王子再来訪
さて、破滅フラグを回避しつつ原作に忠実に計画を進めてくか。この計画名は長すぎるかな?
うーむ、じゃあ……『破滅フラグへし折るぞ』にするか!
うん、我ながらよくまとめられたな。
計画名も決まったところで、対応策を考えていこう。
ユミリアは、王子の作り出した土人形によって人生を終えた。私は踏まれて終わるなんて絶対に嫌だ。
そのためにどうすればいいか、か。
『魔力を強化すればいいんじゃないかなぁ?』
『どうしてだ?原作のユミリアはさほど魔法は使ってなかったはずだぜ』
『だからこそだろう。ユミリアは王子の魔法によって生涯を終えた。それならば、魔力を強化し対応できるようになればいい』
『ではこれからは魔力を強化するということで!』
私の別人格による脳内会議により決まった。
魔力の強化。それが私の課題みたい。
別人格は私が仕事を乗り越えるためにできたものである。
人に媚を売るのが上手い『アイ』
乱暴な物言いの『ラン』頭脳派な『スノウ』。
まとめ役の『マト』この四名だ。
考え事をするときには助かってるし、『私』が上司に怒られて辛い時は話し相手にもなってくれた。
とりあえず、課題をクリアしなきゃ。
私の魔法は…確かめるには外に出なければならない。
私は外に出て、魔法を使った。私のは『水』。
私が出した水は、蛇口を捻ったほうがいいと思うほど少量だった。
『マジラブ』でもそうだったから、こうなるのは分かってたけど。
さすがに心が折れそうだ……
強化、ねぇ。これを強化か……時間がかかりそうだ。
そもそも水の強化ってなにすればいいわけ?
水を沢山使うこと?沢山使うこと……
そうだ、植物でも育ててみようか。
そうすれば水も使えるし、植物を育てて穏やかな気持ちにもなれる。一石二鳥だ。
そうと決まればっ
私は、屋敷で雇っている庭師のところに話をしに行った。
「イサ!私、植物を育てたいのだけど少しだけ場所を貸してくれる?」
「ユミリアお嬢様が?植物ならば、私が育てますが…」
イサ。屋敷で雇っている庭師。もうおじいちゃんだ。
そんなイサが不思議そうに首を傾げた。
「それじゃ意味がないのよ!私の魔力を強化するために必要なの!」
「植物を育てて魔力を強化?お嬢様は面白いことを考えられますね…どうぞお使いください。苗もお好きなものをどうぞ。私が使おうと思っていたものですが、お嬢様のためになるのなら」
「本当⁈ありがとう!」
一応、ユミリアのように強気で言ってみた。
イサがそれに気づいてるかは分からないけど。
私はイサに苗の場所を聞いて取りに行った。
そして、戻ってイサに耕し方から教わりながら苗を植えていった。
「これでいいのよね?」
「はい、お上手です。お嬢様は苗を植える手がとても優しい。そういう方が育てた植物はきっと綺麗に芽が出ますよ」
「イサは褒めるのが上手ね。お世辞はいらないわよ?」
「お世辞ではありませんよ」
私とイサがこうして土いじりをしているとこを見たら、孫とおじいちゃんみたいに見えるのかもしれないな。
土いじりって案外楽しいし続けていきたいな〜
と、そんな微笑ましいことを思ってた。
そんな時に、エマが慌てた様子で来る。
「お、お嬢様!なにをなさって?」
「あら、エマ。どうしたの?」
驚いた顔をしてるエマに問いかけた。
そんな驚かなくてもいいのに、土とかついていたか?
「こちらにおられたのですね。ユミリア様」
エマの後ろからひょっこりと、ステファン様が顔を出した。
「ご、ごきげんよう。ステファン様。どのような御用で?それと、申し訳ありませんこのような場所まで来させてしまって」
「魔力の強化をされていると聞き拝見しようと思ったのですが、これは?」
私が作業服を着ながら、土いじりをしていたところを見られていたのだろうか。
今更嘘はつけない。
「水魔法を強化するには、水を沢山使うことが必要かと思いまして」
と、本当のことを言ってみた。
すると、ステファン様はプルプルと震え出した。
なにか失礼なことを言ってしまったのだろうか?
私まで震えたくなってくる。
そして、ステファン様はパッと顔を上げ笑顔で
「それはいい訓練ですね!」
と言った。
怒らせていないのなら良かった。
王子を怒らせたら私の破滅フラグは一瞬で立ってしまう。
そうならないように、今対策を立てたばかりだというのに。
そういえば、ステファン様の本当の用事ってなに?
魔力の強化をしてると聞いたのは、屋敷に来てからだろうし。
「本日は前回お話しさせていただいた婚約の件で、正式に挨拶に参りました。このような場所で申し訳ありませんが、僕との婚約をお受けしていただけますか?」
「え、あっ、はい」
ステファン様はニコッと笑い、私の手をとりキスをした。
ん?私はいって言った?
言っちゃってたか⁈くっ、つい流れで…
適当な理由をつけて断ろうと思っていたのに。
というか本当の用事ってこれかー
考え付かなかったなー(棒)
正式な婚約者になったってことは、破滅への第一歩じゃないか……
仕方ない。話を聞いてなかったのは私だ。
とりあえず明日からもっと、魔法の訓練に気合を入れるぞー!