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10+1(イレブン)ナイン+1  作者: あまやすずのり
波瀾は彼女と共に
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波瀾は彼女と共に 13

「……さて、どうしたもんか……」


 グラウンドでは各自がアップを済ませ、それぞれのメニューをこなし始めた頃、昌也は一人ベンチに座り、このところの悩みに再度頭を使っていた。


「……試すしか、ないか」


 この半年、完全に昌也の相棒と化したルーズリーフをめくりつつ、同じ答えしか出ない事にため息をつきながら立ち上がる。みなが練習している元へと歩みながら、自分の考えを頭の中で整理しつつ口を開いた。


「ちょっと集まってくれるかー?」


 少し張り上げた声音に反応し、ぞろぞろと面子が顔を示す。昌也を取り囲むように揃った彼女たちを一通り見渡したのち、彼は少々難しい顔をしながら話始めた。


「少し、問題が発生した」


「問題?」


 キョトンと呟いた梢。その表情はいつも通り何も考えていない様で、昌也の胸中に黒い蜷局が巻く。それも無理なかった。なぜなら、その原因が実は彼女だったのだから。


「……何となく、分かりましたわね」


「うん……あの表情は間違いない、かな」


「ホトケノカオモサンドマデ、ダネッ!」


 一年生内野陣トリオがウンウンと頷きながら何かが変わり始めた昌也から少し距離を取る。どうやら他の面々も気付いたようで、一歩二歩と後ずさる。しかし、当の本人は全く意に介さず腕を組み悩む仕草をした後、


「う〜ん……あっ!そっかぁ、昌くんが女装すれば……アイタッ!?」


「どう悩んだらそういう結論になるんだぁ?あぁっ!?」


 意味不明な発言した梢にいつも通りのツッコミを済ませると、しかし、昌也は神妙に腕を組みながら言葉を続けた。


「……まぁ、あながち間違ってもないが、な」


「えぇっ!?そんなに試合に出た……アゥッ!?」


 再び走った鋭い一撃におでこを抑える梢。いつも通りの夫婦漫才に皆が呆れる中、オロオロしながら梢を介護する千尋が話を進めるように聞いた。


「えっ、えっと、それで問題って」


「……このままだと梢が登板出来ない可能性が、ある」


 昌也の言葉に皆の中で雷撃が走る。それは当人にも効果は抜群だったようで、普段見せない血相で昌也へと突っ込んだ。


「どっ!?どうしてっ!?なんで私出れないのっ!?」


「……変化球のせいだ」


 言われてまた小首を傾げたの梢。そして、答えを求めるように千尋へと顔を向けるが、こちらも理解してないようで、首を横にして否定する。そんな中、静かに口を開いた人物がいた。繰り広げられる喜劇の中、ずっと我関せずで口へと物を運び続けた彼女が。


「フォークボール……」


「えっ?それって……あっ!?」


 呟かれた言葉に流石の千尋も気づいたようで、声を上げながら昌也を見ると彼は頷きながら答えた。


「そう、ちゃんこの言ったフォークボール、梢のフォークボールを取れるやつがいない」


「えっ?だから、昌くんが女装……」


「んなわけにはいかんだろぅ……」


 いい加減突っ込む事も疲れたのだろう、呆れた顔のみで手短に対応した昌也が一呼吸置きながら話題を元へと戻す。


「今度の試合は完全な女子硬式野球チームの試合だから当然、俺が出れない、となると」


「リリーフで登板した際の梢を受ける捕手がいない」


 昌也の意図を理解するように大山高校硬式野球部の現捕手であるちゃんこが続く。先程までとは違い、手に持った菓子パンをそのまま、否、少々握りつぶすようにしながら。


「……直球は、私やちゃんこちゃんでも何とかなるけど、フォークとなると、」


 顎に手を添え、悩むような仕草で応えたのはキャプテン嶋野、今は一塁を守っているが、昌也がくるまでは歴としたキャッチャー経験者。そんな彼女ですら、端から見ても鋭く落ちる梢のフォークとなると話は別だ。


「完全にどころか捕球するのも厳しいかも」


「しかも、練習するにも、な」


「あっ、球数制限……」


 そう、一度投手として壊れかけた梢に課された制限、1日10球のみ、そして試合まであと数日しかない。


「……こうなる事態は見えてはいたが、正直俺が見誤ったのが大きい」


 もちろん、昌也もちゃんこがしっかりと捕球出来るように練習させるつもりではあった。だが、捕手として動き出したばかりで経験の浅い彼女には他に覚えさせる事が多く、また、しばらくは試合もないだろうと、高を括った結果、この状況を招いてしまった。


「……どちらにしても、もうどうしようもありませんもの、この際、直球だけでいいのでは?」


「お嬢様の言う通りだ、今回は女子硬式戦だから7回までなのだろう?」


「あぁ、まぁ、な……」


 硬式野球の女子大会は通常の野球とは違い、2イニング少ない7回までが基本となっている。イニングを減らす事により、1回毎の攻守の重みが増し、より濃い試合展開を魅せるのが狙いである。今回はそれに準じ行う練習試合ではあった。そのため、以前彼女たちが戦った大山男子の時とは違い、千尋が最後まで投げる事も不可能ではないし、リリーフで1ニングのみでなら、直球だけで勝負もできなくはない、が。


「ただ、今回は年上が集まるクラブチームだ、この経験は貴重だし、出来れば梢もどこまで通用するのか試してほしい、これが俺の本音でな」


 確かに、滅多にある機会ではない。ただでさえ女子硬式野球のチームは少なく、ましてや片田舎であるこの土地まで遠征にきてくれるとなるとほぼ絶望的。それは、なんとか練習試合を斡旋しようと去年から動き出していたが未だ成果に繋がらない真澄監督を見ていれば明らか。


「今日含め、せいぜい30球……ちゃんこちゃんはともかく、私は体で停めるので精一杯だと思う」


「私も同じ」


「だよなぁ……」


 捕手3人による同一の見解に皆が腕を組み、悩み始めた頃、彼女が言った。誰もが彼女のために策を講じようと頭を回転させている中で、飄々と、全く意に介さず、その空気をぶち壊すように。


「だったら、千尋に受けてもらえばいいじゃん」


「「「「「…………はっ???」」」」」

こんばんわ、作者です。


先日、我が贔屓球団がやっとこさ連敗トンネルから脱出しました。

ホント、きつかった……。

でも、ここからはきっと上り調子になると信じ、明日からまた応援したいと思います。


ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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