お茶会に行きました
数日後、私はお茶会に行くこととなった。
とある屋敷に招かれたのだ。
出る前に、お母様に
「くれぐれも、粗相のないように!」
と、釘をさされた。
そんなことしないのにな。
リンもいるし、なにかあっても大丈夫だろう。
「本日はお招きいただきありがとうございます。
ユミリア・シスカと申します」
私はドレスを少し持ち上げ、お辞儀をした。
そして、私に向かって二人の女の子が挨拶をしてきた。
それから、少し後ろに立ってておどおどしてる子が
「は、初めまして、三女のアルミネ・グラシエリと申します…」
と、挨拶した。
その子は、見覚えがあった。
オレンジ色の髪で、カチューシャをつけてて、おどおどした感じ……
そうこの子は、ライバルキャラで登場してきた子だ。
ゲームではおどおどしてなくて、堂々とした令嬢だったから気づかなかった。
でも、名前を聞いた瞬間確信した。
ここから成長するだなんて……すごい努力をしたのだろうな。
考え事をしてたら、前から人がいなくなってた。
「あ、あれ?」
「義姉さんが考え事をしてる間に皆さん中に入られたよ」
「そうなのね。リンはいてくれてありがとう」
「一人だったら何しでかすか分からないからね」
心配してくれているのかなんなのか……
その通りかもしれないけど。
私達が話してたら、周りの令嬢や令息が近づいてきた。
初めてお茶会に来たからだろうか。挨拶を沢山された。
さすがに疲れる。
やっと中に入れた。
スイーツがいっぱい置いてある。
とても美味しそうだったので、私はクッキーに手を伸ばして食べてみた。
「んー、美味しい!」
もう一個と食べ、他にも、マドレーヌなどがあったので食べる。
甘いものって本当に美味しい。お母様達にも食べてほしいな。
「義姉さん、食べすぎだよ。お腹痛くなっちゃうでしょ?」
「大丈夫よ!うっ」
お腹がギュルギュルと唸った。
「ちょっとお花摘みに行ってくるわ!」
私は走った。
全力だったけど、数人にしか見られてないから許してほしい。
「言わんこっちゃない…」
と、後ろから聞こえてきたのは気にしない。
そうして私はお腹の痛みを落ち着かせ、屋敷の中に戻ろうとしていた。
しようとしていた、のである。
「ま、迷った…」
忘れていた。自分が方向音痴だということに。
屋敷の外に出てなかったから、忘れていたな。
『私』の時は気をつけてたのに。
どうしようかと思いながら歩いてたら、綺麗なバラ園を見つけた。
そこにいたのは、アルミネ・グラシエリだ。
人がいてよかった、と思いながら私は話しかけてみる。
「こんにちは」
「こ、こんにちは。ユミリア様…」
後ろから突然声をかけたからか、驚かれた。
怖くならないように声をかけたはずだけど。
私の顔が少し怖いのは自覚してるから。
「突然ごめんなさい。道がわからなくなっちゃって。教えていただけると嬉しいのだけれど…」
「わかりました…」
彼女は立ち上がった。
バラを見てたのに良かったのかな?と聞いてみた。
「ここのバラ達はとても綺麗ですね。ここは誰が育てておられるのですか?」
「わ、私です」
「一人でですか⁈」
「は、はい…」
こんな綺麗なバラを一人で。
瑞々しくて色もよく映えてる、このバラ園を小さな手で一人でだなんて……
私にはとてもできそうにない。
「私も植物を育てているのですが、先日芽がしおれてしまいまして。ですので、よろしければ私の植物を見ていただけませんか?」
私は頬の近くで手を合わせて言った。
アルミネは困った顔をしてから
「ユミリア様が植物を?私でお力になれるかわかりませんが、ぜひ見てみたいです」
と、言ってくれた。
「本当に?では明日お願いしたいわ。それより、今は道を教えてくれると助かるのだけど…」
「あっ、そうでしたね。こちらです」
アルミネは私に、場所を教えてくれた。
大体、トイレからの道が長いのよ。
屋敷ってどうしてこんなに広いのか。
お礼を言うと、彼女は笑って元いたバラ園に戻っていった。
あまり華やかな場所は好きじゃないみたいだ。
「義姉さん遅かったね。また迷ってたの?」
「うん」
リンは私がよく迷子になってたのを知ってるから、また?って聞いてきた。
まったく……と小声で言ってたけど聞こえてるからね。
あえて言わないけど。
それからお茶会はお開きになった。
私達は帰った。
そしてアルミネとの約束を楽しみに私は眠った。