始まる合同練習 08
代わりに入ってきたちゃんこを見るや、慎吾の口元が吊り上る。前回、見事に捉えられた一打。あれを忘れているわけではない、否、忘れられるわけがなかった。
(……わかってる、な)
だから、出されたサインにも即座に応え、構える。あの時と同じ、セットモーションからの一球を今一度全力で投げ切る。
「……ボール」
だが、彼女はそれを見送った。初球から投げたのはシンカー。あの日、あの試合、勝ったと思われた一球を軽々とスタンドへ運ばれた因縁の変化球は、不発に終わる。
「……」
表情変える事無く、バットを足元で軽く揺すり、構えるちゃんこ。全くと言っていいほど、微動だにしないその姿は幾度と浮かんだあの光景と変わらない事を知らしめる。
(……油断ならねぇ、な)
しっかりとグラブに納めた白球を見つめながら、再度プレートに足を付ける。慣れた仕草のはずなのに心のなかには緊張の影が広がる。押しつぶされそうな重圧がマウンドを包む。一打席、たった一球打たれただけの相手、それでも慎吾は頬を伝う汗を感じていた。
(……おもしろい)
思いとは裏腹にひきつる顔を利き手で払いながら決意を込める。口元から漏れる歯ぎしりの音を敏感に感じながら、慎吾は一つ瞼を閉じる。見開いた先にあるであろう悠人のサイン、次回対戦した際に検討した結果がきっとそこにある。予定通りであればこの一球はある意味一番危険であり、だけど一番意味がある球。
(……いくぞっ!)
ゆっくりと開かれた視界に悠人の右手を捉えながら、小さく頷いた慎吾。同じセットポジションへと体を起こしながら吐息を漏らす。小さく、白く、棚引いた影が消える頃、慎吾はその一球を全力で放り込んだ。
こんばんわ、作者です。
年が明けてまだ3週間程なんですが、最近自分のまわりに不幸が流行っており、
何となく嫌な気配を感じております。
普段は全然気に気にしないのに星座占い見てみたり、厄年とか調べてみたり……。
コロナで気持ちもナーバスに傾いてるせいもあるかもしれませんが、用心したい今日この頃です。
ここまでお読み頂き、ありがとうございます。




