反撃、反撃、そしてまた 04
球審の声が響く。指差しと共に告げられた四球に久子は不満げな顔を隠しもせず歩き出す。それを輪の中で見ていた彼女は一息付くとその場を後にした。道中、久子に投げ捨てられた金属バットを拾い、次に備える先輩へと手渡しながら打席へと向かう。
「……」
バクバクと鳴る心臓。今まで、それこそ、母国でサッカーに興じていた時でも感じた事無い重圧に口元が引き締まる。日本で一番の友とも呼べる稼頭美から繋がったチャンスは今ツーアウトながら満塁となって自分の目の前に表れている。
「……ヨロシクオネガイシマス」
小さく会釈して定位置へと入ったマリアナが、小さく、長く息を吹き出しながらバットを構える。
(ショキュウ……)
頭の中で相手投手の入りを模索する。コーチから教えられたデータとここまで自分に投げられた配球から捉えるべき一球を張る、のだが、
「ストライク」
「エッ……」
球審のコールに戸惑いの声を上げる。しかし、捕手はさも当然のようにミットへと注がれた白球を取り出すとマウンドへと返球し、腰を落ち着かせる。
(……オチツイテ……)
頭に浮かべた言葉と共に今一度吐息を漏らし、集中を高める。次こそ、そう意気込みマウンドを睨むと、白球の出所をしっかり捉える事が出来た。
「ストライク」
「ッ」
目で追う事は出来ても、バットは空を切る。自分ではドンピシャのタイミングで振ったのだが、嘲笑うかの如く、その一球はマリアナから遠ざかり、ワンバウンド。捕手もそれを見越してなのだろう、しっかりと身体の正面で受け止め、小さく弾く程度に納めると、ボールの交換を要求、そして、素早く投手へと返す。
この2球、わずか1分足らず。先程までのピンチではしっかりと間を持ち、1球1球を大切に投げ分けていたバッテリーは、マリアナに対し、速攻で0-2というカウントを突き付ける。
(……アトガ、ナイ……)
2点差まで縮まったこの試合、追い風は確実に大山女子へと吹いている。しかし、同点、ないしは逆転できるこの場面をふいにしたら、
(イケナイッ!)
いつもとは明らかに違う自分の思考に小さくかぶりを振り、セットポジションに移行した相手へと視線を向ける。体重移動を開始した右足に合わせ、マリアナも腕を引く、視界の端から突如現れる左腕。撓りを活かし、リリースされた白球はマリアナの懐へと潜り込む。
「Mierda!」
全力だった。窮屈な姿勢になりながらも、喰らいつこうと全力で振った。しかし、やはり届かなかった。
「ストライク、アウト」
球審の棒読みと共に浪速ジュピターズが歓声を上げる。失点はしたが、我慢強く抑えた本澄を讃えるように内野陣がその背中にハイタッチを交わしながらグラウンドを後にする。それは、マリアナの口を噛みしめさせるには十分だった。
「アンタ」
空振りの反動で腰を落していたマリアナへ、それは唐突にやってきた。マスクを外し、三振に取った白球を球審へと投げ捨てると、見下ろしながら、見下しながら。
「今日の試合、アンタが一番コワないわ」
能面のような表情で淡々と吐き出された言葉。瞬間、マリアナの心で音が爆ぜる。今まで経験した事ない、大きなうねりがあるものを飲みこみ、霧散していく。
(ワタシ……ハ……)
ガクガクと腕が震えだす。血の気が引いていくのも自分でも分かる。
ナニカガ、キレタ。
ショックの大きさに、出来ればこのまま、ボックス内で留まりたかった。だが、そうもいかない。既に大山女子からは内野陣が飛び出し、守りの準備を始めている。
「……ワタシモ、イカナキャ……」
身を起こしたものの、手に力が入らないのか、ズルズルとバットを引きづりベンチへと引き返すマリアナ。その背には未だ視線が突き刺さっている事も知らずに、戻る。つまらなそうな瞳で見送る真琴の存在を感知せずに戻るのだった。
こんばんわ、作者です。
いよいよです……。
今年もいよいよ、この季節がきました。
そう、プロ野球オープン戦。
各選手がキャンプで鍛えた、もしくは課題を克服したその成果を披露していく場。
若手にはチャンスを、ベテランは調整具合を確認するこのオープン戦、
勝利するのも大事ですけど、まずは各選手の調子がどうなのか、
また今年は首脳陣がどう考えて選手を起用するのか、楽しみな場であります。
もちろん、新人選手もドンドン使われるでしょうし、贔屓球団以外も要チェックです。
あぁ~、もうたまらん(笑)
そんな感じで今年も個人的野球シーズンプレイボールになりそうです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




