生徒会長
私は、今生徒会室にいる。
なぜこんなことになったのかというと……
時間は遡り、放課後になり私が植物園に向かおうとしていた時。
「ユミリア様ですよね?」
と、ひょこっと顔を覗かせてきた人がいた。
その男性は見たことがなかった。
ゲームでも知らない。
だから不思議でたまらなかった。
なぜそんな人が話しかけてくるのかと。
「そうですが、貴方は?」
「僕は、シェルド・モールトです。この学園の生徒会長をしています」
「生徒会長⁈それは、申し訳ございません。把握していませんでした」
シェルド・モールト……やっぱり聞いたことないな。
顔を見ると、攻略対象にいてもおかしくないと思うんだけど。
しかも生徒会長だし。
それより、まだバルド・ハスティには会っていないのよね。
会うならそちらが先かと思っていたのに。
「いえいえ、僕の存在感が薄いのはわかっていますから」
「本当申し訳ありません…あの、会長がなぜ私に?」
声をかけてくる理由はないはずなんだけど。
はっ、まさか植物園を撤去しろとか⁈それは嫌だな。
「セシルから、いえ新しく入ってくれた生徒会のメンバーから、貴女のことをお聞きしていたので」
会長が微笑んだ。
私の友人はみんな生徒会に入った。
この学園は成績上位者は生徒会に!ということになっているから、本当にすごい。
それにひきかえ、私は……
というか、私のことを聞いたって、なにを聞いたのだろう。
変なこと言われていないといいのだけれど。
「そうでしたか」
私はとりあえず、微笑んでおいた。
「あの、これからお時間ありますか?よければ、生徒会室でお茶でもいかがですか?」
会長が首を傾げる。
こういうおねだりには私は弱い。
それに精神年齢的にみんなより年上だから、我儘は聞いてあげたくなるのだ。
そしてついてきて、今に至るというわけだ。
断れないのよね。
会長の顔は童顔で可愛い。そういう人には弱くなってしまうのである。
「ちょうどいい茶葉をいただいたところだったんです」
会長がニコニコと話す。
生徒会にはファンが沢山いてよく差し入れも届くのだそう。
顔もよくて、家柄もいい、性格もいいからそういう人が増えるんだろう。
「ありがとうございます」
私は目の前に置かれた紅茶を飲んだ。
とても穏やかな味がする。香りも良い。
「この紅茶、とても美味しいです。なんだか、柔らかな風に包まれたような気持ちになりますわ」
「そう…ですか。そう言ってもらえて、嬉しいです」
会長は微笑んだ。
けれど、気のせいだったのだろうか。
一瞬、表情が曇った気がした。
ああいう顔を見ると、なにかが起こりそうな不安に駆られる。
どうか、どうかこの先、何事もないでほしい。
私は密かにそう願った。




