始まる合同練習 09
初球、ちゃんこは見送った、正確には見送るしかなかった。
「……」
ぼんやりする視界の中でバッターボックスの定位置から動くことなく、バットを軽く遊ばせながら、ちゃんこはその失敗を反省した。
(……予想外、ではあったけど)
それだけ、微かに口元を動かしながら構えと共に、視線を上げる。その先には大きく描かれた1の文字がゆっくりとスライドし消え、ギラついた瞳がこちらを捉える。
「……」
しかし、ちゃんこは怯える事も敵対する事もなく、いつもの自然体で次の球を迎えるため、バットを掲げながら次の球を分析する。脳がいつもよりグルグル回る感覚。ここ数日、深く思考する機会がなかったちゃんこにとって、それは甘美。ドンドン自分の世界に陥っていく時間に密かに頬が動く。
(……次は……)
投手の性格と捕手のリード、そして、あの日記録した試合内容が激しく交差する。先程の初球、恐らく投手主導で内角の速球で来ると思っていたちゃんこは読みが勝った場合はスイングする気でいた。そして、目論見通りコースは内角。相手の腕から放たれた瞬間、くると感じた刺激に合わせ引いたバットを一気に止めた。なぜなら、それは打つべき球ではなかったから。だから、視線の先で変化しながら落ちる白球を見送った。
その球はシンカー。あの日、ちゃんこが初見で射抜いた球をいきなり使ってくるとは流石のちゃんこも予想だにしなかった。シンカーは慎吾の決め球であり、彼らバッテリーにとって必殺の1球。それを初球から使う、その意味を同じ捕手であるちゃんこが分からないはずはない。
(……だから……)
考察で狭まる視界の隅で始まる動作。深く息を吐きながら現実の世界へと戻ったちゃんこにその一球は放たる。迫る白球が徐々にその身を主張する。先程と同じようにテイクバックの構えを取り、驚愕で留まる。結果、またも見送るだけになったちゃんこへと声が響く。師匠でもある昌也の淡々としたストライクのコールが届くのだった。
こんばんわ、作者です。
気付けば今年も間もなく1ヵ月が終わりますね。
毎年のことながら一月ってアッという間に終わっちゃう印象が……(笑)
そして、いよいよプロ野球も動き出します。
未だコロナの影響で例年と違う形が続きますが、楽しみなシーズンがもうすぐ……。
今年も精一杯応援していきたいです。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




