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1:まさかの

「カナト!お前10月からビスリーのアンダス支社行ってくれ」

「えっ、マジっすか?」


 カナト・ササマキ19歳。

 魔道具生産大国として名高いトウワコクに生まれ、研究職としてそこそこ大手の生活魔道具会社に入社し1年ちょっと。

 まさかの獣人大国への赴任が決まった瞬間だった。






「いやー、来てみればあっという間でしたね。あと半年ちょっとで任期の3年がきちゃいますよ」

「ふふ、初めは獣人大国の地方都市への赴任なんてどうしようって思うけど、意外と住み心地いいでしょ?私なんて旦那見つけて永住決めちゃったもの」

「いいなー、俺なんて全然出会いないんですよ、ヒトにも獣人にも非モテって悲し過ぎません?」


 客足が途絶えて、一緒に店番のナガセさん相手に談笑タイム。


 あの突然のビスリー行き宣告から3年弱、住めば都とはよく言ったもので、今ではすっかりこの街が気に入っていた。

 たまにコワイ獣人が来てヒヤリとすることはあるものの、冒険者ギルドの近くに構えた店舗兼研究事務所にはあまり問題を起こす人は来ないし、問題が起きそうなら冒険者ギルドに助けを求めれば誰かしら強い人が駆けつけてくれる。


 文化や人種の違いはあれど、生活水準は似たようなものだし、慣れてしまえばどうということもなかった。


「ササマキ君、いい人なのになんでモテないのかしら?」

「あー、それ。そのいい人なんだけどねーってやつ!地味に傷つくんで!」

「ごめんごめん。でもその内いい出会いがあるわよ。入社間もないうちにこっちにくる人って、優秀だって評価されてる人なのよ。自信持ちなさい」

「うぅ、ほんとうですか…」


 この国に来る前、カワイイ獣人の彼女ができちゃうかも⁉︎という淡い期待があったのだが、ただの妄想のまま任期を終えそうなことが大変悲しい。


 いや、俺が悪いんじゃなく、出会いの場が少ないのが悪いのだ。

 アンダス支社のある街はヒトの国からは距離があるし観光地でもないため、街中でヒトを見かけることは少ない。きっとヒトが歩いているだけで目立つし、獣人には使えない魔法なんかを見せた日には、若い獣人のお嬢さん方にモテモテになれるのではと思っていたが、そもそも魔法を見せる機会すらほとんど訪れない。


 職場でもこうして店番が回ってくる時以外は、基本研究室で新しい魔液(魔法陣を描くための液剤)や魔法陣の組み合わせの研究をしているので、素敵な獣人女性と出会う機会は少ない。

 ギルドから必要な素材を持ってきてくれるのも筋肉質な男の獣人だし、数少ない現地採用の獣人女子は既婚者と彼氏持ち。


 残念だ。


 大体、ヒトと獣人の合コン文化がないのがおかしい。歴代の先輩方は一体何をしていたんだろう。

 誰か企画してくれ。


 ああでもここで、「俺が企画しまーす」というアクティブ陽キャ要素がないのが、きっと俺が今ひとつモテない理由なのかもしれない。

 そう思うとますます悲しくなってきたので、もうこれ以上は考えないことにした。





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