バルド・ハスティ
今日この日、転入生がやってきた。
やってきた、というより元々入学する予定だったが、怪我で遅れてしまったのだそうだ。
そう、その男こそがバルド・ハスティ。
私が出会っていなかった、最後の攻略対象である。
怪我で入学が遅れるとは、なんとも彼らしい。
騎士団の団長を父にもつ彼自身も、戦闘能力に長けていて、よく駆り出されるのだ。
そこで怪我をしてしまったのだろう。
そして、彼が来たことにより本当の意味で『マジラブ』のゲーム本編が始まる。
役者はそろったのだから。
いよいよ、か。
私も心を引き締め、頑張らなければならない。
悪役令嬢、ユミリア・シスカ。私はそれになりきる。
彼女の高いプライドを見た時に思ったんだ。
この子は、芯があって強い。
ただ言い方が不器用なだけで、ヒロインにもキツく当たっているように見えるだけなのだと。
本当は、マリカとも話がしたかったのだろう。
けれど彼女の言葉は信じてもらえなかった。
制作者達は鬼か⁈とも思ったけど、恋は盲目とも言うからね。
彼女が成し得なかったことを、私がするというのもいいかもしれないな。
マリカと仲良く話す、か。
想像できないんだけど……
私自身、人と話すのは得意ではないし。
無駄に身についた社交スマイルなら、出せるけど。
まぁ、のちのち考えていくということで。
とりあえず、入学おめでとう。
バルド・ハスティ。
君ともまた、話してみたいよ。




