表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
80/130

80 定例会 第二議題

ゴードンから小型チャーター機での移動中に


「そういえば報告を失念しておりましたが、わたくし、少々キレまして、アイスラー本家を軽く潰してきてしましました。それを知っているとは思いませんが、万が一を考えまして、今更ですがお伝えしておきます」


と伝えられ、驚いたアランはその場にいたダンカンを問い詰めた。

すると軽くどころではなく、


「修復するくらいなら更地にして立て直したほうが早いっすよ。捕らえたヴァンパイアもおそらく焼け死んでるっすね」


という、どう回収していいのかわからない話を聞かされて、心底参った。


それをこの場で意気揚々と出してくるとは…アランは穏やかな表情の裏で、かなり必死に打開策を練りまくった。

こんなときウィルなら、と臍を噛む。


「一体、どういうことなの!うちを壊滅ってどういうこと!」


ヒステリックに叫ぶエミリアを何事かを囁いて宥めているロルフがじろりとアランに視線を寄越す。


「ご説明、していただきましょう」


怒りのこもった低い声が思いのほかアランの耳に刺さった。

ゴードンは我関せず、と知らんぷりだ。

このやろう…と内心では拳を握るが、アランはロルフに鮮やかな笑顔を向けた。


「これは報告が遅れて申し訳ない。理由がなくしたことではない。確かに過ぎたこともあったかもしれないが、先に仕掛けたのはアイスラー家。こちらは火の粉を払ったに過ぎない」


「はぁ?エックハルトのことはもういいでしょ!あんたたちが殺したんだから!」


「エックハルト殿とは別件にて。実は我が一族のものがそちらの塔で囚われており、それを助けにいったまでのこと。さらに言えば、我が一族のものを狩っているものがいるとの情報があり、調べてみればヴィクトー殿であったので、是非とも彼と話がしたいと思っていたが、所在が掴めず困っていた。ところがアイスラー家で匿われているとの情報を得たので、彼を迎えに行ったのだが、少々手強い抵抗にあい、致し方なく応戦したところ、結果が半壊、ということになっただけ。成り行き、としか説明のしようがない」


ロルフが何かを言おうと口を開きかけたとき、被せるようにアランは続けた。


「どうやらヴィクトー殿だけでなく、アイスラー家のヴァンパイアと組んでクレモン殿も当家のヴァンパイア狩りに参加していたとの証拠もあり、今回の会に議題としてあげたいと思っていた」


言ってにやりと黒い笑みを浮かべる。


「まさかすでに議題に上がっているとは用意のいいことだ」


今度はクレモンが腰を抜かした。

そんな証拠、どこに…と思った瞬間、エックハルトとやり取りした手紙と契約書を思い出した。

魔術師は信用できない相手との仕事には契約書を用いる。裏切り防止の魔法陣を描いた紙で契約することで、互いに利に反することができないように制約をかけるのだ。

それを証拠として出されれば、逃げようがない。


「そちらのダンカン殿のことは…」


ロルフが取り澄まして言いかけ、すぐにゴードンが冷たく止めた。


「ダンカンは己で行ったが、ジョシュアに限っては己の意に反して監禁されていたとの報告を受けております。実際、わたくしが救出に向かった際には塔に閉じ込められておりました」


いっそ無礼に思われるほどの慇懃さで語り、ゴードンは小さく頭を下げた。


「致し方なく壊してしまいましたが、本意ではございません」


「なっ!」


エミリアが言葉を失う。

己のいない間に自宅が消失したというのは、どれほどのショックだろうか。

長年慕ってきた相手からは断られ、さらに家までなくし、エミリアの心情は察するに余りあるが、ロルフはそれに構っているわけにはいかなかった。

ことはアイスラー家存続の危機にある。

どう切り抜けるか、その頭脳は未だかつてないほどに高速回転を始める。

が、いかんせん、あまりにも条件が悪い。

逃げる道を探るにしても、ヴァンヘイデン家を道連れにするくらいしか策はない。

準備がなさすぎ、情報が不足しすぎた。


「なるほど、アラン様の言い分には納得しよう。証拠もあるとのこと、これもまた人狼の件と同じく、のちほど議題に上げ、精査することにする。では次の議題を」


マリアンが収拾のつかなくなった雰囲気にケリをつけるように言い放った。

これにはロルフもアランも胸を撫で下ろした。

これで時間を稼げる。

両家共に同じ思いで、瞬間視線を交わしたが、そこに共感はなかった。


立ち直れない様子のクレモンにまたもや扇で叱咤したマリアンは、その情けなさに、ヴィクトーが後継者にクレモンを選ばなかったのは正解だったと内心思った。


「えーでは、次の議題に入ります…」


なんとか絞り出してクレモンは言った。


「第三の議題、ヴァンヘイデン家をバング家の配下にする」


その声は今までと違い、かなり弱弱しく告げられた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ