
私がそう考えていると、会長が理由を言う。
「僕は、魔法省に勤めることになりました。闇の魔力はなくなったに等しいですが、世のために力を貸せるのなら…とお話を受けることにしたので。ですから、少し早い卒業みたいなものですね」と。
会長は笑っている。
辛そうな笑顔ではない。
吹っ切れたような顔だ。
やりたいことが決まったのなら、良かったかな。
「そうですか」
「なんだかそっけないですね?やめないでとか言うかと思っていたのですが…」
「会長が決めたことに、私が口を出す権利はありませんから」
「貴女は、本当に自分の考えがしっかりしていますね。そんな貴女には…いえ、貴女だから聞いてほしいことがあります」
「聞いてほしいこと?」
なんのことだろう。
会長が私に話したいこと、か。
なにかあっただろうか。心当たりはないが。
「闇魔法のことです。僕が闇の魔力を持った原因を聞いてほしいです」
「闇魔法の?」
地雷かと思って聞かないようにしていたのだけれど。
話してくれると言うのなら、真剣に聞こう。
それがシェルドへの救けになるのならば。
「はい。僕が闇の魔力を持ったのは幼少の時でした。知らない間に、というより、意識がなかったのです。怒りで我を失っていたから」
「怒りで?」
「僕の母は、娼婦の出でした。そんな母は、僕を一人で育ててくれていた。僕の父は高位の人物です。顔も知りませんでしたが。そんな父と本妻にはなかなか子供ができず、後継がいない。そこで考えついたのが……」
「会長を後継にすること?」
会長が頷く。
そこからの話は嫌でも察しがつく。
私は黙って静かに聞くことにした。
「僕と母が住む家に、父の本妻である女性が乗り込んできました。僕を渡せと。母は、嫌だと必死に抵抗をしていました。けれど、そんな抵抗も虚しく母は本妻が雇っていた暗殺者に……そして、僕は怒りと憎悪に包まれ我を失った。意識を戻した時には最悪の光景が前に広がっていました」
会長の表情が、どんどん憂いを帯びていく。
ただ懐かしい思い出を話しているわけではない。
これは、会長が、シェルド・モールトが生きてきた中できっと、一番苦しかった思い出なのだ。
忘れることができないほどに、苦しい思い出。
人に話すことで楽になるといいのだが。
会長がまだ話し続ける。
「血を流し横たわる母。もうやめてと、懇願する父の本妻と、暗殺者…僕は、その時最悪の力を手に入れてしまったのです。その時のことは脳裏にこびりついて離れない。
その時のことを度々思い出し、憎悪に包まれる。闇の魔力というのは最悪のものです」
闇の魔力はそんなに危険なものだったのか。
文献で見ただけで詳しくは知らなかった。
持つものの心まで蝕まれる。
それは、とても怖いものだな。
私は背筋が凍るような感触を覚えた。
「あの、会長はもう大丈夫なのですか?」
「はい。貴女が救けてくださったのです。闇の魔力の力に乗っ取られそうになっていた僕の心を。僕のことを優しいと、友人になってくれと言ってくださった貴女のおかげで、僕は本来の自分を取り戻せました。本当に、ありがとうございます」
会長が深々と頭を下げた。
私は大したことをしていない。
自分のしたいことに従ったまでだ。
けれどそれが、会長の力になったのなら。
会長が自分を取り戻すことができたのなら……
「良かったです!」
と、私は会長に笑いかけた。
「では、またどこかでお会いしましょう。案外、近いうちに会うかもしれませんが」
会長は、手を振り去っていった。
近いうちに会うというのは、どういうことなのかな。
気にしても仕方がないか。
さて、これにて一件落着、かな!
まだエンディングにはなっていないから、全然気は抜けないけどね。
それでも、会長とマリカを救けることができたのだから、偉いぞ私!!
今回みたいに、フラグはへし折っていこう。
破滅フラグとか絶対嫌だからね。
エンディングまであともう少しだから、頑張るぞ!




