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13 ヴァンパイアのあれこれ

俺は疲れていた。

怒涛の如くの展開の後、ほとんど朝まで逸朗とキスしたり、話をしたりしてほとんど寝てない。大きく伸びをして欠伸を漏らすと、ちょっとだけすっきりした気分になる。

ちなみにヴァンパイアの掟というのが気になって、何度も説明するように促したが、それはヴァンパイアに成ってから話すべきことで、俺には秘密なんだとか。

いまのところヴァンパイアに成りたいとは思っていないので、その掟を知ることは難しいみたいだ。

いくらイケメンになれる可能性があっても、あまりにもリスクが大きいだろう。

安易に感染したいとは思えなかった。


本当は大学へ行かなくてはならないのだが、講義内容よりもその先生の名前を見て、自主休校することにした。

どの講義も出欠確認があるが、有難いことに代理が可能なものばかりだったからだ。

晃と哲司にそれぞれメールで代理出席を頼んで、ぶつぶつ文句を言いながら大学へと向かう逸朗を送り出してから、俺は居間のソファに横になった。


ヴァンパイアは代謝が低いらしく、一晩二晩寝なくても問題がないらしい。

それを言ったら特別食べ物もあまり必要なく、アルコールを摂取しても酔うことはないらしい。代謝が低いだけでは説明できないことが多いので、そのうち解明してやろうと、ひそかに俺は考えていた。そしてできれば遺伝子解析とウイルス同定もしてみたい。

なかなか面白い研究テーマだが、公にはできないものでもある。


ソファに寝転んで、俺は部屋をぐるりと見回した。

かなり立派なマンションで、俺の寝転がっているソファの背中側の壁一面が窓になっていて、巨大な公園が見下ろせる。緑萌ゆる時期だけに、とても清々しい気持ちになる。

居間を中心に東側に主寝室とゲストルームがあり、西側にバスルームやパウダールームがある。ちなみにバスルームにはシャワールームも個別で取り付けてあり、さらにはゲストルーム内にも広々としたユニットバスが設置されている。

そのゲストルームが俺の個人の部屋らしく、さっき覗いたときにはすでに持ち込まれた俺の荷物がきちんと収められていた。

俺が朝まで過ごしたのが主寝室で、もちろんそこが逸朗の部屋だ。ちなみに主寝室から繋がった部屋がひとつあり、そこを書斎として利用しているようだった。

玄関の脇に鍵がかかったドアがあり、目下、俺の興味を惹いている。

他の部屋のドアと比べると、かなり質素な造りなので、ただのトランクルームだったりするのかもしれない。逸朗が帰ってきたら聞いてみようと、画策している。


その逸朗だが、実際の生きてきた年数は教えてもらえなかった。

現在37歳と自称している。

その年齢を聞いたとき、意外に若い設定で俺は笑ってしまった。

どうみても落ち着き方が40は超えているよね、と言ったら、かなり嫌そうな表情だったので、本人の中では気が若いのかもしれない。

ヴァンパイアにそんな感情があるとは思えないのだけれど。


日本に来て1年程度のことらしいが、どこにいたとしても年の半分はヨーロッパへと出向しているらしい。もちろん研究成果を上げる目的もあるが、7割はヴァンパイア一族に関係する仕事のためだったりするようだ。

大学の准教授という地位に相応しいだけの実績を認められたきっかけは2年ほど前に話題なったシェイクスピアの未公開作品を発見したこと。

ロンドンの下町の古い家から発掘した、ということだが、


「本人から直接もらったものだ。それを隠しておいて、今回引っ張り出してきた」


とウインク交じりに教えてもらった。

シェイクスピアの影のスポンサーをしていたから、そのくらいは何でもないらしい。

長く生きてるとお金も人脈も貯まるもんだな、と変な感想を抱いてしまった。


もしかして理系の俺でなく、歴史系の人なら垂涎もんの生きた史書なんじゃないかと、意味もなく申し訳なくなってしまった。


そんな俺だが、目の前にヴァンパイアやら人狼やらが現れても意外とすんなりと受け入れていることにちょっとだけ自分のことながら驚いたりしていた。

ヘンリーが捕らえた人狼はすでにここにおらず、別のところに隔離してあるとのこと。

あまり酷い目にあってないといいけれど、と平和ボケしている俺は願っていた。


あと5か月もすると、ヴァンパイアと人狼、そして魔術師のトップを集めた会談が行われるそうだ。これはトップシークレットで、定期的に開催されてはいるが、場所も日時もすべてが謎にしてあるんだとか。

だから本来は俺が知るべきじゃなく、逸朗も話してから、しまったな、と額を叩いていた。

人狼は人種の一種、ヴァンパイアはウイルス感染者。じゃあ……


「魔術師ってのは?」


「人だよ。特別なものではない」


「魔力があって、魔法を使う、って感じ?」


そろそろ眠くなってきていた俺は欠伸交じりで聞いた記憶がある。ゲームに出てくる魔法使いみたいなものかな、って思いながら。


「いや、魔力はない、本当に普通の人間だ。ただ彼らはものに宿る力を使うための知識がある。魔法陣だ」


曰く、すべての生きとし生けるもの、そして物理的な意味でのものは内に潜在的な力を蓄えている。それを魔術師たちは魔法陣を使って魔法をおこす術に優れていた。


「いうなれば、ものに宿る力を見ることができるものたちということだ」


そういう意味では特殊な人間なのかもな、と言ってから逸朗は俺の髪をゆっくりと漉き始めた。眠そうだったから、すこしでも寝かせてやりたいと子守唄代わりにしてくれたのがわかって、俺はちょっぴり嬉しくなった。


すでに寝室の厚いカーテンの隙間から朝陽が線を描くように入り込んでくる時間になっていた。


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