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面白い奴

 俺の名前はナチェラ・マウロ。

 この国の第四王子だ。

 俺には双子の兄がいる。

 そいつの名前は、ステファン。

 俺の大っ嫌いな奴だ。


 いつもいつも、比べられてきた。

 双子だから、いいところを全部ステファンに取られたんじゃないかとも言われていた。

 あいつと比べられることが俺は嫌だ。

 だから、あいつのことも嫌いなんだ。


 ある時、俺の婚約者が決まった。

 年も同じだからいいだろうと紹介された。

 それがアルミネ・グラシエリ。

 噂では気弱な令嬢だと聞いていたが、全然違った。

 背筋が伸びていて、ハキハキとよく喋る。


 そんなアルミネが話すのは、ユミリアという令嬢の話だった。

 俺はその名を聞いたことがあった。

 ステファンの婚約者の、ユミリア・シスカ。

 あいつがいつだったか楽しそうに笑っていたから覚えている。


 アルミネが、ユミリア様がーと何度も言うので俺は気になってきた。

 その令嬢がどんな奴なのか。

 そして文句も言ってやろうと思った。

 半分あの気に入らない奴を困らしてやろうという思惑もあったのだが。


 だから、シスカ家の屋敷に行ったのだ。

 それから、俺は文句を言った。

 俺の婚約者を(たぶら)かすなと。


 そう言うと、ユミリアは、俺の話がつまらないからだと言った。

 面白い話なら耳を傾けるだろうと。


 俺はそれを聞いて、勝負を申し込んだ。

 勝ったら、アルミネには近づくなという条件つきで。

 ユミリアはその勝負を受け入れた。


 数日後、俺はまた屋敷に行き、ユミリアが来るのを待った。

 ユミリアが来ると、俺は勝負だ!と言った。


 内容はユミリアが決めた。

 なににするのだろうと思ってたら、土の耕し対決というよく分からないものだ。


 俺はクワなんて使ったこともなかったし、土を耕すのもしたことがない。

 ユミリアがなぜこれを選んだのか不思議だった。

 だって令嬢なのだから、そんなのしたことないだろうと、そう思っていたのだ。


 だが、ユミリアはどんどん耕していき、俺よりも早く終わった。

 負けると思ってなかった。

 こんなよくわからない令嬢に……


 俺は再戦を申し込んだ。

 何度も何度も。勝つまで続けるために。

 内容は毎回ユミリアに決めさせた。


 何度目かも分からないが、また屋敷に訪れた。

 扉を開けると、ステファンがいた。

 俺は今までこの屋敷では会っていなかったのに、なぜ今日はいるのだと驚く。


 そして、ユミリアが勝負内容を言ってきた。

 ピアノ対決だと言う。

 

 最初にユミリアが弾いた。

 あまり、いい出来とは言えるものではなかった。

 次に俺が弾く。

 

 演奏が終わると、拍手が聞こえてくる。

 少しだけ自信があったので、誇らしい。

 ユミリアも、すごい。と目をキラキラさせてきた。


 だが、ステファンが褒めてきた時に、俺の感情はよく分からないものになった。

 苦しいのか、嬉しいのか、お前に言われたくないとか。

 とにかく、そんな気持ちになって思わず外へ飛び出した。

 そうして、誰にも見つからないだろうと茂みの中にある木の下に隠れた。



 俺より出来る奴に褒められても嬉しくない。

 いつもいつも、お前のほうができるくせに。

 褒めてくるな。調子がくるうんだ。

 と、そんなことを考えながらいた。


 その時、音がして見てみると、ユミリアが立っていた。

 なんでと聞くと、あんなふうに出ていったから気になった。と言う。

 だから俺はさっき考えてたことを言った。


 するとユミリアは


「ナチェラ様は、ダメなどではないでしょう。それに、ステファンに出来ることがナチェラ様に出来ないのなら、ナチェラ様が出来ることだってステファンには出来ないのです」


 と、真っ直ぐ俺を見て言った。


 俺に出来ることはあいつには出来ない……

 そんなこと言われたのは初めてだった。

 けれど、俺は一つ疑問に思った。


 あいつに出来ないことなんてないんじゃないか?

 俺がそう言うと、ユミリアはあいつの弱点を知っていると、笑った。


 弱点?そんなものがあっただろうか。

 そう思っていると声がした。

 ステファンが俺たちを探す声だ。


 ユミリアが、なにかを取り出し、ステファンの前に投げた。

 ステファンは驚いて、後ろによろけた。


 何を投げたのかと聞くと、ミミズのおもちゃだと得意気に言う。

 どう見ても、ゴミのような見た目をしていると思った。

 それをそのまま伝えると、大声で反論してくる。


 バレるだろう。そう思った時にはもう遅かった。

 ステファンが上から、紙を握りしめて、ユミリアに話しかけている。


 その様子を見ていると思わず笑いが出た。

 こいつがこんなに笑ってるのを見たのが初めてだった。

 ただそれだけなのにな。


 ユミリア・シスカ。その令嬢は、噂で聞くよりも、はるかに面白い奴だった。

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