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55 ダンカン、護衛、して?

やっと本来のダンカンを出せました。

楽しんでくださったら嬉しいです。いつも読んでくださってありがとうございます。

逸朗に対する劣等感と嫉妬心に我を忘れるほど怒り狂ったエックハルトによって、俺とダンカンは地下牢に入れられた。

あのまますぐにでも食べられちゃうかと覚悟した俺だったが、屋敷の中で暴動らしきものが起きたとの連絡が入ったことでエックハルトはヴィクトーに呼び出されていった。


だから使用人を追い出すような真似はよせと言ったのに!と文句を垂れながら、去っていったエックハルトの命によって、俺はダンカンと一緒に監禁されていた。


「大丈夫?怪我はしてない?動ける?」


舐められているのか、とくに拘束もされず閉じ込められた俺はダンカンに駆け寄った。


「なんでもないっすよ、俺よりも大輔さまは問題ないっすか?」


「俺は大丈夫、ちょっと顔が痛いくらいだから、それより拘束されてるようにみえないんだけど、やっぱり拘束されてるんだよね?」


ダンカンの身体をあちこち触るが、やっぱりロープなどで縛られているようには見えない。


「魔術っすよ、どっかに魔法陣みたいの、ないっすか?」


言われて俺は丹念にダンカンの身体を検めた。

すると手首にひとつ、足首に一つ、さらに首の後ろにひとつ、直径1センチ程度の点のようなものが付いていた。取ろうとしても取れないので、肌に直接描かれているらしいとわかった。仕方ないのでごしごしと袖で拭ってみるが、あまり効果はない。


どうしよう、とダンカンに聞けば、パンツに小さなナイフを隠してあるから皮膚ごと切り取るように言われた。


「解剖とか得意っしょ!」


確かに解剖は好きだけれど、守りたいと思っている相手の皮膚を切るのはまったく違うような気もする。


「俺、ヴァンパイアっすよ!そんなもん、すぐ治るんすから早くやっちゃってくださいよ!」


エックハルトから俺を守ろうとする健気な姿勢はあっという間に霧散した態度で俺を叱咤したダンカンは身をくねらせながら俺に背中を向けて、手首を差し出した。


「痛いけど、我慢してよ。じゃないと俺、できないから」


「わかってるっす!」


仕方ない。

腹を括ってダンカンの手首を取ると、ナイフの先端を注意深く差し込み、ジャガイモの芽を取る要領で抉った。

びくりと彼の身体が跳ねるが、声を立てることはなかった。

さすがだと、感嘆する。


同じ要領で足首と首の後ろも抉ってやった。


「解放~!」


清々しいまでの叫びをあげて、大きく伸びをしたダンカンはすぐに地下牢から脱出する策を練り始めた。

そのときだった。


「ねぇ、もしかしなくてもダンカンじゃない?」


壁から女の声がした。

鈴が鳴るような軽やかで涼やかな声。


聞いたダンカンが固まり、声に耳を澄ました。


「ダンカンでしょ、聞こえてる?」


「もしかしてミーナぁ?」


「やっぱりダンカン!あなたも捕まったの、バカねぇ」


高らかな笑い声。

あからさまに舌打ちをして、足を高く上げたダンカンが壁を蹴った。

一度、二度、と蹴るうちに石造りの壁にヒビが入っていくのがわかって、俺はエックハルトに対峙していたとき以上に震えた。


なんちゅうバカ力……


そして大きな破壊音を立てて壁が崩れ、ミーナという女の姿が露になった。


ボロボロの服、饐えた臭い、艶を失ったロングヘアに、両手足を鎖で繋がれた女。


「ミーナ!」


ダンカンが隣の地下牢に入り込み、すぐに彼女の両手足の骨をバキバキと折った。

痛みにミーナが叫び声をあげたが、ダンカンはお構いなしで手錠から両手両足を引き抜いた。あまりにも乱暴なやり方に俺は呆然と立ち竦む。


ヴァンパイアだよね、彼女はヴァンパイアだよね?

そうじゃなかったら二度と使えない手足だよ、あの複雑骨折…


心の中で確認をした俺はダンカンの手段を選ばないところには気を付けなければ、と肝に銘じた。


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