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22 大輔、告白しちゃう

イギリスへ旅立つ前日。


いつものようにベッドで逸朗を迎え、キスをしていたときだった。

俺の首筋に沿うように逸朗の舌が這い、俺は驚いて逸朗の顔を両手で挟んだ。そして強引に俺のほうを向かせる。

先ほどまで上機嫌に煌めいていた瞳が不安げに揺れていた。


「どうしたの?」


ふい、と視線を逸らされる。


「明日、イギリスに向かう」


「そうだね」


「狼も同行する」


「うん、知ってる」


「……」


逸朗は俺の胸に顔を寄せて、小さく息を吐いた。


「小百合も同行する」


「うん、そうだね」


「私はそれが嫌だ」


拗ねた声。

少し掠れて、それが堪らなく艶っぽい。

ぞくぞくとした快感が俺を貫いた。


「大輔が小百合を気に入ってることはわかっている」


「そう?」


ずっしりと俺にかかる逸朗の体重が急に軽くなった気がした。

次の瞬間、俺のTシャツのなかにひんやりとした逸朗の手が入ってきて、そっと腹部を撫でながら、逸朗は俺の鎖骨に唇を当てる。


「私は大輔を誰の目にも触れさせたくない。同じくらい大輔の目に私以外のものが映ることが耐えられない」


俺の脚の間に自分の腿を挟み込んで、逸朗はぐっと腰を引き寄せる。


「耐えられない、ではない。許せない」


その言葉を聞いただけで、俺の全身を燃え尽くすような熱が走った。

一気に呼吸が苦しくなる。

腰に引き寄せる逸朗の手の冷たさが増したのは、俺の身体が熱いからだろうか。

瞳が潤み、逸朗の嫉妬に歪む表情すら定かでなくなる。


この歓喜。

これほどの愉悦。


どう表せば逸朗に伝わるのだろう。

いとも簡単に俺を殺すことのできる逸朗を、この世の中でなによりも可愛いと感じていると、どう伝えればわかってもらえるのだろう。


彼を心だけでなく体でも受け入れなくては理解してもらえないのだろうか。


「逸朗さん、俺、小百合さんのこと、素敵だと思ってるし、めっちゃストライクだし、仲良くなりたいとも思ってるけど…」


聞きたくない、とごねるように荒々しく唇を重ねてくる。

それを受け入れながら、俺は逸朗の頭に指を這わせた。そしてぐっと髪を掴んで、俺の顔から引き剥がす。


「でも、俺が好きなのは逸朗さんだよ」


迷いのない瞳を真っ直ぐに逸朗に向けて。

揺らがない意思をわかってもらうために。


俺は間違いなく、この美しい生き物を愛している、と。


虚ろだった逸朗の瞳に燃え上がるような炎が灯り、動きの少ない心臓がどくんと強く打ったのがわかった。

なにか言葉にしようとうっすらと開いた唇からは吐息しか出てこない。

それでも食い入るように俺を見つめている。

俺も逸朗も、しばらくは一言も発さなかった。

緊張感をはらんだ空気を、押しのけるようにして逸朗はやっと口を開いた。


「それは、本当なの、か?」


言った瞬間、逸朗の瞳からぼろぼろと涙が零れてきた。

おそらく彼は泣いていることに気付いていない。拭うことすらせず、流れる涙をそのままに、瞬きすらせず、俺を見つめ続けている。


「うん、本当に、好きだよ」


そしていつも俺にしてくれるように、逸朗の髪を漉く。


「たぶん、逸朗さんが思ってるよりずっと、俺は逸朗さんが好きだ」


くしゃりと逸朗の顔が歪み、やっと泣いていることを知って、顔を背けた。

そんな態度までが愛しくて、俺は満足げに笑いながら掌で頬に光る涙をちょっとだけ乱暴に拭ってやった。

その仕草に逸朗も笑って、俺の髪をくしゃりと崩す。


「私も大輔だけを愛してる」


「うん、知ってる」


にっこりと笑って、俺は逸朗をからめとるようにしてキスをねだった。


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