終わりと始まり 08
「……流石、かなちゃん、だね」
ネクストでじっくりと相手投手の姿を見つめていた上野 悠が歩き出す。左手に携えた金属バットをクルクルと弄びながら、ゆっくりと自分の規定位置へ。
「お願いします」
ヘルメットを取りながら捕手と球審へ深めに頭を下げた後、再度金属バット一回転。勢いそのままに肩へと担ぐ形で構えると、目の前の投手が一つ頷く。
「……」
視野全体に相手の姿を捉えながら、小さく息を吐き出す。すると、合わせるように動き出したアンダースローにまずはその軌道を見送る。
「ストライク」
小さく上がったキャッチャーミットの音へと瞳をずらしながら、とりあえず打席を外す。
「ふぅん……」
自分でも何とも言えない嘆息を上げながら、グローブをしっかりと締め直し、白線内へと戻る。ザクザクッ、と左足を打ち付け、足場を固定。バットを掲げながら小さな弧を描くと再び同じ構えを取る。テンポを重視するようで、こちらが静止した瞬間、頷く投手、一塁の奏へと視線を送りつつ、タイミングを計り、
「……フッ!」
「ストライク」
クイックから再度放たれたアンダーに見事空振る。球速はそれほど、早くない。うちのエースに比べれば全然遅い。だが、アンダー独特の軌道と、身体を上手く使ったリリースポイントの隠蔽によりタイミングが合わせずらい。
(……なるほど、ね)
そして、思い出されたのはキャプテンである真琴の言葉。奏から事前に聞いた内容を元に、1打席目で感じた彼女の分析も加味されたその内容から、次の支度を済ませると、投手が三度頷く。
「ボール」
予想通り誘うような一球を悠然と見送りながらも、上野は一つ息を吐く。外した打席から内野を軽く一望し、足元を気にするかのように目線を下げながら定位置へと戻り、構える。頷く目の前の彼女を捉えつつ、ぼんやりした影が差した瞬間、アンダーが動き出す。
「……っとね」
そして、今度は上野が合わせるように体を下げる。肩から落したバットを横へと構え、迫る白球へと高さを合わせながら、前へとずらす。変化の兆しが見えかけた瞬間、上野のバットは球を軽く押し出すように小さな音を響かせる。
「ファースト」
やや三塁側へと転がった白球をマウンドから駆け下りた千尋が拾うと、ちゃんこの声に従うようにクルリと一回転。日頃からの内野連携の賜物か、アンダー以外ヘロヘロボールしか投げられなかったはずの千尋は、ファーストミットへ綺麗な白線を描き、2つ目のアウトが灯る。
パチパチ……
外野から微かに響く拍手の音を聞きながら、ベンチへと戻る上野はジッと内野陣を見つめる。
「……なるほど」
セカンドベースで構える奏の左右、二人の女性が指で何かを確認しあう様子を瞼にとどめながら、上野はすれ違う。頼れる4番の耳元に小さく小言を残し、チームプレイに徹した上野を陽気に迎える仲間の元へ戻るのだった。
こんばんわ、作者です。
先日、誕生日を迎えました。
ハイもう◯9歳です。
いい年どころかオッサンです(笑)
なので、正直もう誕生日がきてもなんだかなぁって感じですが、
それでも祝ってもらえるのは嬉しかったりと。
なので、来年も同じように迎えられるといいなぁ、なんて思った誕生日でした。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




