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10+1(イレブン)ナイン+1  作者: あまやすずのり
波瀾は彼女と共に
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波瀾は彼女と共に 09

 そして数分後、彼女たちは帰ってきた。一人はグッタリと頭を垂れ、KOされたボクサーのように拳を揺らしながら、もう一人は眉間にしわを寄せながら、しかし、どこか満足そうに。


「ククッ、イイざまね」


「梢ちゃん……」


 そんな彼女達を卑しい視線で迎える梢と渇いた笑いを浮かべる千尋。対して、あまり興味なさそうだった昌也は隣に腰を下ろした妹に向けて問いかけた。


「で、会えたのか?」


「はい、ちゃんと兄さんの事も話してお願いしておきましたから安心してください」


 悪戯っぽく微笑しながら放たれた奏の言葉に面食らった昌也へ更なる追い打ちが飛ぶ。


「ええ、ええ、そらぁもう、ウチのクラブチームも含めてしっかり、きっかり、丁寧に」


「お、おぅ……」


 話しながら疲労の顔を隠すことなくテーブルへと身を投げ出した真琴、その姿から大層盛り上がった事が容易に想像付き、引き気味になった昌也。そんな二人を見比べながら、奏は軽く吐息を漏らしながら説明する。


「とりあえず、冗談はさておき、兄さんについてはオーナーさんも気づいているみたいでしたよ、甲子園の実績は伊達じゃないですね」


 思い出すように天井へと視線を這わしながら、店のオーナー、名を羽鳥 雄一、彼との話をまとめていく。これには常連である梢や千尋も知らなかった事が多かったらしく、


「えぇっ!?マスターって元高校球児っ!?」


「しかも、甲子園出場経験有、だったなんて……」


 目を白黒させながら奏の口元へと注目し、発せられる言動に驚きを積み重ねていく。


「……ま〜、普段の雄にぃからは想像でけへんやろなぁ〜」


 いつの間に回復したのか、片肘をつきながら合いの手を入れ始めたのは真琴。それに同意するように驚愕に彩られた二人がコクコクと頷きあう。先程まで、あんなに睨み合っていた真琴と梢は既にどこかに飛んでいったようで、二人を取り持つ事で一時悩んでいた奏は釈然としないながらも声を停めず、


「そんなわけで、このお店学生サービスが盛んらしいんです」


 オールバックに紳士的な服装で客を迎え、レトロ調の室内には雰囲気のよいBGM、それをぶち壊す学生限定メニューが所狭しと壁に貼ってある理由が判明した。青春時代を部活に捧げたオーナーらしい一面、同じように汗にまみれる学生を応援するためにそれらは存在した。


「よく通ってただけにビックリ、だわ」


「ほんとに……でも、嬉しい、よね」


 少々放心状態の梢と千尋、そんなに深い話、ではないが、それでも二人はオーナーの優しさに心打たれたようで顔を見合わせ、小さく微笑む。その光景に流石の昌也も口元を綻ばすと、


(っ!?)


 瞬間、背筋に寒いものが走り、視線を這わす。そしてすぐに気付いた。テーブルを和やかに囲む中で一人不敵な笑みを浮かべ、この後の顛末に愉悦が止まらないと言わんばかりに彼女が動き出す。


「なら……恩返しせな、あかんよなぁ〜」


「えっ?」


 ユラリとその場で立ち上がり、指し示す。この場が、この時が、この瞬間が、誰のためにあるのか、を。


「いつの時代も、恩義には応えんと、あかん、よなぁ〜」


「ちょっ……先輩っ……まさかっ!?」


 奏には心当たりがあるのだろう、明らかに慌てふためいた顔になった横で真琴は高らかに指を持ち上げる。そして、集まるは目の前の視線。一本の何でもない人差し指に彼女達が注目する様に更なる高揚を覚えながら振り下ろす。否、宣言した。


「試合、しよかぁっ!!」

こんばんわ、作者です。


徐々に暑さを感じる時期になり、そして、湿気を感じる今日この頃、

今年も梅雨が近づいてきましたね。

……だからといって、特別な事はなにもないんですが(笑)

ただ、この時期になると洗濯が少々億劫に。

特にお仕事の関係上、平日は部屋干しによる生乾きの臭いが……

リモートに切り替えてくれねぇかなぁ、と切に願う私でした。


ここまでお読み頂き、ありがとうございます。

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