波瀾は彼女と共に 11
〜佐野 稼頭美 ミズキ・マリアーナ・ドス・サントス・レイチの場合〜
明くる日、それは鎮座していた、デカデカと、堂々に。
「Oh……コレハ、ドウイウコト?」
「いや、私も分からない……」
この日より本格参戦する二人、マリアナと稼頭美はそれを見て呆然とした。いつも通り、いつもと変わらない道を行き、目指したはずの大山女子専用グラウンド、再び始まる白球を追う日常に心躍らせながら辿り着いた先には大きな屋根が付いていた。グラウンドだけではなく、外野の芝生すらすっぽりと覆いかぶさるように。
「カンゼンニ、ソトカラナカ、ミエナイネ」
「うん、防護柵が無い、ね……」
あったはずの簡易的な柵は取っ払われ、堅そうなコンクリートが等間隔に立てられている。どうやらそれが、大きな屋根の支柱のようであり、所々の隙間から中が伺える様子。二人は目を合わせ頷くと歩き出した、ゆっくりと。暗がりの奥、静かに漏れ出す光の正体を確認するために。
「……えっと、これは……」
「フム……」
そして二人が目の当たりにしたのはいつもと変わらぬグラウンドと所々改良されたベンチとガヤガヤと騒がしくはしゃぐ先輩たちの姿だった。
〜野田 昌也の場合〜
その日、昌也は呆然とした。
いつも通り自転車にまたがり、走らせ、誰よりも早くその場についた彼はまず、その巨体にただただ口を開けるしかなかった。
「……どうなって、るんだ……」
とりあえず自転車を停めようと辺りを見渡す。いつもとは違う風景に戸惑いを覚えつつ、とりあえずコンクリートの壁に立てかけるように置くとそのまま間からグラウンドへと入る。大きく覆われた屋根のせいで薄暗い中、目を凝らせばマウンドが見えた。そのままスライドさせれば本塁が、そしてぐるりとダイヤモンドを視線で周りいつもの感覚と照らし合わす。
「……どうやら間違いはないみたい、だな」
コーチを引き受けてからずっと慣れ親しんだグラウンド、しっかりと脳裏の記録と一致させ、とりあえずベンチへ足を向ける。果たしてそこにも、
「なんじゃこりゃ……」
変わらぬ椅子、変わらぬ給水タンク、変わらぬ棚、そして変わったのは、透明で滑らかなゴムのような布がベンチの出入り口全てを覆うように上から下まで伸びている。謎の物体に気持ち悪い感情を抱きながらも腕で持ち上げつつベンチ内へ。
「……おっ?」
そして肌が気づく。早朝の寒空の中を自転車で掻っ切り、冷え切ったはずの頬に温もりが戻って来た事を。
「……なるほど、な」
思わずニヤけた口元が自然と浮き上がる。とりあえず、ベンチに荷物を卸した昌也は鞄から道具一式を取り出すと、慣れ親しんだはずの違和感がぬぐえないグラウンドへ再度戻りアップを始めるのだった。
〜佐々田 梢の場合〜
「ほへぇ〜」
梢は首を高く上げながら、感嘆な声を上げる。通い慣れたグラウンドに向かう最中、違和感には気づいていたが、実際に目の当たりにするとやはり驚愕が勝る。
「これ、絶対兎志子ちゃんの仕業、だよねぇ」
腕を組みながら一人頷く梢。真っ新な空に映える白い屋根が大きな存在感を醸し出し、グラウンドを囲むようにあったはずの金網は武骨なコンクリへと変貌している。ド田舎に突然現れた大型施設、屋根が付いた事で更にふてぶてしさが増していた。入部当初から隠しもしない今回の主犯が如く。
「流石、兎志子ちゃんだねぇ」
への字にした指を顎に当てながら、梢は思考した。屋根が出来た事でグラウンドには闇が落ち、中がどうなっているかが分からない。いつもなら悠々と入れる場所であるにも関わらず、コンクリの柱と柱の間から覗ける微かな風景がどことなく不気味さを感じ、二の足を踏んでいた。
「どうするかっ、と?」
誰か来てくれればと思い周りを見渡しながら梢は気付いた。柱の陰に見えた小さな物体、二つの丸とシャープなカーボンを瞳で捉えた瞬間、記憶が蘇り、即座に足を暗闇へと走らせる。小さく息を継ぎながら、揺れるバックのベルトを抑えながら、自ら光になるように切り込んだ。
「ヤッホーッ!昌くーんっ!!」
こんばんわ、作者です。
私、常日頃から筋トレなどしているんですが、
最近なんか体が悲鳴をあげ始めているんです。
特に大きくトレーニング内容を変えてはいないんですが、
ちょっと肩に張りが出たり、膝に痛みがあったり……。
これは過負荷なのか、はたまた年なのか……。
とりあえず、暫く様子をみながら今日も筋トレに励むのでした。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




