反撃、反撃、そしてまた 10
続く7番 里奈、前打席と同じように球を見極め、際どいコースをカットし、またもフルカウント。
「このっ」
珍しく頬を少し歪め、悪態をつきながら投球した本澄の変化球は、しかし、平然と里奈に見送られる。
「ボール」
球審 慎吾の宣告より早く、打席を外した里奈が駆け足で一塁へと向かう。その後ろ姿を憎らしく一睨みした真琴はマスクを外しながら声を上げる。
「ええで、気にせんでええ、球はまだまだきとるよ~」
本澄へと白球を戻す最中、かけた言葉にマウンドの本人は袖で汗を拭いながら頷く。いつも通り、クールな表情に戻ってはいたが、逆にそれが真琴の不安材料となっていた。
(そろそろキツくなってくる頃やなぁ)
先ほどベンチで確認したスコアブックを思い出す。失点はしているものの、一気に崩れることなく大山女子の攻撃を凌いでいる本澄。その粘りの投球は称賛されるものであると同時に、身体的にも精神的にも疲労をためていく。更にはいつにも比べ球数も放っている。四球となった変化球も当初構えたミットよりも低く外れ、明らかにスタミナ面でも限界が見えてきた。
(ベンチは……指示しなくても作ってくれとるな)
本澄へと送られる声援、その人混みの中に含まれない選手を思い浮かべながら、真琴は次に備える。
「お、お願いしますっ」
打席へと入ってきた千尋は見た目からもガッチガチに緊張している。不安気に視線を動かし、バットを持った両手もどこか所在なさそうに閉じたり開いたりを繰り返す。
「……」
あまりにも分かりやすい反応に、一瞬伝える必要もないかと思ったサインをいちお内野陣へと送り、真琴は腰を落すと、とりあえず初球は外すよう、本澄へと配球を伝える。
コクリ、とマウンド上で小さく頷いた本澄がセットポジションへと移行する。一拍、静かな間が内野陣へと伝わった次の瞬間、
「スチールっ!!」
本澄の右足の動き出しとショート奏の叫びが一致する。瞬間、謀られた事に真琴の思考が持っていかれるが、直ぐに投げられた速球へと切り替える。
(大丈夫、しっかり外れとるっ!)
左打者の外角高め、つまり、三塁側へと投じられたその一球、これをちゃんと処理出来れば、サードで刺すのは容易。幸い、二塁走者の政美は独断俊足な選手で無い事も理解しており、これは余裕でいけるはず。そう、真琴は思っていた。
「なっ!?」
だから、いつも通りキャッチングからの高速スローへと移行する態勢を作った。そして、それは目の前に入った鈍色の物体に遮られる。
コツン
あまりにもか細く、弱い響きと共に、小さく土煙が舞う。どうやら、白線ギリギリから目一杯手を伸ばし、バットの先に白球を当てた千尋はその場に倒れたようで、
「ボールは!?」
「先輩っ!目の前っ!!」
本澄の叫びと共に示された指、それに導かれるように視線を落した真琴の目の前には土煙、そして、開かれた先には
「このくそっ」
サードライン上でピッタリと停止していたその一球を急いで捕球した真琴は一塁へと投擲する。既にサードとセカンドには走者が到着していた中で、未だその身を地へと付けたままの千尋をアウトにするために、真琴はファーストへと投げるしかなかった。
こんばんわ、作者です。
やっと忙しい時期が過ぎ、少しずつ平穏な時間が自分の周りに漂い始めてます、が、
もう少しといったところ……。
割と暇な時間があるものの、なぜか週末も働いていたりします(笑)
まぁ、それも後少し……本当に後少しだと思うので、ここは踏ん張って頑張りたい次第です、ハイ。
……がんばっぺっ。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




