私、名言取っちゃってた?
今日も今日とて、植物を育てている。
なんかこういう歌詞があったような気がする。
まあそんなことは関係ないのだが。
数日前から私には、魔法を教えてくれる先生がついた。
その先生からは植物を育てても魔力は強化しないと言われたけれど、これは私の趣味になったのだ。
「いい天気ね!植物もぐんぐん育ちそうだわ!」
私はおでこをこすった。
「義姉さん、今ので土がついちゃったよ」
「えっ、どこかしら?」
リンに言われたので、首に巻いてたタオルで拭き取る。
「そこじゃないって」
そう言われたけれど、わからなくて困ってたら
「ここですわ。ユミリア様」
と、アルミネが私のタオルをとり、拭いてくれた。
「ありがとう。アルミネ」
植物が元気になってからもアルミネはよく来てくれた。
もしかして、この世界での初めての友達なのかもしれない。
実際そうだけれど。
「そうだ、アルミネは第四王子にはもう会ったの?」
「なぜそのお話を?」
そうか、私はそれを知らないってことになってたのか。
適当にごまかそう。
「えーっと、そんな噂を聞いたのよ」
「そうだったのですね。確かに私は第四王子のナチェラ様にはお会いいたしました」
もうすでに会ってしまっていた。ということは、また私の破滅への道が……
いや、よく考えたら私はナチェラルートでは関係ないよね。よし、気にしないでいよう!
「そうなのね。どんなお話をしたの?」
「あの、お恥ずかしいのですが…ユミリア様に暖かい手と言っていただけたことなどを……」
アルミネは頬に両手をあて、顔を赤らめている。
それは乙女の顔である。
まさか私の話をするだなんてね。
それに、さっき思い出してしまった。
暖かい手というのはナチェラが、アルミネに言った言葉であったということを。
その言葉でアルミネはナチェラに惚れて、立派な令嬢になるために頑張ったのだということを。
私がナチェラとアルミネの大切なシーンをとってしまったってことじゃないの!
しかも、アルミネがそれを話すだなんて、私はやらかしてしまったのでは?
「ユミリア様?」
考え事をしていた私をアルミネが不思議そうに見てきた。
「な、なんでもないのよ。私の話をしてくれて嬉しいわ。けれど、王子の話も聞くのよ?」
「それはもちろんです」
アルミネは頷いた。とてもまっすぐな瞳をしている。
こんなに明るくなるだなんて、本当によかった。
女の子は笑っている方が可愛いものね。
そうして、作業を続けて夕方になったらアルミネは帰った。
「第四王子ともう会ってるとはね…」
「わかっていたことでしょう?」
「そうだけど、アルミネが私の話をするとは思ってなかったのよ。男のプライド的に大丈夫なのかしら?」
「さあねー」
リンは棒読みで答えた。
「リン?どうでもいいって思ってる?」
「僕は義姉さんが危険じゃないならそれでいいから」
「もー」
義弟のデレがすごくて照れる。
でも、今はそうじゃないんだよね……
「なるようにしかならないんじゃないの?」
「それもそうね!」
私は対応策を後でしっかり考えようと思いながら、農具の片付けをしてから屋敷の中に入った。