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第3話

 私達はやっと、ただかき込むだけの食事、寒さをしのぐためだけの衣服、あとは仕事、という場から離れ、遅ればせながら、地域の学校に通わせてもらう様になりました。

 大きな姿で子供と一緒に習うのでしたが、それまで判らなかったラベルの字、そしてやがて本が読める様になったのは本当に嬉しかったです。

 もともと仕事としていたので、家事は万端でした。

 食費が上がったぶん、メイドを雇うのに苦労しそうになっていた二人に、自分達が手伝う、と切り出しました。

 そして実家とは縁を切った様な形になっていたのですが。

 ある日叔父が、用事があって実家に出向いたところ、何だか様子がおかしかった、ということでした。

 というのも、父は母を亡くして以来、ずいぶんと酒に溺れる様になっていました。

 お金には困った様子はないのですが、酒に溺れる父が次第にメイドに手を出す様になりました。

 ただ出すだけでなく、暴力を振るうのです。

 それで辞めて行く者が増え、悪い評判から新たに入る者も無くなってきたそうです。

 一方で、次第に婚期がやってきた姉の方には、なかなか良い縁談が来ません。

 でも彼女は既に社交界に出ていましたので、男友達はできていた様です。

 そこで、家に連れ込んでは、……淫らな遊びをする様になったというのです。

 そんな中で、弟のジャイは、私達とは違って、使用人達から守られる様にして何とか生きていました。

 長男だから父は何とか弟に良い暮らしをと部屋を用意し乳母を用意し、物を贈るのですが、何せその父にしたって、いつも正気という訳ではありません。

 そして姉です。

 悪い評判が評判を呼び、彼女自身を普通に呼ぶ女同士の社交というものが全く無くなってしまった様なのです。

 父親にいい縁談は無いのかと聞いても何も無い、来ない、何をやってるんだ、と怒られる始末。

 彼女はずっと甘やかされてきたので、では何をすればいいのかなんてまるで知りません。

 姉は自分の代わりの様に父に構われる弟の姿が目に入ると、捕まえてはあの様に、あざができるほど打ったりつねったりする様なりました。

 叔父は一年に一度二度しか用事を作らないのですが、その都度、使用人達から小さな坊ちゃまを助けて欲しいのです、と言われてきたそうです。

 だから叔父は、弟が自分の言うことを理解できる様になった頃、こっそり告げる様になりました。

 もし本当にこの家が怖くていられない様になったら、良い服のまま飛び出して一番近くの警邏のひとを探しなさい。そしてこの家の名前を言うんだ、と。

 そうすれば、届けてくれるから、と。


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