ヒロインに会ったらしい
「そうだ、あの子に会いましたよ。あの光の魔力保持者の…」
と、言われたのがヒロインと出会った翌日のことだった。
滅多に女性の話をしないステファンが話題に出すとは……
もうすでにマリカに惹かれているのだろうか。
一目惚れというやつか?私はしたことがないから分からないのだが。
さすがマリカだな。あんなに可愛くて優しい子だもの。一目惚れだってされるよね。
「それってマリカ・ローネですか?」
「ああそんな名前でしたっけ」
「珍しい魔力の方なんですから、覚えられたらどうですかね?」
リンが煽るようにそう言った。
ステファンに呼ばれたから、部屋に行くと言ったら、ついてくるって聞かなかったのよね。
基本的に、男子寮も女子寮も異性は入ってはいけないとなってるけど、親族や婚約者ならいいみたい。
そのおかげでこうして、美味しいお菓子をいただけるのだけど。
ステファンが選ぶお菓子は美味しいのよね。
「ユミリア以外に興味がないものですから。そういえば、そのローネさんが全速力で目の前を駆けて行ったのですよ」
「そんなことを⁈義姉さん以外にもいるんですね」
「僕もスカートで走る人は、ユミリアだけだと思っていたので驚きましたよ。指摘したら恥ずかしそうにしていましたし」
「そうでしょうね。なかなかいませんよ、そんな令嬢」
なんか、失礼なことを言われてる気がする。
まあ気にしないでいっか。
お菓子美味しいし!
でも、ヒロインに会った、か。
出会いイベントまで済ませている。
マリカ・ローネが全速力で走るところを、見たステファンがおてんばな人だ。と笑いかけるのがイベントである。
さっきの話を聞いてる限りは、そんなことは言っていないとは思うんだけどね。
それより、なんで全速力だったんだろうってずっと思っていたんだけど、多分猫を追いかけるためだったんだろうな。
猫はすばしっこいし、逃げ出しちゃったのかも。
昨日見たからこそわかることだな。
ゲーム内でそんなの描かれてただろうか?
忘れてるだけかな。
「義姉さん、なにか変なものでも食べた?」
「そうですよユミリア。地面に落ちたものは食べてはいけませんよ?」
考え事をやめ、前を向くと二人の顔が近くにあった。
「な、なんで?」
「だって静かだから」
リンが言う。
私が静かだからって、なんで変なもの食べたっていう思考になるのか……
「大丈夫よ。変なものなんて食べていないわ」
「それならいいのですが。念の為、今日はもうお戻りになってください」
ステファンが微笑んだ。
「お気遣いありがとうございます。美味しいお菓子もありがとうございました」
「君に喜んでもらえたなら良かったです」
そう言われてから、私は女子寮へと戻った。




