41 はじめまして、プロジェクトメンバーさん
後半、ゴードンの心の声です。
いつも読んでくださり、ありがとうございます。
「よろしくお願いします」
ぺこりと頭を下げた俺の前にはヴァンパイア、ヴァンパイア、ヴァンパイア……
どの人もみな、背が高く、美しく、そしてスタイルがいい。
けれど不思議と女性がいない。
「全員、ヴァンヘイデン一族のものだ。ヘンリーの造り手が多産でな、次から次へと拾ってきては一族へと加えていくんだ」
「多産って…生み出してるけど、生んでるわけではないですからね、ウィリアム様」
呆れたように髪の毛をわしゃわしゃと手で乱しながら言ったのがチームリーダーのオリヴァーで、見事な金髪とちょっと変わった色をした瞳を持っている。
よく見るとブラウンなのだが、光が当たると途端にゴールドに輝く瞳。
思わず吸い込まれそうになるほど綺麗だった。
「ヘンリーの造り手って男の人しか生まないの?」
「いや、生むんでなくって…」
すぐに否定したのは一番背の高いヴァンパイアで、レオ。
彼はものすごく鮮やかな蒼に髪を染めていて、その色と同じ瞳の色をしていた。
全体的に華奢な印象で、ヴァンパイアでなかったらものすごく自衛能力の欠如した男なのではないかと俺は思った。
およそその身体に筋肉は見当たらない。
「はじめはメンバーに女性もいたのですよ、大輔さま。でもウィリアム様がメンバーすべてを男だけで構成すると昨日の時点でおっしゃられて、急遽このメンバーになったんです」
淡々と説明してくれたのは冷静さではこの中で一番ではないかと思われるローガン。
とても知的な顔立ちで、受ける印象がヘンリーと真逆だった。
青白い顔色の中でひと際強く光る黒い瞳が印象的で、常に口は真一文字に閉じられていた。言葉を発するときに眉根を顰める癖があり、それが妙に艶っぽく魅力的だ。
ローガンのセリフに俺はじっとりと逸朗をねめつけた。
その視線を避けるように泳がせたあと、頼んだぞ、とジョシュアの肩を叩いてラボを出て行った。
そして最後のヴァンパイア、ジョシュア。
どうやら逸朗のことをとても尊敬しているようで、頼まれた責任感で胸がいっぱいになったかのように瞳を潤ませている。
メンバーの中でだれよりも人間らしく、表情も豊かな男で、ふわふわとカールした銀髪にみえるほど薄い金髪を持っていた。
瞳の色はハシバミ色。
それが夏の草原を思い描くほどキラキラと輝いていた。
オリヴァーは成分分析専門スタッフ。
レオは遺伝子解析専門。
ローガンがバイオ系技術者。
そしてジョシュアはラボ内すべてに精通した助手として実験担当だという。
俺はジョシュアに付いて、様々な実験をしながら一応単位取得のためのレポート作成をするらしい。
それについてのテーマを考えることからスタートしなくてはならないことに今更気付き、おおいに焦った。
ヴァンパイアしかいないなら秘密の実験をしても問題ない、と勝手に思い込んでいたから、対外的なテーマを用意していなかったんだ。
それをジョシュアに正直に話し、なにをしたいか、そしてそのついでにどんなことなら対外的なテーマとなりうるのか、一緒に考えてもらうことになってホッとした。
大輔さまをラボへと残し、階下へ降りてこられた坊ちゃんはとても落ち着きがございません。部屋へ向かったかと思うと、リビングに降りてきて乱暴にスコッチをグラスへと注いで煽るように飲まれます。かと思えばすぐに階段を上り、大輔さまの部屋のドアを開けて覗いたりしております。
そして廊下で天井を見つめ、じっと耳を澄ませたりもなさいます。
壁一枚、天井一枚挟むだけでも不安が募るご様子に、ヘンリーは笑っていますが、わたくしは辛くて仕方ありません。
坊ちゃまの心の平安がわたくしの幸せでございますので、このように心を乱されてはわたくしの心も千々に散ります。
今すぐにでも大輔さまをラボから連れ出し、坊ちゃまへと献上しようかと何度も考えますが、坊ちゃまのご様子を伺うと、それが得策でないことがわかりますので、自重いたします。
わたしくしの気高く美しくご立派な坊ちゃんは大輔さまに許せる限りの自由をお与えになるために必死でいらっしゃることがわかるからでございます。
愛されていることを自覚しつつも、己の強すぎる独占欲を今以上にあらわにして嫌われたくないという葛藤に懸命にも戦っておられるのです。
すでに伴侶となさったのですから、嫌われることなどあり得ないと、わたくしなどは思うのですが、坊ちゃんはそうお考えにはならないようです。
「ゴードン、すまないが、なにか作ってくれないか?」
リビングに降りてこられた坊ちゃんが天井を見上げたまま、わたくしに命じられます。
大輔さまへの差し入れでしょうか。
会うための口実が欲しいのでしょう。
「すぐにご用意いたします」
簡単につまめるものが宜しいでしょうか。
それとも休憩と称したおふたりだけのお時間が作れるようなものが宜しいでしょうか。
考えているわたくしの横で可笑しそうにヘンリーが笑っているのが、癇に障ります。
キッチンへと向かうときに、投げ出していた彼の脚を全体重を乗せて踏んでやります。
「いたッ!」
叫んだヘンリーに坊ちゃんが不思議そうに目をやりましたが、何事もなかったようにわたくしはサンドイッチを作り始めます。
出来上がったサンドイッチをバスケットに詰めて、わたくしは坊ちゃんへ渡しました。
そのときの嬉しそうな笑顔。
それだけでわたくしはヴァンパイアに成ってまでお側にいる価値があると確信できます。
大輔さまには少々やきもちを焼いておりますが、坊ちゃんを笑顔にしてくださることは心より感謝しておりますので、わたくしの命をかけてでもお守りしていこうと本日も決意を新たにするのでございます。




