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10+1(イレブン)ナイン+1  作者: あまやすずのり
終わりと始まり
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終わりと始まり 12

 軽くバットを揺らしながらヘルメットのつばへ手をやり、白線の内側へと入ったのは3番打者 兎志子。


「よろしくお願いしますわ」


 小さく会釈しながら足場を固める彼女、小柄で白磁のような白い肌、整った顔立ちはとても野球をやっているようには見えない。しかし、その印象は一瞬で真琴の脳から吹き飛ぶ。


(……ええ構えや)


 バットを立て、小刻みにタイミングを計るように 先端を揺らす。下半身はしっかりと大地へ根付き、逆に上半身はリラックスするかのように脱力を感じる。マスクの奥から確認した打者の姿勢に捕手である真琴は当初の予定通りにサインを出す。


「ボール」


 サイン通り内角へ、大きくゾーンから外れるスライダー。それは兎志子の体へと迫る一球。多少面食らいながら、ボックスからたたら踏む姿を確認した真琴は即座にサインを決める。


「ストライク」


 またも内角、ただし今度は変化もなく伸びていく直球がプレートを掠め、1つカウントを取る事に成功する。


(ええで、ええ感じに喰いついてる……)


 ボールを返球しながら、兎志子の感触を目視する真琴。打席を外し、手袋を締め直す姿は堂に入り、至極冷静に次を見据えているかの様。だが、ほんのわずかに浮かんだ口角を真琴は見逃さなかった。


「ファウル」


 3球目、またも内角に、今度はカットボールのサイン。クサいところに投げられたこの一球を兎志子は今日初スイングで対応。根詰まりしたような小さな金属音と共に白球は三塁線外側へと力なく転がり、線審が両手を翳しアピールした。


(……ここやな)


 早いとも思われるかもしれない。マウンドの投手本澄も驚きを禁じ得ないかもしれいない。だが、真琴は初回からいく覚悟は当にしていた。1回の表、先制点を取った段階で。


(流れを取られたら、アカンのや)


 腰を据え、しっかりと視線を本澄へと合わせ、右手を動かす。瞬間、キャップからはみ出した本澄の癖っ毛が小さく揺れたが、こちらの意を汲んだのだろう、神妙に頷きセットへ。真琴も自らのミットをその位置へと持っていき、待ち構える。幾度となく経験した静けさの中、動き出した本澄。それに合わせるように打者の兎志子がバットを引いた瞬間、それは放たれた。風を切り、目標へ狂いなく突き進む一球。真琴のサイン通りに入ってきたそれをミットで受けとる事はなかった。


「ショートッ!!」


 響く金属音と同時に真琴は叫んだ。土の上を力なく跳ねる白球を定位置から全力でチャージするのは奏。徐々にそのバウンドが小さくなり、止まるかと思われる寸前に右手で拾い上げるとそのままアンダーで一塁へ。


「アウトッ」


 目一杯に伸ばしたファースト近藤のミットにきれいな一球が収まると同時にコールが上がる。少々強引に引っ張った影響で走塁が遅れた兎志子。結果、余裕のショートゴロでこの回に幕を降ろした守備陣がハイタッチを交わしながらベンチへと戻る。


「ナイスや奏ちゃん」


「ありがとうございます、本澄先輩もナイスピッチです」


「いい感じだよ本澄、この調子で頼むよ」


 元々口数が少ない本澄が小さく頷く姿に、面々が拍手や激を送る。活気は十分、やる気も満ちている自軍ベンチに満足した真琴は、その鋭い視線を後方へと回す。するとそこには打ち取った3番打者がベンチで守りの支度をしつつ、一人の男性と会話を交わす姿があった。流石に内容は分からない、が予想は付いている。最後の一球について、きっと入念に確認している事に。


「……まぁまだまだこれから、や」


 試合はまだ初回の攻防が終わっただけ、点差も1点、いきなりの逆転も十分にあり、まだまだ予断を許さない。なのに真琴は少し渇いた唇へと人差し指を添え、不敵な笑みを零すのであった。

こんばんわ、作者です。


プロ野球も両リーグ優勝チームが決まり、今シーズンの終わりも近づいていますね。

自分の贔屓チームはクライマックスシリーズいける事が確定したので、

もう少しだけ、今シーズンを楽しむ時間が延長されましたので、

最後までしっかり応援していきたいと思ってます。

頑張れっ!鷲戦士っ!


ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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