魔性の男
数日経ち、屋敷にまたカイラがやってきた。
のだけど…隣にいる方の方にしか目がいかない。
なぜ、なぜ貴方もいるのですか!セシル・リライト!
聞いてない。聞いてない、そんなの聞いてない!
見てないふりをしたいぐらいだ。
いや、いつかは会うだろうなとは思ってたし。
なんなら本編始まる少し前ぐらいには会いそうだなとは、思っていた……
まさか今日だとは思っていなかったのだが。
「初めまして。セシル・リライトという。先日は挨拶ができず、申し訳ない」
セシルが胸に手をあて、淡々と言う。
間近でみる美形の破壊力……強いわ。
私なんだか、美形についてしか言っていないな?
最近間近で美形を見ることが増えてきたからかな。
「こちらこそ初めまして。ユミリア・シスカです。どうぞ、ユミリアとお呼びください」
「あぁ。わかった」
セシルが頷く。
「申し訳ありません。お兄様がついてきたいと聞かなくて…」
カイラが、申し訳なさそうに言った。
多分、妹の友人がどんなのか気になったのだろう。
妹想いのいい兄で、好感がもてるな。
私も姉だし、セシルの気持ちが少しはわかる。
「いいのよ。さぁ、部屋に行きましょ」
私は、いつも話をする場所に歩いて向かった。
後ろから、二人がついてきた。
なにも気にしてなかったけど、セシルの話し相手をどうしようか……さすがに暇になっちゃうよね?
あっ、そうだ!
「少し待っていて?」
「はい」
部屋に入ってもらった。
その間に私は、呼びに行く。
誰をって?リンをです!
私はリンの部屋の扉を叩いた。
私が壊してから、新品のピカピカになっている。
少しして、扉が開いた。
「義姉さん?どうしたの?」
「ちょっと来てほしいんだけど…」
「どこにかわかんないけど、いいよ」
リンがそう答えてくれたので、私はそのままつれてきた。
「お待たせ」
「ユミリア様、そちらの方は?」
セシルの話し相手としてつれてきたつもりだった。
けれど、カイラにも紹介していなかったみたいだ。すっかり忘れていた。
まあ、ちょうどいい、のか?
「私の義弟のリンよ。セシルとお話ししててもらおうと思って」
「まぁ!それはいいですね。私も、お兄様が退屈されるのではないかと心配していたのです。ありがとうございます、ユミリア様」
カイラが微笑んだ。
この兄弟は仲がいい。うちだって負けていないけれどね。
「ちょっと義姉さん、聞いてないんだけど?」
「言ってないもの。ダメ?」
「ダメとは言ってない」
小声でリンと話した。
毎回姉の我儘に振り回してごめんよ。
でもなんだかんだ聞いてくれるところ、好きだよ。
言わないけれど。
「初めまして。リン・シスカと申します。どうぞ、リンとお呼びください」
リンは、セシルを見て言う。
ほぼ私と同じような挨拶だ。
って、マナーだから当たり前か。
「俺は、セシル・リライトだ。よろしく頼む」
セシルも挨拶をし、私たちはそれぞれで話し出した。
小説の話をしていると、『私』のときの友達を思い出す。
前もこうして話してたな。懐かしい……
お互いが仕事始めてからは会う機会がなくなっちゃったけど。
元気かな、なっつん。確かめる術もないけど。
そうして時間は過ぎた。
ロマンス小説の話ができてとても楽しかった。
どうやら、リン達も楽しく話ができたようだ。
リンをつれてきて良かった。
「本日はありがとうございました。とても楽しかったです!」
カイラがニコニコと笑っている。
このあいだは、帰る時は悲しそうにしていたのにね。
いや、笑顔が一番なんだけど。
「私も楽しかったわ」
「またお話ししましょうね。次はオススメの小説を持ってきます」
「待ってるわ」
カイラが嬉しそうにしている。
「はい!」
カイラはそうして馬車に乗っていった。
それなのに、なぜ貴方は乗らないのか。
セシルは、私の隣に立ったままだ。
「えーっと……」
なにか用でもあるのだろうか。
と思っていると、彼が口を開いた。
「ユミリア、君は妹のことをどう思っているんだ?」
なんてことを聞いてくるんだ、この人は。
とはいえ、答えることは一つだけどね。
「大切な友達ですよ」
「そうか…」
セシルは、ほっ、としたように微笑んだ。
その横顔は綺麗で、他の人が見たら惚れそうだなあと思った。
「セシル様は、妹想いですね。それに、あんな可愛らしい妹さんがいて、ご兄妹を大切にしてくださるご両親がいて……正直、羨ましいですわ」
私の言葉に一喜一憂するカイラは可愛い。
あんな妹がいるだなんて本当に羨ましいわ。
私の弟も可愛いけどね。
そこは譲れない。
「……羨ましいか?俺のことが。カイラという妹がいて、羨ましいか?」
セシルが少し黙ってから言った。
そういえば、カイラが言っていたっけ。
自分は呪われた子だと言われて、兄にも迷惑をかけてしまっていたと。
そうか。それでか。
羨ましいのかと、二度も聞いてきたのは。
そんなことを言われてこなかったから、気になったのだろう。
「羨ましいですよ。私の家族も、最高ですけどね!」
私は、自分の主張も含めて言った。
「ふっ、そうか…」
彼はもう一度微笑んだ。
眩しい笑顔だ。
私はその笑顔で固まってしまった。
セシルは、そのまま馬車に乗りに行った。
「また一人落ちたなぁ」
「落ちたって、なにに?」
「なんでもないよ」
固まってたけど、リンの声が聞こえたので、咄嗟に返事を返した。
リンは、なにかを含んだように言っていた。
気にしなくていいってことかな。
私達は、屋敷の中に戻った。




