始まる合同練習 10
(……なるほどな)
今しがたちゃんこが見逃した球を判定しながら、悠人の次を予想する昌也。球審という一番の特等席で再びまみえた二人の呼吸を肌で感じていた。
(……ってかこれ打撃練習のはずなんだがなぁ)
今更か、と心で付けたしつつセットした慎吾が視界に入り、再び腰を据える。果たして次の球は自分が思い描いた通りなのかどうか、まるで自分がバッターボックスに立ったような感覚に囚われつつ、次の一球をジャッジするため集中を上げる昌也だった。
(……ど真ん中……)
正直、驚きを隠せなかった。2球目、放たれた白球は真っ直ぐな線を描き、悠人の構えたミットへ。ちゃんこにとって全くの予想外だったため、当然バットが動く事はなかった。
(……)
まさかの配球、もちろん予想はしてなかったわけではない。直球に自信とプライドを持っている投手だからこそ、このタイミングで投げる可能性は十分にあった。だが、そのコースが内角でも外角でもなく、バットを普通に振れば当たる9分割でいう真ん中。それだけに次にくる一球は重要である事を捕手として学んだ脳が指摘する。カウントは1-1、球を視ても問題ない。
「ストライック」
未だセットポジションから放たれた一球、真ん中やや低めへと投じられた軌道はブレーキをかけながらもっとも手が届きにくい外角低めへと落ちていく。普段と変わらず表現が薄い瞳で眺めながら見送ったちゃんこは次の一球に向けてメットを深々と押し込むのだった。
(……見送った、か)
予定通りドンピシャの位置に落ちていったカーブを受け取りながら、ちゃんこの姿勢を凝視した悠人。微動だにしない動きから完全に見送るつもりだった事を認識しつつ、その姿は完璧に打たれた光景を脳裏に浮かびあがらせる。
(……また、狙っているのか……)
決め球シンカーを初見で打ち砕かれたあの日、後悔はしていない、が悔しさだけは今でも残っている。自分が直接投げた球ではないにしろ、それを選択した責任とリードを見抜かれた間抜けさが沸々と沸き上がる。
(でも、今回は……)
立ち上がり慎吾の胸元へとボールを返球した悠人は即座に腰を据え、サインを出す。相手に考える隙すら与えない、それを理解しているのだろう慎吾は即座に首を縦に振りセット、対して悠人はゆっくりとミットを掲げる。
(僕たちの勝ちだっ!)
ばら撒いた餌に喰いつく確信を持ちながら、内角へと静かに持っていった的へと腕が振り下ろされる。未完成ながら今日まで磨いてきた自慢の一球を好敵手と認めた打棒の持ち主へと向ける。この一球で過去を振り払うために、新たな一歩を踏み出すために、二人の選択した白球は勝負の空間へと解き放たれた。
こんばんわ、作者です。
いよいよプロ野球もキャンプシーズンがスタート。
我が贔屓球団は嬉しい知らせもあり、個人的には悲しい知らせもあり……。
早くも悲喜こもごもな私です。
でも、まだ始まったばかり。
他球団含め選手のみなさんには怪我無く、病気無く、無事に最後まで走り切ってほしいものです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




