反撃、反撃、そしてまた 02
(……イヤやなぁ……)
クリーンヒットとは到底言えない当たりだった。しかし、自分の長所をしっかりと理解し、検討し、次へと繋げた彼女の一打は確実に真琴達に精神的なダメージを与えると共に、大山女子の反撃ムードを一気に高めた。
「……お願いします」
ベンチから飛び交う声援を受け、1打席目と変わらないどこか間の抜けた眼差しで打席へと入ったちゃんこへと視線を向けた真琴は腰を落す。本当であれば、ランナー1、3塁のこのピンチ、マウンドへと向かい間を作りたかった、が、
(ここは我慢のしどころ……)
一度目を閉じ、配球を検討した真琴が初球を決定づけるため、そこにいるはずの彼女へと瞳を開く。果たして、いつも通り涼しい顔でロジンへと手を添える本澄がそこにいた。慣れた仕草で指を一吹きし、グラブに隠れた白球へ手を添えると、見知った前かがみの視線がぶつかった。
(だから、賭けるで本澄)
相手が魅せた武器は素晴らしいものだった。しかし、こちらも、本澄も負けてはいない。彼女の長所は横幅を大きく使い、打ち損じを狙うピッチング、そう思われがちだが、本当は別のところにある。その投球スタイルは必然的にバットにボールが当たる。白球が飛べば何かが起こる、それが野球。打ち取ったはずの打球でもラッキーな安打となる事も少なくない。だから、本澄には普段から口酸っぱく言う事で鍛えた力がある。それこそが今ここで発揮されるのを期待し、真琴はサインを送った。
(何本打たれてもへこたれない心意気、ここで魅せたれやっ!)
頷いた本澄がセットに入る。背面と正面でプレッシャーを与えるランナーを一瞥し、一息。次の瞬間、彼女の右足がコンパクトにスライドし、マウンドから糸引く球が降ってくる。
(ええとこっ!)
リリースした瞬間、真琴は見惚れた。要求通り、低めへと伸びながらゾーンから逃げていく事が予想される白球。しっかりとスピンが効いていれば、ボールと判定されるだろうが、それで構わない。とにかく、一度外を意識させたいがために指名したその1球は、
「っ!?」
快音と共に、真琴は。捕球するはずだったミットには何の反動もなく、見上げた視界の中では低く、鋭く走るライナーがライトの前へと転がり、沸き飛ぶ歓声と共に駆け抜ける足音を唇を噛み締めながらただただ見送るのだった。
「……」
上から見下ろす形で大山女子の攻撃を見つめる羽鳥 雄一はその流れを頭の中で反芻していた。
(2アウトから内野安打で繋げた一番打者、そして、間髪入れずに初球を捉えた2番打者、か)
攻撃の仕方としては文句のない、ある意味出来すぎな得点劇に自分の考えを加えていく。
(あの1番打者……多分ファウルで何か掴んだかな、そして、2番打者は捕手ならではの読み勝ち、ってところか)
自然と顎へ手をまわしながら低く唸る。1番打者で切りたかった浪速ジュピターズ、しかし、その計画が無残にも崩れ去り、恐らく警戒していた2番打者。だからこその初球、外へとボール球になる変化球で様子を見ようとした。相手打者、味方投手、その両方の状態を。
(それ自体、真琴は間違ってはいなかった、むしろセオリー通り)
だからこそ捉えられたのだろう、通常では届かない1球に対し、大きく外角へ踏み込んだ左足の運びは羽鳥を驚愕させるに十分であり、
(……あれがベンチの指示だったとしたら……)
チラリと向けた視線の先で腕を組みながら状況を見つめる男性が一人。ここ数か月、自分の店にもちょくちょく見る顔付きとは明らかに違う勝負師がそこにはいた。真っ直ぐグラウンド内だけをみつめ、思考する姿は高校球児とは一味違う雰囲気を醸し出し、
「おっ」
聞き慣れた快音が耳に届いた羽鳥は視線を戻す。様々な憶測を立てている間も試合は進んでいる。どうやら、打点が生まれたようで、一塁上で優雅に手を翳す3番打者と腰に手を当てながら打球を見送る捕手の姿が瞳に宿る。
「真琴……」
小さく呟きながら、心の中だけでその後を続ける。羽鳥自身、正直こんなにまでのめり込むとは思わなかった野球観戦の中で、久々に芽生えた熱い何かと共に、姪っ子へと届けたい想いを続けた。
こんばんわ、作者です。
2月となり、今年も既に1か月経った中で、
個人的には楽しみな月がやってきました。
そう、プロ野球キャンプインであります。
我が贔屓チームの日々の動向を聞くたび、一喜一憂しております。
そして、今週末には練習試合とはいえ、今年初試合。
楽しみで仕方ありませんねっ!
そんな感じで、今年も1年きっとチームの勝敗に振り回される日々を楽しみたいと思いますっ!
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




