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65話「衝突」

「――久しいな、ガロン」

「――いえ、魔王様もお変わりがないようで」


 ガロンの城までやってきた魔王イザベラを応接間へ案内すると、対面で座りながら早速会話が始まる。

 久々の再会に挨拶を交わすも、その様子から察するに既にイザベラはガロンの思惑を見抜いているように思えた。


 この魔王は、力だけでなく頭もいいのだ。

 それに、四天王やカトレアという実力者までも魔王側へとついているのだ。

 やはり、下手に刺激はしないよう細心の注意を払いながら、ガロンは話の口を開く――。



「――それで、どうして魔王様はここへ?」


 ガロンの質問に、イザベラはフッと笑った。

 それはまるで、いらぬ世辞など不要だというように――。



「分かっておるのだろう。広場に集うあの兵はなんだ?」

「兵、ですか。――あれは、私と志を同じくする者達です」

「志、か――。で? その志とはなんだ? 答えよ」


 まるで答えを分かっているかのように、単刀直入に聞いてくるイザベラ。

 そんなイザベラを前に、ガロンも覚悟を決める――。



「――はい。彼らは同胞達の仇を取るため、人間どもを駆逐するために集まった者達です」

「ほう――」


 イザベラの目の色が変わる。

 それと同時に、凄まじい圧がガロンに降り注ぐように圧し掛かる――。


 ――これが、魔王か。


 その恐ろしさを、改めて痛感するガロン。

 イザベラから感じられるその明確な怒りの感情を前に、ガロンは真っすぐ見返すことが正直やっとであった。



「貴様、それはすなわち、我の意志に背くという事か?」

「いえ、そういうつもりではない――! 我々は、大切な仲間、そして家族を失っているのです! それなのに、どうして人間どもと今更共存など出来ようかっ!」

「お主の言う事はもっともだ。我々は、これまでの戦いの中で深い深い傷を負った。だが、それは人間側とて同じ。このまま互いに憎み続ければ、お互いどちらかが滅ぶまでこの負の連鎖は絶たれぬのではないのか?」


 イザベラの言葉は、確かに間違っていないのだろう。

 その言葉の通り、互いにこのまま滅ぼし合うことは、すなわちどちらかが根絶やしにされるまで続くであろう負の連鎖。


 ――しかしそれでも、この感情は理屈などでは片付けられないのだ。

 大切な仲間、そして家族が殺されてしまったことによるこの憎しみという感情は、もう止める事など出来ないのだから――!



「――それでも、です」

「そうか――、貴様の考えは分かった」


 その言葉と同時に、イザベラから凄まじい魔力が解放される。

 その凄まじい圧力を前に、やはり最悪の事態になってしまった事を悟ったガロンは、慌てて魔力を開放すると同時に臨戦態勢を取る。



「我々の意志を、どうか止めないで頂きたいっ!!」

「それを我が、許すわけがなかろう――」


 ぶつかり合う互いの魔力は激しい衝撃を生み、部屋の家具、そして窓ガラスは砕け、辺りに飛散する。



「ガロン様っ!!」


 その異常事態に、慌てて駆け寄ってきた配下達が援護に加わる。

 しかし、恐らく初めて目の当たりにする本気の魔王の圧を前に、配下達に動揺が広がる――。


 ――無理もないな、こんな力、私以外に相手は務まらぬだろうなっ!


 そう思い、覚悟を決めたガロンは更に魔力を開放する。

 目の前に立つのは、正真正銘の魔王だ。


 最初から全力で立ち向かわねば、敵うはずもない圧倒的強者。

 一瞬でも気を抜けば、それすなわち死を意味する――!


 そして、いざお互いの力と力がぶつかり合おうとする、その時だった――。



「――イザベラ、うるさい」


 イザベラが唯一連れていた従者の女が、立ち上がる。

 そして、鬱陶しそうに呟きながらイザベラの頭を鷲掴みすると、そのまま力任せに椅子へと座らせたのであった――。


 そこで、ガロンはようやく気が付く――。

 周囲はぶつかり合う魔力で飛散してしまっているにも関わらず、イザベラ――いや、その従者の周りだけは元のままであることに――。



「な、何をするのだミレイラ!?」

「ちゃんと話を聞く」

「こ、これが魔族のやり方なのだ! 止めるでないっ!」

「――やっぱりうるさい」

「はぐぅ!!」


 ねじ伏せるように、更に力強く頭を押し付けられたイザベラは、魔王らしからぬ声をあげる。


 ――な、なんだ!? 何者だ!?


 そんな異常な光景に、ガロンは戦慄する――。

 ただの従者かと思えば、おそらくこの女は魔王以上の存在――。


 しかし、魔王とはこの世の最強の存在なのだ。

 であれば、そんな魔王を上回る存在、それはもう――。



「――何者、なのだ」


 ガロンは、恐る恐る女へ声をかける。

 ガロンの予想が正しければ、この女の正体、それは――、



「――ミレイラだ。我などでは到底かなわぬ、神だ」


 魔力を沈め、不満そうな表情を浮かべながらも代わりにイザベラが答えてくれた。

 そしてやはり、この女の正体は人でも魔族でもなく、ガロンの予想通り神なる存在なのであった――。




久々の更新となってしまい、申し訳ありませんでした。。


本日より、私の別作品である「クラスメイトの元アイドルが、とにかく挙動不審なんです。」というラブコメ作品が書店で販売開始という事もありまして、申し訳ないのですがそちらに注力させて頂いておりました。


こちらも連載は勿論続けさせて頂きますので、お待たせしてしまい大変申し訳ありませんでしたが、引き続き楽しんで頂ければ幸いです!


また、今日発売のクラきょども、良かったらよろしくお願いします!!

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― 新着の感想 ―
[一言] 戦いになると思いきや、ミレイラが介入しましたか。 魔王すら敵わない相手。ガロンはどうするのでしょう。
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