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10+1(イレブン)ナイン+1  作者: あまやすずのり
終わりと始まり
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終わりと始まり 18

 その後、ジュピターズは留まる事を知らなかった。

 6番 近藤 美恵子が2-1から外角低めを綺麗に掬い上げ、センター前ヒットでつなげると、7番 飯岡 静恵が流し打つ。ストライク先行からの2-2、バッテリーが決めにいった内角の高めをライト前へと落された。


「ナイス4点目っ!!」


「いいよっ!もう一本続こうっ!!」


 もはやお祭り騒ぎの3塁側に対し、1塁側は真澄が腕を組み憮然とする姿を晒す中、一人の男が球審へアピールしながらベンチから飛び出した。


「はぁ……はぁ……」


 試合が一時停止した事を理解したマウンドの千尋は、大きく肩で息を吐きながら、集まってくる内野陣とコーチへ深く帽子を下げる。


「……すいません……」


「今回は、お前だけの責任じゃない」


 嘆息し、少々思案しながら昌也は簡潔にちゃんこへと尋ねた。


「どう思った?」


「……読まれてる」


 いつもと同じ口調、だが、悔しさが見え隠れする発声。捕手として失点を止められなかった事に責任を感じている、その姿が見られた事に昌也は気付かれぬよう頬を崩すと、


「だな、球種が読まれてる」


「それは……サインが盗まれてる、そういう事ですの?」


 兎志子から挟まれた当然の疑問に、昌也は小さく首を振りながら、一度内野陣を見渡す。ファーストからサードまで丁度マウンドを半分囲むように集まった4人の顔を確認すると、小さく手招きしながら彼女らへと打ち明けた


「一つ案が、というより、やめる事がある」


 ヒソヒソと話始めた内容に、最初に悲鳴を上げたのは兎志子、更には驚きの表情が内野陣を支配する。しかし、それも一瞬、各自が真剣にコーチの言葉に耳を傾け、頷く。


「うしっ、じゃあいこうか」


「「「ハイッ!」」」


 締めの合図に昌也が手を叩く。それに呼応するようにマウンド上から皆が散らばり、それぞれの定位置へと赴く。昌也も駆け足でベンチへと戻ると、早速監督がグラウンドから目線を外さずに問いかけてきた。


「大丈夫でしょうね」


「まぁ、信じてくださいよ、選手たちを」


 ニヤリと笑顔で対応した昌也は同じように視線を向ける。足場を慣らす千尋、内野陣は声をかけながら塁上の選手と自分の守備範囲を確認し、ちゃんこはいつも通り、静かにマスクをかぶり直すと、腰を据える。そして、下位打線ながらこの流れに乗りたい8番 岡本 一花が打席に入ったのを確認してから、球審の慎吾が再度試合を進める合図をその手が示した。



(さて、何を相談したのか……)


 ヘルメットへ手を添えながら、一振りへの準備を進める岡本が足場を慣らしながら視線を上げる。広がる土のグラウンドの中央、ロジンへと手を添え準備するのはサブマリン 千尋。その姿を瞳の中心に設定しながら、1,2塁上の味方や相手の守備位置を見逃さぬよう、意識する。


(……あれ?)


 そして、気付いた違和感、しかし、それに反応する前に投手がモーションを起こす。1打席目と全く同じ、ブレなく美しい投球フォームからエグい一球が岡本へと迫る。


「っ!?」


「ボール」


 初球、いきなり飛び込んできた内角高め、しかも、速球に対し、タイミングを合わせようと動かした体を慌てて抑え、その場で一回転。端からみたら、そこまで危なくない球ではあったが、対角線も合わせたボールの軌道、そして、高めへと浮き上がりながら迫る見慣れない感覚に流石の岡本も少々腰が引けた。そして、何より


(初球からブラッシュ気味、とか……)


 片足を白線内から外し、冷静さを取り戻すように一呼吸。再びボックス内へと踏み入れながら、捕手を一睨みしてみるが、こちらに興味がないのか、はたまたブラフなのか、視線もあわさず真っ直ぐ前を見据えていた。


(……イカンイカン、相手のペースに合わせちゃイカン……)


 どことなく、やりにくさを感じた岡野だったが、すぐさま切り替え、今一度視界から伝わる情報へと集中する。目の前の投手が頷き、サインが決まる。セットから塁上のランナーを視線で釘を刺すと唐突に上体が地へと落ちる。


「クッ!?」


 2度目、その球はまたも内角高めへと走り、反射的に体を引いてしまう。しかし、今度はブレーキがかかったかのように失速しながら落ちると、


「ストライク」


 球審のコールに奥歯を噛みしめる。球の軌道は初球と違わなかった。しかし、それだけで判断したのはやはり早計であり、なおかつ、もう一つの条件が見当たらなかった事に思案する。


(さっきの相談はそれ、かな)


 続く3球目、更に続けて内角高め。完全に見送る気でいた岡本は見慣れた事もあり、反応する事なく無視をきめたが、ゾーンしっかりと通過しておりストライク。1-2と追い込まれたカウントに自然と手に力が籠る。


(次、見極める)


 返球を受け取り、こちらに背後を向ける。現われた背番号1に再度焦点を合わせ、固定。そのまま、ジッと見据える最中、動き出したのはマウンドと塁上の数人のみ。


「クソッ」


 小さく舌打ちしながら、始動。最後まできっちり内角高めに伸びていくボール球に迷いから手を出してしまった岡本は、更なる追撃へと結びつけることが出来ず、ショートフライに終わった。

こんばんわ、作者です。


さぁ、今年も残るところ20日ちょい。

徐々に2021年の終わりを意識する最中、

私はなんか、忙しい日々となっております(笑)

師走と表現される通り、何かと忙しくなる12月ですが、

いやはや、ホント、まとまった年末の休みが早くこないかぁ~(笑)

……まぁ、でも今年も30日までは普通にお仕事が待ってそうで、

ただ、出来るだけ、早めに休みの希望が持てるよう、日々の業務に勤しむ作者なのでした。


ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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