波瀾は彼女と共に 16
明くる日、真琴と奏は呆然と見上げていた。朝早くからバスに揺られ、数時間かけて集まった仲間と共に、目の前に鎮座するとても大きくて立体的な建物を。
「……ホンマもんのドームやん……」
「……ハイ、近くで見るとますます実感しますね……」
先日、突如現れたその建物は、当然近隣の話の種となり、二人の耳にも届いていた。聞いた当初は二人ともありえない、と一笑していたものの、
「まぁ、お店からも見えてましたしね」
「そやね、ってかどうなってるんや、かなちゃんのお兄さんは……」
「兄ではなく、あの野球部が異常なんです」
「……せやな……」
言いながら、首だけ捻る真琴。動いた視界、その先にはストライプ柄のユニフォームを纏った女性たちが大き目のバックや手荷物を地へと落すことなく、未だ彼女達も見上げていた。
「圧巻、だね……」
「……ホントだったんだぁ……」
「正直、またキャプテンのホラだと思ってたのに」
「なんでやっ!?」
即座に飛び出した真琴のツッコミに苦笑い、そして、広がる『キャプテンだから』のコール。いつもと違う土地に来てもその精神は変わらない仲間たちに悔しがりつつも真琴は一つ咳払いしながらキャップらしく立ち振る舞い始める。まるでついてこいと言わんばかりに逞しく背を翻し、頼もしげに闊歩しながら、
「……ほな、そろそろ敵陣様の懐へといこかっ!」
「……先輩、そっちじゃないです」
自信満々で入口へと辿り着いたはずが、後輩に呼び止められる。上がったテンションに水を差された真琴が頭を傾けながら声の主へと顔を向けると、そこには手でバツ印を作った奏がおり、
「こっちですから、こっちこっち」
予め、兄の昌也から入り方を聞いていた奏は指差しながら、皆を案内し始めた。すると、その場から一歩も動いていなかった仲間たちがゾロゾロと続く。先程とは違い和気藹々と進む彼女たち、この後に控えた練習に花を咲かせながら徐々にその姿を小さくしていく。対して、間違いを指摘された真琴はやっとこさ体を彼女達へと向けると、込み上げてきた惨めさに握り拳を震わせ、涙しながら口を開く。青空に向かって、未だ自分がそこにいるのに無視された哀れなキャプテンの存在を知らしめるように、叫びながら走った。
「なんでっ!?なんっ、やーーーーーーーーっ!?」
こんばんわ、作者です。
野球シーズンもとうとう前半戦が終わり、オリンピック期間が始まりますね。
未だコロナ禍の中でなんだか現実味がありませんが。
ただ、出場する選手たちの中では1年間待った方達もいますし、
全力を出し切ってもらいたいですね。
頑張れ、日本!
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




