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20 はじめまして、小百合さん

添い寝要請事件から1週間。


夜は一緒に寝ることが暗黙の了解になった。

眠る直前まで逸朗は甘えた様子で唇を飽きることなく重ね、眠れば俺を抱き枕にして翌朝まで離さなかった。

それでも約束通り、キス以上のことはしなかった。


その日もやっとのことで仕事を終えたらしい逸朗が亡霊のように俺の部屋へ入ってきた。

どっちの部屋で寝るのかまでは決めておらず、俺がいる部屋で寝るのが不文律だった。


「お疲れ様」


ベッドに入り込んできた逸朗に両手を広げて見せれば、迷うことなく飛び込んでくる。

そして心ゆくまで俺の首筋に顔を寄せて匂いを嗅ぐ。

そうしていると逸朗から漂うようにいつものスパイシーな香りが立ち昇ってきた。

十分に堪能した逸朗は優しく唇に触れてくる。

その指をいたずらに噛むと、嬉しそうに俺の耳を噛んできた。

ほとんど言葉もないまま、戯れるこの時間を楽しんでいたら、ノックもなくヘンリーががさつにドアを開けて入ってきた。


「おっと、こりゃ、すまん」


口では謝っても、にやついた表情のまま、出ていく気配もない。

この状態を見られても恥ずかしくないくらいに、ヘンリーはいつも邪魔をしてくる。

もう趣味なんじゃないかと思うくらい。

そんな俺とは違い、逸朗はあからさまに不機嫌になり、いつか殺してやる、と必ず呟く。

そしてヘンリーから隠すように俺を背中に庇うと、声だけで殺せそうなほどの殺気を放つ。


「なんだ?」


「小百合が来てる」


本当に楽しそうに笑っている。


「それで?」


「話がある、と」


「俺にはない。おまえが聞いておけばいい」


冷たく言い放つ言葉を、花開くような可憐な声が唐突に遮った。


「ウィル!お願いだから出てきてちょうだい、じゃないとここで踊っちゃうわよ?」


踊る?

踊るのが脅し文句になるの?

俺が心の中でツッコむより早く


「構わん、好きにすればいい」


と言って、ヘンリーに顎をしゃくって出ていけ、と示し、俺に向き直ってキスをしてきた。

それはもう深い深いキスを。

あまりにも濃いキスに心臓は跳ねまくりだし、息は切れるし、快感には呑まれるし、俺は大変なことになっていた。


「じゃ、入るわよ」


詠うように言って、ふわりと人が入ってきた気配を感じた。

というか、白檀の香りが広がった、というべきか。

ずっと会ってみたかった小百合だと思うと、どうしても見てみたくて、逸朗の胸を両手で押して、起き上がった。


そこにはかなり俺のストライクゾーンな女性が腰に両手をあてて立っていた。


艶やかな腰まである長いストレートヘアは碧く光るような黒色だった。

華奢な体を強調するようなぴったりしたワンピースの凹凸は見事の一言に尽きる。

気の強そうな瞳とは対照的なぷっくりとした唇がとても魅力的な女性だった。

いかにも日本人ながら、思わず二度見をしてしまうほどの美人だ。


ほわぁ…と思わず情けない息を漏らし、それを耳にした逸朗に押し倒された。


「出ていけ」


唸り声。

もう絶対獣の唸り声。

部屋全体に逸朗の殺気が満ちる。

そんな空気をもろともせずに小百合は真っ直ぐに逸朗を見据えた。


「わかったわ、出ていくからあなたも出てきなさい」


そして軽い笑い声さえ立てたのだ。


なんて魅力的で、強い女性だろう。美しく、ユーモアもあって、なにより見事なボディラインをもっている!

逸朗の背中からこっそり覗いていた俺はかなり興奮していた気がする。


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