13話「魔王襲来?」
次の日。
僕はミレイラと共に、最早お馴染みとなったいつものお店で朝食を取っていた。
昨日の宴の片づけがまだ残っているようで、朝から従業員さん達は忙しそうに片づけに追われていた。
「お、お主たちが、噂のゆ、勇者パーティーか?」
すると、食事をしている僕達に向かって、突然見知らぬ3人組が声をかけてきた。
声をかけてきたのは背の低い銀髪の少女で、後ろには長身の男と胸の大きい女性が立っていた。
3人とも同じ黒いフードを被っており、恐らくは3人ともマジックキャスターのようだった。
中々同じパーティーで全員同じ職業というのも珍しいなと思ったけれど、人様の事をとやかく言うなんて烏滸がましい真似はできないなと僕は普通に返事をした。
「いや、以前はそうだったんですが、今はもう勇者パーティーではないんです」
デイルは素直にそう答えた。
実は昨日の宴の中でも、色々と質問される中でもう勇者パーティーではない事はみんなに伝えているのだ。
どんなリアクションをされるか少しビクビクしていたけれど、意外にも街のみんなは「そんな事関係ねぇよ!」と何も気にせずすぐに受け入れてくれた。
中でも、「俺達は勇者パーティーだからお前たちと飲んでるんじゃねぇ!お前たちだから飲んでるんだ!」と酔っぱらいながら出た一言ではあったけど、僕はその一言が本当に嬉しかった。
だから、僕はもう隠す事はやめた。
もう勇者パーティーではなくなったけれど、やるべき事は何も変わらないんだと胸を張って言うようにしたのだ。
「ゆ、勇者パーティーでない、だと!?」
だが、僕の言葉に対して、少女はとても驚いた様子だった。
やっぱりまだ、勇者パーティーだからという目で僕達の事を見ている人がいるっていう事だろうか。
それでも僕は、もう自分達は自分達の足で歩んでいく事を決心しているから、このぐらいの事でその気持ちは揺らいだりはしない。
まだそういう目で見られているのならば、そう見られないようにするだけの話だ。
そう思った僕は、少女をしっかりと見ながら言葉を返す。
「はい、勇者パーティーではないです。だからもう、僕達には魔王を討つ役目もありません」
僕がそう答えると、何故か少女はとても安心したような反応を見せた。
なんか思った反応と違う気がするけど、気にせず僕は言葉を続ける。
「でも、勇者パーティーだから魔王を討つわけではありません。立ち位置なんて関係なくて、僕達は変わらずみんなを守りますし、それが例え魔王相手でも同じ事です」
そうだよねミレイラと、これ自分が偉そうに言う事じゃないよなと思い慌てて確認すると、ミレイラは「そのとおり」と一言呟きながら頷いてくれた。
すると、僕達の覚悟を聞いた3人組は、何故か困ったように慌てていた。
なんか思ったリアクションと毎回ずれているような気がするなと思いながら3人組を見ていると、
「そ、そうか!であれば、例えば魔族がこれ以上何もしてこなかったらどうするんじゃ!?」
少女が慌てた様子で、そう質問してきた。
魔族がこれ以上何もしてこなかったらか……考えてもみなかった。
まず、そんな事は起こりえないからだ。
だって、常にどこかで人々は魔族に襲われ、そして多くの命が失われているのだから。
でも仮にそんな事が本当に起きたとしたらどうだろう。
それってつまりは、世界平和なんじゃ……そう考えた僕は、ミレイラに相談してみる。
「ミレイラ、彼女はこう言っているけどどう思う?」
すると、僕の質問にミレイラはいつも通りの無表情ながらも、少女の方を真っすぐ見つめながら返事をする。
「魔王がデイルに平伏すなら、わたしは何もしないと誓う」
ミレイラは、そんな僕の予想の斜め上の答えを少女に返した。
すると、後ろの二人がミレイラの言葉に憤るような仕草を見せたのだが、少女が「やめろ!」と一言強く制止すると、二人はその言葉に従うようにピタリと静まった。
そして少女は、引きつったような笑みを浮かべながら口を開いた。
「ほ、ほぉ?今の言葉、二言は無いな?」
「無い」
睨みつけるように確認する少女の言葉に、ミレイラは即答で返事をした。
元々嘘を付く事の無いミレイラがそう断言するのだから、そういう事なのだろう。
しかし、そもそも魔王が僕に平伏すなんて事、この星がひっくり返ってもあり得ない事だ。
何を二人はこんなバカげた話を真面目にしているんだろうと呆れていると、ミレイラを睨みつけていた少女がキッとこちらを向いてきた。
「よかろう!その話乗ったぁ!!」
そして少女は、顔を真っ赤に染めながらも僕に向かって高らかにそう宣言してきたのであった。
魔王様、デイルの傘下へ!
これで魔王討伐の旅にも心強い助っ人がって、あれぇ?
物語の急ハンドルに、作者もビックリです!(ハイファンじゃなくて、ラブコメなので。。)
良かったらこちらも楽しんで頂ければ幸いです!




