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31話「死闘」

 一方その頃、グレイズとバアルの戦いも苛烈を増していた。


 再び無数のクローンを生み出すグレイズは、今度はそれらクローン同士で互いに身体強化魔法を重ね掛けし合う。


 つまりこれにより、一体一体がオリジナル以上の身体能力を手に入れた事になる。


 これこそが、グレイズの奥の手だった。

 数が増えれば増える程、その効果は倍々に膨れ上がっていく。


 そして増幅され続ける一体一体の実力は、難度Sランクの魔物を一人で倒せるほどの実力まで膨れ上がる。

 しかも、その数は先程より多く300を優に超えており、まさしくチートと呼ばれるに相応しいユニークスキルだった。



「――驚いたな」

「今度は、さっきみたいに簡単にやられたりはしませんよ」


 これには、流石のバアルも驚いた。

 一体一体がさっきのクローンの比ではないと、バアルも勘が働く。



「ならば、我も出し惜しみしている場合ではないな」

「それはまた、恐ろしい」


 力を溜めるバアル。

 身体から溢れ出る魔力は気流を生み出し、それがただ事ではない事が伝わってくる。



「――行くぞ」


 そして、バアルがそう口にした瞬間、その場からバアルはクローンの大群目がけて物凄い速度で飛び掛かる。



「「プロテクション」」


 しかし、そんな状況でもグレイズは至って冷静だった。

 これまで多くの修羅場という修羅場を潜り抜けてきたからこそ、いかなる状況でも冷静に対処できるのだ。


 グレイズのクローン達により何重にも重ね掛けされたプロテクションにより、物凄い勢いで突撃するバアルの身体は止められる。

 そしてその隙を見逃さないグレイズのクローン達は、そんなバアル目がけて攻撃魔法を展開する。



「「サンダーボルト!」」


 四方八方から、バアル目がけて放たれる雷魔法。

 それらは全てバアルに直撃すると、大爆発を巻き起こす。



「――ぐっ、やるな人間」


 これには流石のバアルでも、無傷ではいられなかった。

 爆発により、その固い皮膚にも多くの傷を負っていた。



「――今のを受けても、その程度ですか」


 しかしそれは、グレイズからしても予想外だった。

 今の雷魔法の連撃を受けた割には負ったダメージは大したことなく、今も尚自分の前に立ちはだかっている状況に緊張が増す。


 何故なら、このチートとも言えるクローンの強化状態には、当然リミットが存在するからだ。


 ――もってあと、5分といったところでしょうか


 大体の残り時間を把握しつつ、グレイズは次の攻撃で確実に仕留めるべく集中する。


 しかし、バアルはそんな事は知らない。

 ただ無数の強化された奇術師を前に、どうしたものかとこちらも頭を悩ませていた。



「行きますよ!」


 今度は、時間の惜しいグレイズから仕掛ける。

 先程と同じ雷魔法を、絶え間なくバアル目がけて打ち込み続ける。


 これには流石のバアルでも対処に終われ、回避に努めるしかなかった。



「えぇい!こざかしい!!」


 しかし、その隙を縫って急接近したバアルは、全力でその腕を振り下ろすとともにクローンの一体を一撃で屠る。

 こうして絶え間ない攻撃を受けつつも、バアルは一人、また一人とクローンを一体ずつ消し去っていく。

 それはまさしく、バアルがクローンを潰しきるのが先か、グレイズの魔法がバアルを倒すのが先かのチキンレースだった。


 しかし、グレイズには時間が無い。

 何とか制限時間までに倒しきらなければ考えたグレイズは、一か八かの手段に出る。


 それは、魔法による遠距離攻撃ではなく、接近戦による物理攻撃だった。

 まだ残り100体を超えるクローンで、同時に襲い掛かればより絶え間なくダイレクトに攻撃を加えられる。

 そう考えたグレイズは、クローン全てにサンダーナックルという雷の拳をクローンに付与すると、一斉にバアル目がけて襲い掛かった。


 そんな突然の作戦変更に、バアルも対処が遅れてしまう。

 一撃目がバアルの顔面にヒットすると、その後はまるでサンドバッグのように殴られ続けた。


 そしてボロボロになったバアルは、最後の一撃で大きく壁に弾き飛ばされる。



「ハァ……ハァ……でたらめだな……」

「貴方こそ、まだ立ち上がれますか……」

「あぁ……だが俺も、本気を出さないと勝てないようだ……」


 その言葉に、グレイズは凍り付く。

 それは、今ので倒しきれなかった焦り、そしてまだ本気を出していないと言う恐怖――。


 バアルは雄叫びを上げると共に、その全身は漆黒の霧に包まれる――。


 そしてその霧の中から姿を現したのは、巨大な悪魔だった――。


 元々背丈の大きかったバアルの三倍はある大きさ。

 その全身は漆黒で、禍々しい雰囲気を放っていた。



「――こ、これは」


 上位悪魔――いや、それ以上だ。

 そんな、通常では絶対に出会う事の無い化け物と対峙するグレイズ。


 ――しかし、残り2分程度。ここで仕留めきれなければ、わたしの負けですね


 そう覚悟を決めたグレイズは、巨大な悪魔へと姿を変えたバアル目がけて一斉に飛び掛かる。



「グオオオオオオオ!」


 しかし悪魔は、雄叫びと共にその腕を無造作に振るうと、接近するクローン達を一斉に消し炭にしてしまう。


 そしてあっという間にクローン全てを消し去ってしまった巨大な悪魔は、残ったグレイズ本体と向き合う。



「オワリダ!!」


 そして最後はあっけないもので、大きく振るわれたその巨大な腕を見上げたグレイズは、己の最後を悟ったのであった――。




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― 新着の感想 ―
[一言] No.2も相手にならない。とはいえ、奥の手まで出させたのだから健闘したほうなのか… これはNo.1も推して知るべし。しかも、結局のところ魔王様抜き、だもんなあ。 事後処理をどうやって行くか…
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