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マリカの故郷

 今日は、アルミネとリンと一緒に植物園に行く予定だ。

 前日から楽しみにしていた。

 遠足に行く前の子供のように寝れなかったわけではないが。


 グラシエリ家の馬車が、屋敷の前にとまった。

 迎えにきてくれたみたいだ。

 けれど、アルミネが降りてくるかと思ったら、アルミネのお付きのメイドであった。


「アルミネはどうしたの?」

「ユミリア様。申し訳ないのですが、アルミネお嬢様は風邪をひいてしまいまして……ですが、ユミリア様のことは植物園に案内してあげてほしいと言伝されてこちらに参りました」

「そうだったのね。心配だわ…」

「お嬢様は、楽しんでほしいともおっしゃっていましたよ。さぁ、ぜひ馬車に乗ってください」


  アルミネがそう言っていたのなら、楽しまなきゃね。

 私は、馬車に乗る。隣にはリンも座った。


 それからしばらくして馬車がとまった。

 着いたのでおりてくださいと言われる。


 私達は降りた。

 辺りを見渡すと、沢山の色で溢れている。

 暖かな風も心地いい。


「素敵な場所ね…」

「喜んでいただけたようで、なによりです。お嬢様にも伝えておきますね。では、帰りの馬車はシスカ公爵家の(かた)に頼んでおりますので」

「ありがとう。アルミネにお大事に伝えておいてね」

「了解いたしました」


  お辞儀をしてから帰っていった。

 アルミネの風邪が長引くものじゃなければいいのだけれど。

 まぁ、グラシエリの屋敷の人達は優秀だから大丈夫でしょう。


義姉(ねえ)さん、見て回ろうよ」


 リンが私の服の裾をつまんで言う。

 リンも植物に興味が出てきたのかな。


「そうね。行きましょう」


  私達は、花を見て回る。

 中には見たことのない花もあった。

 近くにいた(かた)に聞いたら、この町の特産品なのだそうだ。

 馬車で来たから、あまり距離がわからなかったけれど、案外遠い場所だったのかもしれないな。

 気候とかによっても育つ花は変わるものだし。


 たとえここで、種や苗をもらったとしても育つとは限らない。

 なにかを育てるというのは、そういうものなのだ。


 十分見て回ったと思ったので、その場所から離れた。


「綺麗な色の花がいっぱいだったわね」

「そうだね義姉(ねえ)さん。迎えはまだ来ていないみたいだけど、どうする?」

「少しここらへんを歩いてみましょう。少ししたら戻ればいいはずよ」

「いいけど、来たことない場所なんだからあまり走らないでよ?」


  リンがそう言った。

 なんだか最近小言が増えてきたというか……お母様に似てきたというか……

 いや、心配してくれてるってことだものね。


「わかったわ」


 私は頷いて答えた。

 そうして、歩き出そうとしたその時……


「ユミリア様?」


 と、いう声がした。

 振り返ってみると、マリカがカゴを持ち立っていた。


「マリカ?どうしてここに?」


 私は近づいて聞いた。


「ここは、私の故郷なので。夏休みで戻って来ていたのです。ユミリア様達はなぜここに?」

「私達は、アルミネに紹介された植物園を見に来ていたのよ」

「そうでしたか。ここのお花達は綺麗ですよね」


  彼女が笑う。

 久しぶりにヒロインの笑顔を間近で見ることになるとは….

 女でも危ういわね。


 というか、ここがマリカの故郷だったなんて知らなかった。

 ゲームでそういう描写があっただろうか。

 思い出せないな。


「ねぇ、マリカ。そのカゴにはなにが入っているの?」

「こちらには、お菓子の材料を入れています。先程買ってきたばかりなので」

「お菓子…」


  そう聞いた瞬間、私のお腹がなった。


義姉(ねえ)さん……」


  リンが憐れむような目で見てくる。

 そんな目で見ないでほしい。頼むから。


 前を見ると、マリカは笑っている。


「よろしければ、私の家でお菓子食べませんか?」

「本当⁈」

「はい」


 マリカが微笑んだ。

 お腹が空いてたってわけじゃないんだけど、お菓子が食べたいところだった。

 だから私は


「では、お願いするわ」


 と言った。

 そのあと、マリカについて行く。


「ここです。ユミリア様達には狭いかもしれませんが…」


 扉を開けて中に入れてくれた。


「狭くないし、とても整頓されてていいと思うわ」

「そう言っていただけて嬉しいです。すぐに準備しますのでお待ちください」


 マリカが、私のためにお菓子を用意してくれた。

 原作だったら絶対に考えられない。

 つくづく、『私』とユミリア、は全く違う。

 それなのにあんな夢をみるのは、原作の修正力というやつなのだろうか。

 本当、難儀だな。


「ユミリア様、お待たせしました。リン様もどうぞ」


  私は考えていたことを放棄し、目の前に置かれた皿に手を伸ばした。

 食べると、口いっぱいに広がる甘さ。

 それがたまらない。


「美味しいわ!」

「ふふっ、ありがとうございます」


  リンも美味しいと言うと、マリカがもっと笑った。

 今日はマリカがよく笑っているように思う。

 久しぶりに見たからだろうか。

 笑っているならそれでいい。


 少しだけ話をして、植物園の前に戻ることになった。

 そろそろ馬車も来ていそうだから。


「ユミリア様、これをどうぞ」

「これは?」

「お土産です。あまり入っていませんが」

「嬉しいわ。ありがとう」


 私達は、扉を開けマリカの家を出ようとした。

 だが、扉を開く前に開いた。


「貴女達は?」


と、驚いた顔をしている女性が立っている。

 きっとマリカの母だ。

 知らない人がいたら驚くのも無理はない。

 

「マリカさんの友人の、ユミリア・シスカと申します。本日は、マリカさんのご好意で家に上がらせていただきました。また後日ご挨拶に伺います」

「マリカの…友人……」


 その人は泣きそうな顔をしている。

 失礼なことを言ってしまった?


 その人は、微笑んで


「どうかこれからも、私の娘をよろしくお願いします」


と言った。


「もちろんです」


と私は答え、その場を去った。

 あの反応は母心というものなのだろうか。

 私に知る由はないけれど。


 最初に送ってもらった場所に戻ると、すでに馬車は来ていたので乗り込んだ。


「マリカさんにお土産もらえてよかったね」

「そうね、本当に嬉しいわ」


二人でニコニコしながら話す。

 そして屋敷に戻る道中でも、沢山話した。


 結果的にリンと二人で回ることにはなったけれど、それも良かった。

 義弟(おとうと)とのお出かけもいいものだね。


 またどこか遊びに行きたいな。

 次は、みんなとも一緒がいい。

 それなら絶対楽しい。

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