始まる合同練習 13
翌日、その翌日も大山女子野球部と奏達は朝から夕方まで練習は続いた。それぞれの都合もあり、時間や日によって人の入れ替わりが激しかったが、その都度集まった面子で濃い練習を積んでいた。
「フッ!!」
小さく飛ばした息とは違い、打球は大きな弧を描きフェンスを軽々と越えていく。フォロースルーの形を染み込ませるようにバットの位置を固定したまま、打球の行方を満足そうに見つめる昌也。
「……あちゃぁ……」
逆にマウンドでは帽子のつばへと手をやり、脱帽するのは梢。自分なりに最高の一球を投げたつもりだったが、それをいとも容易くスタンドまで運ばれた。格の違いをヒシヒシと感じながらもそれを引きずる間は全くなかった。なぜなら、
(……練習、とはいえ)
油断なく次の球を待ちかえる姿を目の当たりにし、高揚感が高まった梢はキャッチャ―が示したサインに小さく首を傾けた。
(……やっぱり、兄さんはすごい)
実践形式のバッティング練習。人数の関係もあり、特に守備を置く必要はないのだが、奏はあえてショートの位置につく事で兄の一打を特等席で検証していた。
(次は……フォーク、ね)
キャッチャー悠人のサインを確認すると、腰を落し、来るであろう打球を予測しながらその時を迎える。
ギンッ!
鈍く響いた打球音と共に体が動く。三遊間を低く貫く一打を奏の左手を撫でる。
「クッ!?」
思わず漏れた言葉が追い付けていない事を認識させる。反応は悪くなかった、ただ一歩、後一歩が足りてなかった。
「遅い、ですわね」
悔しさに顔を歪める奏へ追撃するかのようにセカンドから冷静な声が飛ぶ。同学年とは思えない程自信に満ち溢れた振る舞いとそれに恥じない守備能力。正直、奏にとって第一印象から苦手意識が強い彼女、兎志子が奏を一瞥しながら定位置へと戻っていく。腕を組み、何事もなかったかのように、奏へ背を向け、戻る様子は奏を挑発しているようで、だけど、何も言い返せないでいた。
「次こそ〜っ!」
マウンドでは打たれた梢が頬を膨らませながらロジンを乱雑に扱う。外角、しかもストライクからボールへと外れるフォークとしては最高の球をきれいに捉えられたのだから無理もない。
(……こっちは予想通りの軌道、だったのに)
土へと視線を固定したまま一連の動作を見つめ直す。奏の中で落ち度はなかったか、違ったアプローチはなかったか。グルグルと脳内で何度も再生し、その都度場面を切り抜き、思考を深める。だが、
(今の私では、無理だった)
結果は、やはり変わらない、現状では。だから、構えた投手へと向けられたそのサインに奏は敏感に反応した。視界を広げ、予想した弾道と彼女の位置を再度横目で確認すると、瞳の端で動き始めたボールと共に一連の流れを脳に焼きつかせる。あの時の、ちゃんこが魅せてくれたあの一打の時のように兎志子の動作をくまなく写し取るために。
こんばんわ、作者です。
ここのところ、暖かくなったおかげで(あえて(笑))
花粉を感じられるようになりました……。
毎年、私の鼻を直撃させる彼ら彼女らは今年も健在のようで
少しずつその傾向が出てきています。
恐らく本格的なシーズンは来月以降でしょうが、
もうそろそろ対策していかないと、と思う私でした。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




