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10+1(イレブン)ナイン+1  作者: あまやすずのり
終わりと始まり
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終わりと始まり 24

 打った瞬間、走り出す。

 待っていた球とは違かった。だけど、珍しく高めに入ってくると認識した体は自然と腰を回転させていた。


 キンッ!


 小気味よい金属音と反動が確信へと変わり、塁線へと足を飛ばし、一直線に走り出す。しかし、長く続く事はなかった。


「ファウル」


 視界の端に映った両手と耳へ届いた声に思わず口元を噛み締め、踵を返す。果たして、そこには自分のバットを掲げる相手捕手がいた。


 ペコリ


 ヘルメットのつばに手を添え、小さくお辞儀をしながら受け取る。

 そして、稼頭美は感づいた。


(……そっか)


 少し上がった呼吸を整え、再度気持ちを切り替えるようにバットを揺らすと、思考が一気に回った。なぜかは分からない。だけど、鮮明に一つの答えが脳を支配し、それに備えるように先程よりも右足を気持ち開く。誰にも気付かれないように、本当に極小さく。


(みんな、同じだ)


 マウンドの投手が頷く。先程までだと、ここで一度力が入った場面。だけど、今は心地よい脱力感でバットを持てている。そのおかげかグラウンド上の内野陣がよく見える。鬼気迫る、絶対に抑えると表情からも伺える相手の視線、そして、セカンドの里奈へと注意を払いつつ、気持ちは既にこちらを向いているピッチャー。


(……いける)


 状況は出来た。それは本当に偶然であり、思いつきであり、だけど、今一番確実性が高い一打に向け、稼頭美はタイミングを見計らう。

 しきりに首を動かす投手が、その瞬間を迎える。胸に抱いたグローブが微かに上がり、こちらへと固定させた胴体が始動始める直前、先に稼頭美は動き出す。引いたはずのバットを眼前に、寝かすように、体の前へと押し出す動きを、稼頭美は即座に実行したのだった。




(ここでっ!?)


 準備はしていた。それでも、奏は驚いた。カウント1-2と追い込まれた形で、相手バッターの稼頭美がとった行動はバント。


「クッ!?」


 即座に視界の端で動き出したサード飯岡。足の速いバッター、だからこそ、セーフティを狙ってくる可能性を警戒はしていた。1打席目は失敗に終わっているし、アウトカウントも2つ。しかし、点差を少しでも詰めるために繋ぐ事や試合の流れ、何より、打者自身が非力で長打が狙えないとなれば、頭から捨て去る事は出来ない。その事を先程のマウンド上で確認済みであり、動きに対するフォローのため、奏もその守備位置を変化させようとした正にその時だった。


(なっ!?)


 寝かせたはずのバットが戻っていく。まるで何事もなかったかのように、前に出した肩を後ろへと引かれ、そして、また戻る。


(嘘でしょっ!?)


 言葉にならない悲鳴を上げながら、金属音に体が反応し、懸命に手を伸ばす。


(とどけぇっ!!)


 力ない打球だった。だけど、それが脅威となる。ほんのわずかに見せたバントの構えにつられ、上体が前につんのめった飯岡、そのせいで普段であれば楽勝でサードゴロに打ち取れたはずの一球はスルりと脇を抜けていく。そして、今度は奏の守備範囲内へ。しかし、ボールはなぜか、外へ外へと、まるで逃げるように遠ざかろうとする。


「んなくそっ!!」


 思わず叫び声を上げる奏。それも当然だった。ここで抜かれれば、あとはレフトしかいない。ポテンヒットも警戒して外野も前進してはいたが、如何せん球が死にすぎている。このまま捕球できなければ、レフトが追い付くまでに時間がかかる。それは、セカンド走者がホームへと還る余裕を与えてしまう。現に打球の行方を見つめるサードコーチャーがその手を振り上げようと待ち構えており、


「いかせないっ!」


 転がるボールへと覆いかぶさるように身を乗り出す。上がった土煙はグラウンド内に一時の静寂をもたらし、次の瞬間、人影が浮かぶ。汚れたユニフォームもなんのその、鋭い視線を伴いながら立ち上がった奏がファーストへと身を翻す、が、時すでに遅かった。


「……やられた」


 振り上げた手を脱力しながら奏はつぶやいた。一塁上では近藤が手で制しており、視野を広げれば稼頭美が速度を落とす姿、さらにその後ろでは大山ベンチの面々が沸き上がるように歓声を上げている情景がだただ映っていた。

こんばんわ、作者です。


気付けば、もう今年も1ヵ月終わりそうですね。

毎年言ってる気がしますが、ホント1ヵ月経つのが早い……。

毎日起こる様々な事に対処しているとあっという間に何もかも過ぎていく……(笑)

まぁでもそれがある意味楽しい日々というものであり、

今年も文字をカキカキしながら1日ずつを堪能していき……たいなぁ……(笑)


ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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