波瀾は彼女と共に 18
「ヘイッ!ショートッ!」
真琴の掛け声と共に鈍く響いたゴロがサード脇を通過する。定位置で構えていた遊撃の奏は瞬間、体をスライドさせる。静から動、打球の通過位置へと一気に駆け込んだ場所はサード側への所謂深い位置、しかし、奏は臆する事なく捕球した次にはスパイクを地へと打ち付け、沈んだ体を浮上させる。その勢いのまま、一気に肩を回転させてのワンバン送球が一塁へと走る。
「オッケーッ!次、セカンッ!」
ファーストミットの動きをしっかりと確認し終えた真琴が今度はセカンドへと構える。対して、定位置で構える彼女、桐下 園子はやる気なくだらりと手を上げ、覇気のない声を上げる。ノッカーの気合を削ぐその行為も普段通りなのだろう、サラリと流し、強く勢いある打球を真琴が飛ばす。
「……めんどい」
一言、発した言葉とは裏腹に抜けると思われた打球は当たり前のように園子のグラブへと収まり、ファーストへ。その機敏すぎる動きは同じセカンドであり、大山女子の守備の要、兎志子も目を丸くした。
「……思った以上に手強そうだ」
それは昌也も同じだった。弱小とはいえクラブチーム、部活程度の集まりよりは錬磨されているとは思ってはいたが。
「コーチの妹さん、凄いですね……」
「サードモ、ベースギワノホキュウ、ドチャクソスゴカッタネ」
「……あの程度、わたくしだって……」
1年生内野陣トリオがベンチで異なる喜怒哀楽を展開しながら、グラウンドの動きを凝視する。その瞳はしっかりと彼女たちの動きを捉え、追い、自分の力へと変換するように。
(……これだけでも価値はあったな)
通常なら、少なくとも数か月前の彼女達なら目の前の光景だけで戦意喪失すら可能性があった。しかし、今は自信もプライドも持っている。大山男子野球部に勝った実績と短い期間内で積み重ねてきた意味ある練習は伊達ではない。だからこそ、もっと上達したいと思う彼女達は必死に模索しており、そのヒントが視線の先にある事を自然と理解し、食い入るように見つめているのだ。
「……頼もしい、な」
そして、昌也も視線を戻す。口元に微笑みを浮かべながら、同じようにその動きを追う。なぜなら、昌也も未だ修行中の身であるから。大山女子の指導者としても、一人の野球人としても、まだまだ自分には足りないものがある事を分かっているから。だから、少しでも価値ある挙動を見逃さすよう、グラウンドに響く白球の音色と動きを最後まで黙々と追い続けるのだった。
こんばんわ、作者です。
久しぶりに体調が微妙な本日。
そんな日は決まって音楽で何となく誤魔化すんです。
そして、今日も通勤時に脳内インプットして職場へ。
皆さんもお気に入りの曲とかあると思うんですが、
自分の場合、そういう曲に限って口ずさみたくなる癖があり……。
もうお分かりですね、そうです、職場でよく口ずさむんです。
ですが、リモートのおかげで部屋には一人。
誰にも気にせず口ずさむうちに調子戻ってきたのでした、丸(笑)
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




