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10+1(イレブン)ナイン+1  作者: あまやすずのり
終わりと始まり
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終わりと始まり 23

「……フゥ……」


 バッターボックス内に収まった稼頭美が足元で小さくバットを揺らしつつ再度小さく息を零す。吐息と共に徐々に高まる重圧と緊迫感、体が感じた感情を一緒くたにバットへと込めながら、視線をグラウンド内へと向ける。


(……そうなる、よね)


 まず瞳に映ったのはマウンド上で捕手のサインを待つ投手本澄、その後ろで少しずつリードを広げる里奈。通常であれば里奈の横で牽制用に待機するはずのショート奏は定位置から外れ、前進気味に守備位置を取っている。その代り、セカンド桐下が二塁ベースへカバーできる立ち位置を陣取っている。そして、ファーストとサードはそれぞれの塁上から少し前気味に腰を据え、こちらの挙動を睨みつける。


(前進守備、セーフティは難しそう……)


 思考錯誤する脳とは裏腹に体は投じられた一球に対し無意識に反応する。左手から放たれた白球は稼頭美の体へと向かうように迫り、思わず腰が引ける。


「ボール」


 初球から内角を厳しく攻めにきたバッテリー、しかし、稼頭美は冷静にその一球を次の布石と考え、一打を狙う。


「クッ!!」


 2球目、予想通りにきた外角低め、稼頭美は臆する事無く振り抜く。が、バットから伝わる衝撃は皆無であり、稼頭美の腰は宙を舞う。


(やっぱ鋭い……)


 打席を外し、空振りに終わった軌道を再度頭の中でシミュレートし、その場で素振りを敢行する。小さく、鋭く空気を裂く音に満足し、再度打席へと足を向ける。スパイクの底で足場を慣らし、軸足でしっかりと土を噛みしめると再度チャンスへと対峙する。呼吸を整えるように、リズムを合わせるように、小さく息を吐きながら、


(次、次こそ……っ!)


 頷き、投球フォームへと移行するマウンドの本澄へと全ての感覚を集中させ、次の一球へと稼頭美は立ち向かう。後へと繋げる一振りをやりきる事、それだけは頭に残しつつ、この後の配球を推測し始めるのだった。



(あっぶな〜……)


 内、外と攻めた後の3球目、再び内角低めへと要求した球は、ズレが生じた。当初は低めにゾーンから外れる、言うなれば1球目とほぼ同じ球を要求したのだが、


(アカンっ!?)


 本澄の手から滑るように投じられた白球は横のコースこそ違いはなかったが、ベルトより上、高めへと入っていく。瞬時に持ち上げたミットに球が届く直前、更に肝を冷やした。鋭い打球音が一塁線上へ飛んでいく。それはファースト近藤が反応するより早く脇をすり抜け、そのまま外野へと転がる、が。


「ファウル」


 1塁塁審の手があがり、宣告された内容に流石の真琴も胸をなでおろす。そして、見つめる。悔しそうに塁線上から戻ってくる稼頭美を。


(……運がなかったなぁ)


 転がっている稼頭美のバットを拾い上げ、無表情で渡すと、今度はマウンドへと視線を送る。そこにはいつも通り、ロジンへと手を添える本澄の姿。端から見れば、独断変わった印象をもたれない程、自然と一連の動作が展開されているが、滑り止めを付ける回数が一回多かった事を真琴は見逃さなかった。


(大丈夫や、横幅は十分意識付け出来てる)


 浮かんだ言葉を投げかけるように両手を大きく広げながら頷き、それを本澄も理解したのだろう、視線で応対する。


(……少なくとも、この3球で大きく横のゾーンは広がったはず)


 腰を据えながら、マウンドでかけた言葉を反芻する。大前提として必ず低め、内角は多少球威が落ちてもコントロール重視でボール球に、逆に外角は腕を目一杯振る事。最初の一文は残念ながら未達となってしまったが、それでも、残りの二つがしっかりと守られている事で、先程の打ち損じが発生している。


(そう、問題ない、はずや)


 横の変化に長ける本澄がしっかりと左右に揺さぶった事で、長打が見込めないこの一番打者は恐らく、自ら振りに行くゾーンをいつもより広げたはず。否、広げざるを得ない。なぜなら、ストライクからボールになる変化もあれば同じ軌道でそのままストライクに収まる球がある事も知っているから。


(1打席目のバント失敗、大きかったなぁ)


 あの打席で大山女子の誰よりもカットボールの存在を刻み付けられたからこそ、2球目の空振り、それと3球目のファウルへと繋がっている。そう理解した真琴は安全に一つのアウトを取るために、指を示す。カウントは1-2、まだボール球にも余裕がある。その事をマウンドの本澄も分かっているかのように神妙に頷き、セットする。


(……残念、やったな)


 セカンドへ視線だけで牽制する予定調和の本澄を見ながら、動きだしのタイミングでミットを掲げる。狙いはもう一度内角ボール球、今度はしっかり低めに。この球を見逃すか、それとも打ちにいくか、結果次第でこの回ラストアウトへの布石とした真琴は、後にこの一球が今日のポイントだった事を自己の記憶に刻むのであった。

こんばんわ、作者です。


最近、本当に寒いっすね。

特に夜とか布団に入るのが至福すぎて、

何もやる事ないとすぐ潜ってスマホポチポチしちゃいます(笑)

そんな寒い季節はもうちょい続くわけで、

皆さんも風邪をひかぬよう、お布団様にくるまる日々を過ごしましょうね。

決して、椅子などでうたたねして寝過ごさないように(戒め)


ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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