宴の終わり
そのあとナチェラも来た。
音に合わせて踊る。 ナチェラのリードは正確で踊りやすい。
やはりこういうのはリズム感も大事になるのかもしれないな。
「お前、今日はマシだな」
ナチェラがぽそっと言った。
マシって……相変わらずぶっきらぼうだ。
まあでも、そこがナチェラのよさかな。
「ありがとうございます。エマと一緒にドレスを選んだり、髪を綺麗にしたり…あっ、昨日は身体も念入りに洗ったんですよ!」
「ちょっ、こんなところで言うな!」
ナチェラが顔を真っ赤にしている。
マシだと言われたから、詳細を教えてあげただけなのにね?
踊り終えると、ナチェラも去っていった。
次に、セシルも来た。
益々色気が増している。
学園に入ってモテているのではないだろうか……
「セシル様、学園のほうはいかがですか?」
「特には」
そんな短い答えが返ってきた。
「では、意中のお方は?」
「いる」
「そうなのですね⁈どのような方なのでしょうか?」
この美形が好きになる人って気になるわ……
あれ?ヒロインのことはどうなるの?
浮気か?浮気は良くないよ?
でも、ヒロインに出会って心変わりするってことかもしれないものね。
「とても明るくて優しい人だ。好きになってはいけない人だが……」
そう言うセシルの顔は憂いをおびている。
好きになってはいけない人ってなんだろう。
はっ、まさか先生を⁈それはだめよね……
「セシル様ならきっとその方も振り向いてくださいますわ」
私は笑って、せめてもの励ましの言葉を伝えた。
彼も微笑み、去っていった。
私は少し休もうと、外に出る。
さすがに何度も踊るのは疲れるのよね。
気の知れた相手だったから、まだいいのだけど。
そうしていると、カイラとアルミネが来た。
「ユミリア様ここにおられたのですね」
「あら、もしかして探していたの?」
「はい。まだおめでとうと言えていませんでしたので」
「ありがとう。これからもよろしくね」
みんなも学園に入るから、これからも一緒。
それは心強いと同時に不安もある。
ついに本編が始まってしまうのだから。
「あの、ユミリア様。私とも踊ってくださいませんか?」
アルミネが言う。
「いいけれど、私男性パートは踊れないわよ?」
「こんなこともあろうかと、私が練習してまいりましたので!」
アルミネが手を差し出し、言った。
こんなことって、どんなことなのか……
まあ、それなら問題はないか。
私はアルミネの手をとり踊る。
踊り終わると、カイラが頬を膨らませている。
「私もユミリア様と踊りたいです!」
「では踊りましょう?」
「ですが、私も男性パートは踊れません…」
しょんぼりした様子で、俯いている。
「私が教えながらなら、できるのではないでしょうか?」
アルミネが横から言ってきた。
「そうね。アルミネ、頼める?」
「ユミリア様とカイラ様のためなら喜んで!」
数年が経ってカイラとアルミネも仲良くなったのよね。
最初の頃はお互い距離感を窺っていたけれど、よかったわ。
そうして私はカイラとも踊る。
慣れない動きで難しい。
でも、アルミネが教えてくれてるからなんとかできた。
「ふぅ、できてよかったわ」
「お上手でしたわ、ユミリア様」
「ふふっ、ありがとう」
こんなふうに、楽しい日々がずっと続いてくれればいいな。
学園に入学……
それでも、ここまで紡いできたものが急に消えるわけではない。
ずっと、平穏な日々。それが一番いいのよね。
そう思いながら、私は真っ黒な空を見上げた。




