それは突然やってくる? 05
「……やっときたか」
「お疲れ」
見慣れたグラウンド内に見慣れぬ顔が二つ。それは昌也が提案した光景だった。
「や〜、すまんっ!意外とホームルームが長引いて」
「いいからさっさと支度しろ」
「僕たちもまだアップしてるから」
言いながら昌也から離れるように静かに走り出す二人、一人は未だ仏頂面で強面の顔を一層険しくする新沼 慎吾。そして、それを宥めるように日頃から見られる温和な顔を少々険しくする荒木 悠人。かつて、このグラウンドで直接ではないが、対立した二人、昌也の進退を賭けた日も記憶に新しいしはずなのに、なぜだか無性に懐かしい気持ちになりながら、あの日久々に手に馴染んだグラブを準備した。
(以前よりか、威力は上がっているかな)
慎吾から放たれる速球が、悠人のミットに大きな衝撃を届け、同時グラウンド内に響く、心地よい破裂音を聞きながら、昌也は慎吾の球を冷静に分析していた。あの日、ベンチから確認した速球は捕手へと届く時間的感覚はほぼ変わってはいない。だが、受けるミットへの反動が前回よりも明らかに違う。捕手を立たせた状態で投げているとはいえ、キャッチングする度に掲げた腕が後方へと押し出される姿は、その威力の証明ともいえた。
「……次、普通にキャッチングしてみてくれ」
「わかったよ」
「……チッ」
ニコリと応える悠人、反対に不機嫌になりながらマウンドへと向かうのは慎吾。あまりに対照的な態度に苦笑しつつ、悠人の真横の位置を陣取り、新たな情報に対して準備する。
「悠人っ、7割だ」
「オーライ」
既に肩は出来上がっている。だが、今日初めてマウンドに上がってのピッチングには変わりない。立ち位置からフォロースルーまで、一通り確かめるのに10球を要した後、宣言した。
「次っ、10割っ」
「こーっいっ!」
パーンッ!
決まる速球。実に軽快な音が投手の調子の良さを実感させる。ド真ん中だからこそではあるが、これは問題ない事を確認した昌也は2球目に備え、一層身構える。
パーンッ!
右打者のアウトローへと延びる同じ直球。キャッチング、ミット音、共に傍目からは初球と変わらない。だが、昌也には小さな違和感が生まれていた。捕手出身だからこそ感じた微かな綻び、多分それが今回の件に繋がった事を理解する。
ただ、確信を得ていない昌也は無言で佇む。それを理解したのか、悠人は昌也へと向けた視線を即座にマウンドへボールと共に返すと、更に不機嫌な顔をした慎吾が口を動かす。風に乗らない音、だけど幼馴染だからわかるその音に悠人は苦笑を堪えながら次の要求へと移るのだった。
こんばんわ、作者です。
今とっても鬱です……。
初めからなんだよ、と思われるでしょうが、まぁ色々、ではないか、ある事についてですね。
正直、こんなに引きずらない自信あったのですが、いやもう重症です、ほんと。
何があったのか……は、ここで言う事ではないと思いますで、割愛しますが、
来週には元気な後書きが出来るよう、今週末に心の整理をね、ちゃんとします。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。