反撃、反撃、そしてまた 01
稼頭美がファーストを駆け抜けた瞬間、握り拳を作った昌也。
「首の皮一枚繋がったわね」
対して、安堵の吐息を漏らしたのは真澄。いつもなら手に持ったメガホンをガンガン振り回し、打線が繋がった喜びを表現しそうな監督が、昌也以上に冷静に落ち着いてグラウンド内を分析している。
「にしてもよく打ったわね……あの子」
「確かに。当てるのだけは上手いとはいえ、完全に窮屈なバッティングになっていたはずですからね」
応えながら稼頭美が敢行した一打を思い出す。1-2からの4球目、バッテリーも見せ球を使う余裕があったからこそだろう、内角へ、恐らくボール球となる一球をチョイスした。一つ前には投手の投げ損じで高めへと入った事もあり、本来であれば投げさせるには少々信頼が欠けるはずの要求は、しかし、しっかりと低めへと軌道が伸びていくのを昌也も確認出来た。
(しかし、稼頭美の狙いはそこだった)
バントの構えで内野を揺さぶり、そこからのヒッティングへの切り替え。ベンチから見ていてもその一連の流れには全く無駄が無く、綺麗に内角の球を捉えた姿は予想通りだったに違いない。ただ、非力な稼頭美ではやはり無理な体勢での一振りでは弾道の低いゴロを飛ばすのに精一杯。
「でも、上手い具合にサードを吊り上げられた事で内野安打になった」
「えぇ、いい位置に転がしましたしね」
サードの横を抜いた打球は更に回転がかかっていたのだろう、グラウンドを跳ねる度、少しずつ、外へと逃げていた。結果、ショートも内野の深い位置で捕球する形となり、容易に出塁する事が出来た。
「……ただ、2アウトでしかもまだ得点を取っていない」
そう、この繋がりも結果が伴われければ意味はない。ここで1点でも得点を取れるか、それとも0で終わるのか。大きな意味を持つ事も彼女は理解しているだろう。
(だから、頼むぞちゃんこ)
素振りを終え、ネクストサークルからゆっくり足を出したちゃんこへ期待の視線を送ると、それは唐突に始まった。いつにも増して、けたたましい大きな音を上げ、選手を鼓舞するようにリズムよく刻みながら、横に控える監督がいつもの一面をさらけ出していた。
「ちゃんこ〜っ!ここだぞっ!ここで打て〜っ!!」
こんばんわ、作者です。
気が付けば2月。
今年早くも1ヵ月が終わりました。
いやはや、なんだか例年以上に早く一月終わった印象です。
……思い返せば意外と慌ただしかったのはあるんで、そのせい、だろう、と。
今月はどうか少しは安息ある一月を過ごしたいところです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




