バルド・ハスティと話した
今日はいつもとは違うところを通って、植物園に向かっている。
少し遠くなるけど、動きたい気分だったのだ。
この学園で育てている植物も、少しずつ芽が出だしてる。
だから、これからも育てていくんだ。
そう思いながら歩いていると、声がした。
見てみると
「ふっ、ふっ…」
木刀を振っているバルド・ハスティがいた。
修行をしているのだろうか。
にしても、木刀を振る手が止まらない。
疲れないのか?
「誰かいるのか?」
視線に気づいたバルドが振り向いた。
そして、私と目が合った。
「貴女は、確か…ユミリア・シスカ様だったか?なんの御用だ?」
「あら、私の名前を知ってらしたのね。特に用はないのだけれど、通りかかったら貴方が木刀を振ってらしたから見ていただけよ」
「そうでしたか」
「敬語じゃなくていいわよ。貴方も喋りづらいでしょう?バルド・ハスティ」
「感謝する」
彼がお辞儀をした。
敬語じゃなくていいと言ったのは、単にむず痒かったからなんだけど。
まあいいか。
ゲームでも砕けた口調ではなかったけれど、敬語ではなかったからね。
口調というのは人それぞれなのだから、強要する気はない。
「ハスティはなぜここで木刀を振っているの?」
「バルドでいい。なぜ…か」
彼は、下を向いた。
聞いてはいけないことだったのだろうか。
「答えたくないなら無理にとは言わないわ」
「いや、答えたくないわけではないんだが……そうだな、俺は置いていかれたくないのかもしれない」
「置いていかれたくない?どういうことかしら?」
「学園に入り、騎士団から離れた。そうすると、俺以外の団員は父の元で教えられるが、俺だけは別の場所。そのうち、誰かに俺の席が取られてしまう…それが嫌なんだ」
バルドは本当は学園に入りたくなかったのかもしれない。
騎士団長である父の元を離れたくなかったのかもしれない。
父の元で、まだ騎士として一緒にいたかった。
それが彼の望みなのだろうか。
だが、彼の席が誰かに取られることはない。
決してない。
「バルドは思い違いをされていますわ」
「思い違い?」
「えぇ。貴方は自分の席がなくなると考えておられますが、そんなことはありません。貴方の代わりなどいない。それに、学園に入られてからもこうして稽古を続けておられるのですから」
私は思ったことを全て伝えた。
人は誰しも、その人だけの魅力というものがある。
バルドは……努力し続けられる。それが魅力だな。
「代わりは、いない?だが、俺は臆病で、本当は騎士には向かない性格で……」
「貴方がそう思われてても、ですわ。貴方は強いですわよ。稽古を続けることができる。それは、なによりも強いです。継続は力なり、ですから」
「継続は力なり…か。初めて聞いた言葉だが、ストンと入ってきた。そうか、俺は続けていけばいいんだな?」
「えぇ。バルドの思うままに、剣の稽古でもなんでもすればいいと思いますわ」
継続は力なり。この言葉を知らなかったのか。
知らない言葉でも、知ったらそれは糧になる。
彼がこの先どうするかは、わからないけれどね。
「あぁ。ありがとう、ユミリア」
「大したことは言っていませんわ。では、私はもう行きますね」
「またこうして話してくれるか?」
「もちろん」
私は笑ってこの場を去った。
元々植物園に向かう途中だったから。
まさかバルドと会うとは思っていなかった。
これでゲームの主要人物とは全員話したな。
ゲームとは違う。今は、これが私の現実だ。
この先も、みんなと仲良くできたら——
それはそれで嬉しいかな。




