波瀾は彼女と共に 07
「おっとぉ、誰かと思ったら、かなちゃんじゃぁ、あ〜りませんか〜」
「……いや、白石先輩……ワザとらしすぎます……」
盛大に驚愕していた奏も流石に呆れたのか、白石先輩と呼ばれた女性は茶目っ気いっぱいの顔を湛えながら、昌也達へと視線を向けると、
「とりあえず、4名様でええ?」
「あっ、すいません、お願いします」
後方に誰もいない、とはいえ、店の出入り口で佇んでるのは店員、客、どちらにとってもあまり芳しくない事態を察し、席へと先導してくれる彼女。
通された場所は窓際、よく学生が使っている場所。馴染み深い所に昌也達4人が安堵の息を漏らす中、彼女は手慣れた仕草でお辞儀をし、
「それでは、お決まりになったらベルでお知らせを〜」
ヒラヒラと手を振りながらその場を後にする。接客する店員としては少々疑問に思う態度に昌也達が唖然としてる最中、唯一知人である奏はどこか楽しそうな微笑みを湛え口元を抑えていた。
その後、それぞれが注文した食事で胃を満たし、ソフトドリンクで小休止する中に彼女は再びやってきた。
「ども〜、白石 真琴で〜す」
聞いてもいない簡素な自己紹介を終えると、自ら手に持ったグラスと共に奏の隣へ腰を降ろし、ストローを加えると中身を一口。
「……ふぅ、労働後の炭酸こそ至高やわ〜」
「先輩……」
奏が眉間の皺へと手をやる姿に苦笑しか対応できない他の3人。しかし、真琴は全く気にせず自分の話を進める。
「それで?そちらの男前さんが例のお兄さん?」
「ん?あぁ、奏の兄の野口 昌也です」
その場でペコリ、小さく頭を下げた昌也に満足したのか、真琴は即座に話題を変える。
「それで?そちらのべっぴんさん達は?」
「あっと、昌く……昌也君と同級生の佐々田 梢、っと」
「ハッ、ハイっ!?山辺、千尋……です……」
小さく吐息を漏らしながら顎に手を添えた真琴、瞬間、妙な空気が淀む。原因は真琴の視線だった。対面に据えた梢達に注がたそれは、まるで値踏みするような、探りが入った瞳。千尋はいつもの人見知りが先に出て、顔面を膠着させているが、梢は違った。真顔でジッと、対峙する。負けん気の強い性格がそうさせるのだろう、真琴に対する無言の圧力に屈する事無く迎え撃つ。その結果、徐々に雰囲気が重くなるのを感じた奏が、場を和ます意味も込め、声を発した。
「先輩、彼女達も野球やってるんですよ」
「え?ホンマに?」
奏へと視線を移しながら真琴が問いかける。その顔は先程までとは違い、とても意外と驚きの狭間を巡っている。しかし、昌也と梢は気付いていた。その顔がわざとである事に。
「ホントですよ〜、昌也君が私たちのコーチをしてくれてまして、」
ねっ、脇で未だに落ち着かない千尋へ話題を振るように話す梢。それに応えるようにコクコクと首を動かした千尋に真琴は再び嘆息しながら話す。
「そか……野球を、ねぇ……」
そして、再び真顔での睨みが始まる。否、始まった瞬間、昌也が動く。徐に使っていなかったストローを袋からだし、グラスへと通す。カラカラと蠢く氷をさらにかき回しながら少し濃いめのコーヒーを薄め、体へと吸い込む。暖房により少し火照った体には至福だったのだろう、どこか満足そうな顔に横にいた奏はため息を漏らす。
(……逃げたな、兄さん……)
視線を天へと上げた兄へ、実直な感想を残しながら奏は脳を動かす。この場をどうするか、重ためな課題へと摂取したカロリーを用いるため、指を絡めながら動かすのだった。
こんばんわ、作者です。
1週お休み頂いてからの投稿ですね。
皆さんはお休みは如何でしたか?自分はそれはもう、家に籠ってました(笑)
まぁ、用事もあり数日はお出かけ兼ねて体を動かしたりはしてたんですが、
大体は家にいましたね~。
でも、おかげでだいぶリフレッシュして今週を迎えております。
また暫く忙しくなる日々になりそうですが、こちらの更新もしっかり続けていきますので、何卒。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




